松潤とのデートの朝。
朝一で松潤からメールが来てた。


『おはよー、起こしたらゴメンね。
仕事終わったら迎えに行くから、
それまでゆっくりしててね。 潤』


ふふ、松潤らしい。
翔くんとはスマートさが大違いだな。


あの後、マネージャーに確認し、うなだれながら戻って来た翔くんの
情けない顔・・・ふふ、面白すぎて忘れられないや。
翔くんイケメンなんだけど、どっか残念なんだよね、ふふ。


まだ時間あるし、絵でも書いてようかな?



大野さんに着いたよってメールしたのに、
何の返答もない。まだ寝てんのか?
電話しても、出ない・・・


なんかあった?


俺は慌てて、車を近くのパーキングに停め、
急いでアンタの部屋へ向かう。


ドンドンドンドン!


アンタの部屋のドアを叩いてたら、ドアが開いてアンタが顔を出した。


「あ、あれ?松潤、何事?なんかあったの?」


「・・・なんかあったの?じゃねえよ!
メールしても電話しても、何の反応もねえから、なんかあったのかと焦って・・・」


「え?ちょっと、・・・松潤?」


俺は思わずアンタを抱きしめていた。
ハッと気づいて、慌てて身体を話す。


「ご、ごめん!・・・何してたの?寝てた?」


「絵書いてたの。夢中になっててケータイ見てなかった。
ごめん、急いで準備するね」


「ん。ここで待っとく」


部屋に上がって待っときたいところだけど、
ここはもう俺が入れる場所じゃない。


アンタの部屋、空気が変わったね。
どことなく翔さんの気配がするよ。


「お、お待たせ。どこ行くの?」


「ふふ、きっと気に入るよ」


松潤に連れて来られたのは、小さな映画館。
お客さんが誰もいない?


「ここ、先週閉館しちゃったんだ。俺が子供の頃から通ってたとこで、
館長さんのお願いして、今日は特別に、貸し切らせてもらった」


「へ?そうなの?」


「さあ、お客様、特等席へどうぞ。私は飲み物買って来ますので」


大野さんが座ったら上映スタートの合図。
館長に合図を送る。


「え?これブルース・リーじゃん‼︎」


ふふ、アンタの好みはバッチリだよ。
俺は飲み物を買って、アンタの一個隣に腰掛ける。


アンタは俺に気づくことなくもう映画に夢中。
この顔が好き。夢中になってるアンタは瞳がキラキラ輝いてる。


館長オススメの2本を見て、映画館を後にする。
アンタは興奮冷めぬ様子で、饒舌になり
映画の感想を俺に話す。


「ちょっと松潤!聞いてる?ちゃんと見てたか?」


「・・・見てたよ」


ちゃんと見てたよ。・・・アンタをね。


「ふふ、大野さんお腹空かない?」


「・・・そういえば朝からなんも食べてないや・・・」


「んじゃ行こ。はい」


「え?」


俺はアンタに手を差し出す。
驚いて戸惑ってるアンタの手を強引にとる。


「デートって言ったらこれでしょ?カップル繋ぎ」


そう言ってアンタの手を繋いで歩いてく。
え?え?って引っ張れて歩くアンタがおかしくて
笑みがこぼれる。俺今、スッゲー顔してんだろうな。


近くの知り合いの店に入り、

「これ、俺の彼女、よろしくね!」

って挨拶する。


「え?ちょっと、松潤⁈何言って・・・」


アンタのうろたえた顔、好き。どんなアンタも好き。
今日は俺がアンタの恋人なんだから、これぐらいいいでしょ。


今日の料理は、少食のアンタでも食べやすいように、
ちょっとずつ、色んな種類を味わえるように、
事前に頼んでおいたんだ。


「どう?美味いっしょ?」


「うん!ここの料理おいらの好きな味」


でしょ?アンタの好みなら全部知ってる。
こんなに好きなのに、アンタの好みはバッチリなのに、
どうして俺は翔さんじゃないんだろ。


もし今、翔さんに変われるってんなら、
なんでもする。アンタを独り占め出来るなら、
なんだってする。


「ん?松潤・・・どうかした?」


「え?い、いや。ちょっと、ここついてるじゃん!子供かよ⁈」


アンタの顎についてたソースを指で拭って、ペロッと舐める。
アンタが真っ赤な顔して下を向く。
本当アンタは可愛いな。


「食べ終わったらさ、もういっこ、連れて行きたい場所があるんだ」


「う、うん。どこ?」


「ここの屋上」




「うわ~風が気持ちいいね。スゴイ!ここ夜景最高じゃん」


「でしょ。ここ俺の一押し」


夜景を見てるアンタを後ろから抱きしめる。
アンタの身体がビクッと震えた。


「ごめん、このまま、いさせて・・・」


「・・・」


アンタは何も言わず、夜景を見ていた。
ああ、やっぱ好き。
このまま時間が止まればいいのに・・・


「ふふ、寒くなって来たし、帰ろっか?」


俺はアンタから身体を離す。
するとアンタが手を繋いで来た。


「家に着くまでがデートだからね」


「そんなん初めて聞いたよ」




優しいアンタ。でも、残酷なアンタ。
好きだよ。きっとこの気持ちはいつまでも変わらない