『お待ちしておりました、櫻井様。
お席はこちらでございます』


「はい。遅くなりすみません。よろしくお願いします」


翔くんに次に連れて来られたのは、
有名ホテルのフレンチレストラン。


おいらは慣れない場所に、キョロキョロ。
前を進んでいく翔くんに遅れないようについて行く。


通されたのは、窓際の席で、
他の席からは死角になってた。


窓から見える見事な夜景に心を奪われる。


「ふふ、ここ良いでしょ?俺の友達の一番のオススメなんだ」


「ん。すごいね・・・」


「好きな人を堕とすなら絶対ここって・・・い、いや。
なんでもない」


「ふふ、おいらはもう、翔くんに堕とされるよ」


おいらがそう言うと翔くんは真っ赤な顔して目をそらした。
ふふ、照れてるのかな?可愛い。


「ちょっと、今、俺のこと可愛いとか思ったでしょ?」


「ふふ、違うよ。翔くんはかっこいいなって思ったの」


「もう、おだててもなんも出てこないよ!」


そんなこと話していると、料理が運ばれてきた。
どのお皿の綺麗に盛り付けされていて、
食べるのがもったいないほどだ。


どの料理も美味しくて、コース料理をペロッと平らげてしまった。


「ふふ。気に入ってもらえて良かった」


「すごい美味しかった。そのお友達に感謝だね」


「ん。実はもう一個用意したものがあるんだ」


「え?」


「見てて」


翔くんがジャケットのポケットから、紅いリボンを取り出した。
それを丁寧に結び、両手で隠した。


その手をポンっと振って、手を開く。


「・・・・・さっきと変わってないね・・・」


さっき翔くんが結んだ紅いリボンが、
手の中にそのまま残っていた。


「え?あ、あれ?」


焦った翔くんのジャケットの袖から、紅いリボンのついた、
カギがストンとテーブルに落ちた。


「え?」


「・・・い、いや。こんなはずでは・・・」


罰の悪そうな顔で頭をかく翔くん。
思わず吹き出してしまった。


「ははは、これのことだったんだ。ニノのメール」


「え?ニノ?」


「ん。今朝ニノから、『翔さんの袖口注意!』って謎のメールが来たんだ」


「・・・マジか!」


「うん。それで、そのカギなあに?」


「本当はもっとかっこよく出すはずだったんだけど、
これは俺んちの合鍵、貴方に持っていて欲しくて」


「え?」


「それで、すぐじゃなくていいんだけど、その、
一緒に住みたいなって」


「・・・それって」


「うん。離れてると、変な誤解やすれ違いとかしちゃうじゃん。
だから、ずっと一緒にいたいなと思ってるんだ。
これから先ずっと」


「・・・翔くん」


「どうかな?」


「ん。嬉しい。実はおいらも渡そうと思って持って来たんだ・・・」


おいらはポケットから、カギを取り出した。


「これ智くんちの?ありがと」


翔くんがおいらと同じ気持ちなのが嬉しかった。
おいら達は顔を見合わせて、笑いあった。


「・・・もう遅いし、そろそろ行こっか」


「ん」


「・・・実は今夜はこのホテルに部屋とってある。
イイよね?智くん」


「・・・・やっぱり翔くんって、変態 オヤ・・・」


「だから、お兄さんだってば!」




おいらに食い気味に翔くんが言って、
身を乗り出して来た翔くんに


口を塞がれた。



甘い甘い翔くんキス。



おいら達はもう我慢出来なくて、




急いで部屋へ向かった。