俺はニノに引っ張られて、隣に座るように促された。
俺の方に身体を向けて座るニノ。


まるで、蛇に睨まれた蛙の心境だ。


向かいに座る相葉くんの存在が唯一の救いだ。
今も、メニューとにらめっこしてる。


「ビール来たよ。まずは乾杯しよ。お疲れさま!」


「「乾杯」」


ニノが俺の瞳を見つめながら、ビールを喉に流し込む。
しびれを切らし、俺から話しかける。


「・・・な、何かな?」


「・・・何がです?」


「何か話があるんじゃないの?」


「・・・私に聞いて欲しい話があるんですか?」


「・・・・・」


怖い。やっぱりニノは敵に回しちゃいけないタイプだ。
どう切り抜ければ・・・


なんて考えてたら、ビールジョッキをテーブルにドンっと置き、
いつのかにか出来上がってる相葉くんが口を開いた。


「翔ちゃん、何で、大ちゃんをイジメるんだ!
もうケンカするのはやめなさい!」


「・・へ?・・・ケ・ケンカ⁈」


「・・・もう、ややこしくなるから、お前は黙ってて」


「また俺だけ退けものにする!お前って言うな!」


「・・・バカはほっといて、では本題に入りましょうか?」


ニノが俺を見据えて口を開いた。


「翔さんは何がしたいの?
大野さんの身体だけじゃなくて、心も手に入れてるのに、
何が不満なの?」


「え?何言って・・・」


「なんでわかんないかな?
大野さんが何で、あなたに会いに行くか考えたことないの?」


「・・・なんでって・・・」


「だって、無視することもできたでしょ?
身体だって、あの人が本気出せば、翔さんなんて簡単に投げ飛ばせる」


「・・・・・」


確かにそうだ。
脅しをかけたわけじゃない。
ただ2人の秘密だって言っただけ。


貴方が本気出せば、投げ飛ばすのは無理でも、
いくらでも逃げれたはず。


・・・何で?


貴方は何で俺の言うことを聞いてたんだ?


「・・・はい。私が言えるのはここまで。
ちゃんと聞いたわけじゃないし、想像の話ですから」


「・・・・・」


「ふふ、でも、もう手遅れかも?」


「え?」


「さっき、Jは大野さんとどこに行きました?」


「はい!二宮先生、俺分かります!
大ちゃんのお家に行きました!」


さらに出来上がってる相葉ちゃんが手をピンと上げ答える。


「はい、相葉さん正解。っと言うことは・・・」


「大ちゃんが松潤に食われる可能性大‼︎です」


「ご名答!相葉さん冴えてますねぇ」


「ありがとうございます!うひゃひゃひゃ」


「・・・・・」


「もう、翔ちゃん!ボケっとしてんなよ!
今すべきことは何だ!電話だ!大ちゃんに、言うことあるだろ!」


相葉さんにペチっとデコをはたかれる。


ニノと相葉ちゃんの言うとおりだ。
もう手遅れかもしれない。
だって貴方から終わりにしようって言われてる。


でも、もう失うものはない。
もう本当に遅いかもしれないけど、
最後に貴方にちゃんと伝えなくちゃ。


ケータイを取り出すと同時に、
メールの受信音がした。


「さ、智くんからだ・・・」


慌てて画面をタップする。




『翔くん、いつものとこで待ってる。来るまで待ってるから』




そう入っていた。


「ご、ごめん。俺行かなきゃ!行ってくるわ」


「お、行ってらっしゃい!」


「・・・どうぞ、ご勝手に」


「ん。ありがとう、相葉ちゃん、ニノ」




俺は急いでタクシーを捕まえ、


貴方が待つあのホテルへ急いだ。