その日の仕事は最悪だった。

松潤の薬のおかげもあって、倒れることはなかったけど、

熱のせいで、いつもより頭が働かない。

声も出ない。

皆にフォローされ、なんとか乗り切った。



「大野さん、ちゃんと寝て治すんだよ?水分補給忘れないで!」



「大ちゃん可哀想に・・・、仕事がなかったら看病してあげるんだけど」



松潤と相葉ちゃんが次の現場へ行く前に

おいらを心配して声をかけてくれた。



「今日はごめんね、ありがとね」



二人を見送ると、ニノが心配そうな顔して抱きついて来た。



「一人で帰れる?ごめんね、送っていけなくて」



「ふふ、ニノは仕事があるでしょ?おいらは大丈夫。
心配しないで、ほら、遅れるよ、行って」



「なんかあったら電話してね。夜中でも駆け付けるから」



「ん。ありがと」



ニノはおいらを何度も振り返り、

マネージャーに促され、楽屋を出て行った。



「さて、おいらも帰ろうかな?」



帰り支度をして、楽屋を出た時、

やっぱり無理してたのか、足元がフラつき、

意識が遠のいていった。




誰かに優しく抱きとめれられた気がした。

懐かしい香りがして、おいらはそのまま寝てしまった。

その香りに誘われ、昔の夢を見た。




それはおいらがまだこの気持ちに気がつく前、

おいらと君が笑い合ってた時のこと・・・




あの頃おいら達は、一緒の仕事が多かった。

行きも帰りも同じ車で、色んな話をした。

元々Jr時代から仲は良かった。



おいらに出来ないことも仕事と思って頑張ってた。

けど、上手く出来なくて、

いつもさり気なくフォローしてくれる君に感謝していた。




君と一緒にいるのが当たり前だった毎日。

おいらは楽しかった。でも、自分のことでいっぱいだった。




君がおいらのことを、

特別な気持ちで見ていたことに気付かなかった。




だからあの日、

君がおいらを抱きしめて、

キスをして来た時、

どうしていいか分からず、

思わず押しのけて逃げてしまったんだ。




抱き合ったり、ほっぺにキスしたりは

昔からよく皆にされてたから慣れっこだった。




でも、君のそれは、皆と違うって怖くなったんだ。

だから逃げた。



それから、君はおいらのそばに来なくなった。




おいらはまだ子供だったから、失ってはじめて気が付いた。

おいらも君が好きだって。君がいないと寂しいって。




気が付いてすぐ、君に伝えれば今のこの関係は違ってたのかな?




君を傷つけたことを、後悔してる。

逃げておいて、やっぱり好きなんて言えないよね・・・

それでも、迷わず、君に伝えれば良かった。




君が他の人と楽しく笑い合うのを、

見ることになるなら、




せめて、気持ちだけでも、

伝えれば良かった。