貴方が出て行った後、俺の気持ちを察してか、
相葉くんが飲みに誘ってくれたけど、
そんな気分じゃないからって断って帰って来た。


はー、ソファーに腰掛けると同時にため息がでた。


貴方に出逢った頃は目が合うだけで飛び上がるほど嬉しかったのに、
俺はドンドン欲深くなる。


手に入らないと思っていた、貴方の心をようやく手に入れたってのに、
俺の心は不安でいっぱいなんだ。
早く貴方の全てを自分のものにしたいって焦ってる。


貴方は無自覚で人を惹きつける。
貴方に触れ合って、堕ちない人なんていない。


ホント分かってないよね?
貴方の笑顔に、仕草に、どれほどの人が惑わされているかって。


はー、考えててもしょうがないな。


風呂でも入ろうと立ち上がった時、
ケータイの着信音が響いた。


画面をタップすると『大野智』と表示されていた。
慌てて電話に出る。


「智くん?どうした?」

「あ、櫻井くんですか?知念です」


電話口の出たのは知念だった。


「あれ?これ、智くんのケータイだよね?」


「すいません、そうです。
実は大野くん酔っ払っちゃって、翔くん、翔くんって呼んでて、
僕は櫻井くんの番号知らないので、ケータイをお借りしたんです」


「マジか?それで智くんどんな感じ?」


「はい。あ、あれ?・・・
さっきまで起きてたんですが、今は蔵之介さんの膝枕で寝てます」


「な!今どこ?すぐ行くわ!」


俺は知念から店の場所を聞き出して、急いで向かった。







俺が店に着いた時、貴方は知念が言ってたとおり、
蔵さんの膝枕ですやすや寝ていた。


「お!翔ちゃん、コイツなんとかしてくれよー」


俺に気づいた蔵さんがそう言ったけど、
嫌がるどころかむしろ嬉しそうに笑ってる。


俺はちょっとムッとしたけど、
できるだけ平常心を保って、貴方を起こしにかかる。


「ほら、智くん、起きて?」


「ん、んー?あ、あれ?なんでしょおくん、ここにいるの?」


「なんでって貴方が呼んだんでしょ?」


「んふふ、そうだっけ?ここ、となりにすわって?
ちょっと、くらさん、ちかいなーどいて」


俺の手を引っ張って隣に座らせる貴方。


「おいおい、そりゃないだろ。智」


智って呼んだか今?
俺ですら呼んだことないのに‼︎


俺はイライラが隠せなくなっていた。
すると、俺の腕に貴方が腕を絡ませ、ギュっとしがみついて来た。


「んふふ、しょおくん、やっとあえたね、おいらうれしい」


「・・・ちょっと智くん、飲み過ぎだよ、大丈夫?」


貴方の言葉に顔がにやける。
けど、2人に気づかれないよう口元を隠す。


「ホントお2人は仲が良いんですね?
大野くん、ずっと翔くん翔くんって言ってて、
嬉しそうに櫻井くんの話をしてましたよ?羨ましいです」


「マジか?貴方、余計なこと言ってたんじゃ?」


「んー?よけいなことって、どんなこと?」


「・・・もう、本当に飲み過ぎだよ。
すみません、大野がへべれけなんで、今日はもう連れて帰りますわ」


「お!そうなん?残念やなー。ほなまた次なー
翔くんも今度は一緒に飲もうな、知念はまだいいやろ?俺に付き合え!」


「・・・はいはい、そこまでお二人を見送って来ますね」


蔵さんは、んっって手を上げ合図した。
貴方の肩をだいて店をでた。


「もう、おいら、よっぱらってないもん!ひとりであるける」


「はいはい。知念、大丈夫か?蔵さん長そうだけど?」


「はい。多分戻ったら寝てると思うので、適当にして帰ります。
ご心配ありがとうございます」


「ん。わかった、じゃ行くわ」


笑顔で手を振る知念を残して、車まで貴方を連れて行く。


「智くん、家どこ?」


「ん?んーとね・・・・・」


貴方に聞いた住所をカーナビに打ち込み車を発進させた。
車の揺れが気持ち良いのか、貴方はうとうとしてる。


しばらくして,貴方のマンションについた。


「ほら,智くん,着いたよ?ここ?」


「ん。ありがとう」


そう言って車を降りる貴方の腕を引っ張って、
強引に貴方の唇を奪う。


「んんー、しょ・・おく・・ん?」


「おやすみのkissだよ」


「ん。」


恥ずかしそうに顔を赤らめる貴方がたまらなく愛しい。
けど、もう遅いからキスで我慢するよ。


「ねえ?今度の休み、智くんの家に遊びに来ていい?」


「え?・・・ん、いいよ」


「やった‼︎絶対約束だよ?じゃ、帰るね」


「ん。気を付けてね、翔くん、おやすみ」




家に遊びに行く約束をして、俺は家に帰った。
ついに貴方の家に行ける。
嬉しくてたまらなかった。