『目が覚めたら翔くんの家にいたの。おいら酔っ払って寝ちゃったみたいで
仕方なく泊めてくれたみたい』


アンタのその言葉に、激しい嫉妬を覚え、
気が付いたらアンタの唇を奪っていた。


アンタの柔らかい唇の感触に、アンタの香りに、俺は囚われて、
逃れようとするアンタを逃がすまいと執拗に唇を押し当てた・・・・


俺なにやってるんだろ?
でも、頭より先に身体が動いてしまった。


そんな俺を羨ましいとニノが言った。
どんな気持ちで見ていたんだろうな。



こんな中途半端じゃいけない。
はっきりしないと、ただアンタを混乱させるだけだ。
話がしたいとメールした。


返信はすぐ来た。


あさって、俺はアンタになんて言えば良いんだろう?
もう気持ちを打ち明けてしまった方がスッキリするんだろうけど、
迷ってる自分がいた。


『ここで確認です、・・・・最悪の場合どうします?』


ニノの言葉を思い出す。









アンタとの約束の日、
アンタは収録が押しているようで、俺の方が早く終わった。
車だったし俺がアンタのいるスタジオに迎えに行くことにした。
駐車場でアンタを待つ。


・・・・・・・・・


いざとなると緊張するもんだな。
程なくしてアンタから今から行くってメールが来た。


駐車場の出入り口できょろきょろしてるアンタを見つけ、
ヘッドライトで合図を送る。


「ごめん、遅くなっちゃった。待った?」


いつもと同じふにゃふにゃの笑顔で助手席に乗り込んで来た。


「・・・いや、今来たとこだよ。
さて、どうする?お腹空いてる?」


「うん。少し」


「了解。俺の知ってるとこで良い?」


「おいら店詳しくないからお任せします」


助手席にちょこんと座って、ケータイをいじり出すアンタ。
俺は行きつけの和食屋さんに車を回す。
新鮮な魚を扱うお店だから、きっとアンタも気に入るはず。


店に着き、車ってこともあって烏龍茶で乾杯する。


次第にアンタがぎこちない動きになる。
俺に何言われるか緊張してるみたいだ。


「・・・俺の話の前に、聞いておきたいことがあるんだけど?」


「ん?何?」


「・・・あの後、翔さんと出て行った後、
もしかして、翔さんになんか言われた?その、告白とか?」


ぶぶー、俺の言葉に動揺して、アンタが飲んでた烏龍茶を吹き出す。


「・・・告白って、バッカじゃないの?俺ら男同士だよ」


そう言うアンタは耳まで真っ赤にしてそっぽを向いた。
本当アンタは嘘が下手だね。
・・・・・やっぱり翔さん、想いを伝えたんだ。


「ふーん、まあ。良いけど」


「おいらのことより、話ってなんだよ?」


「ん?ああ、話ね。あのさ・・・・」


俺はあの時はちょっと機嫌悪くてクシャクシャしてて、
八つ当たりのつもりでキスをしたと嘘をついた。


「はあ?何それ?なんで俺なんだよ?」


「たまたまアンタがいたんだよ」


なんだそれ⁈ってアンタがブツブツ文句を言っている。
俺の嘘を疑いもせず信じるアンタ。
あのキスに何か意味があるとはさらさら思って無いんだな。


「俺じゃなくて良いじゃん!本当ビックリしたんだぞ!」


「ふふ、本当は誰でも良かったんだけど、まあ、ご馳走様」






嘘だよ。



アンタがイイ。



アンタしか欲しくない。



アンタが好きだから、



アンタが好きすぎるから、



・・・・・・・俺はアンタのために嘘をつく。