「・・・翔くん、怒ってるの?」


「・・・別に?怒ってませんけど」


「・・・怒ってるじゃん?さっきのニノのはいつものおふざけでしょ?」


貴方は何でそんなに鈍感なの?
あれがおふざけなわけないじゃん!
いつもいつも、全部本気だよ。


セット替えの間の待ち時間、
貴方が心配してそばに来てくれたのに、さっきの情景が離れてくれなくて上手く笑えない。


すると貴方が俺の腕を掴んで、
周りをキョロキョロ見回して、ぐいっと引っ張って行く。


「ちょ、智くん?どこ行くの?」


「いいから来て」


大きなセットの影の、皆の死角なるとこで貴方が立ち止まり、
くるっと振り返ると、そのまま、ちゅっとキスされた。
ビックリして固まる俺をギュっと抱き締める貴方。


「・・・やっと会えたのに、翔くんずっとしかめっ面。
おいら、翔くんの笑顔が好きなんだけど?」


抱きついたまま、貴方が上目遣いに俺の顔を見上げた。
超絶可愛いんですけど、分かってるの?
貴方、その顔反則ですからね。


俺は抑えが効かず、貴方の頬に両手で触れ、
そのまま口付ける。
薄っすら開いた口の中を味わうように舌を絡ませた。


「ちょ・・だめだよ・・・こん・・な・・・とこで・・・んんっ」


「も、だまって・・・」


貴方も俺の舌に応え始めて、さらに深く貴方を求める。
すると、遠くで『そろそろスタンバイお願いします』の声がした。


名残り惜しいけど仕方がない。
貴方の唇を離し、ギュっと抱き締める。


「・・・いこっか」


「・・・ん」


貴方は少し顔を赤らめて、そそくさと俺から離れた。
スタジオのほうへ歩き出す。
その仕草すら可愛い。


「ねえ?あの日、松兄と帰っただけだよね?」


ずっと気になってたことを貴方の背中に問いかける。
貴方はいつものふにゃふにゃの笑顔で振り返る。


「ふふ、当たり前じゃん。
玄関先まで送ってもらったけど、そこでバイバイしたよ。
翔くんと約束したからね」


「ん。そっか。
あ、あのさ、今日終わったら、ご飯行かない?」


「・・・今日は駄目!」


「え?なんで!」


あの日のリベンジをしようと思ったのに、
貴方に断られて、思わず強い口調になる。


「んー、今日は蔵さんと知念くんに誘われているんだ」


「・・・行くの?」


「まあな。ずっと誘われてたけど、時間が合わなかったりで断り続けてたし、
あ、翔くんも行く?」


「・・・いや、いい。智くん行って来て」


「・・・翔くん、怒ってるの?」


「・・・別に?怒ってませんけど?」


「・・・・・・・・・」
怒ってるじゃん!