俺には好きな人がいた。


その人は俺の2個上で、皆の知ってる有名校に通う見るからに優等生。
本当に頭の回転が早く、瞬時に空気を読む。


後輩にも先輩にも自分の意見もはっきり言い、
間違ってることはしっかり注意できる人だった。


俺の目にはそんなアナタが最高にカッコよかった。
憧れから、いつのまにかアナタに特別な感情を抱くようになった。


そんなアナタが、ある人の前でだけ、
態度が違うことに気がついた。
他の誰にも見せない、だらしない笑顔。
その人のことを愛おしそうに見つめる瞳。
その人のお世話を我先にと嬉しそうにするアナタ・・・


もう分かるよね。
そう俺の好きな翔さんは、大野智が好きだった。


当時の俺には大野智が凄いとは思えなかった。
歌やダンスが上手いって聞いたことはあったけど、
アンタはレッスンはサボるし、来てても、ずっと座ってて皆を見てるだけ。


あんたに憧れる奴の気が知れないと思ってたんだ。
同じステージに立つまでは・・・


先輩の後ろで踊る後輩はいっぱいいるのに、
まるでアンタにスポットライトが当たってるみたいに、
1人キラキラ輝いて、目が離せなかった。


同じグループでデビューすることになって、
さらに、その差に愕然とする。
追いつこうと必死に練習しても、アンタは俺のずっと前にいるんだ。
何をやっても敵わない。


俺は翔さんが好きで、ライバルのアンタよりできることを
見せつけたかったのに・・・


上手くいかなくてイライラしてる俺にアンタは、
俺がそんなこと思ってるなんて気づかずに、
俺のことをいつも気遣って褒めてくれてた。


「松潤、さっきのカッコよかったよ。
俺にはあんなのできないから、羨ましいな。」


いつのまにかイライラしてる自分が恥ずかしくなった。
アンタの気持ちに触れて、心があったかくなった。


翔さんや、皆がアンタについて行く気持ちがやっと分かった。
アンタのそばは居心地がいい。
その優しい笑顔に癒されてしまうんだ。


俺は翔さんが好きだったのに、
アンタのことが、好きになってた。


アンタも翔さんが好きなのは分かってる。
でも、俺はアンタが欲しくてたまらないんだ。


諦め悪くて自分でも嫌になるけど、
ちゃんとぶつかって、はっきり言ってもらわないと、
諦められない。


今から言っとくよ。
ごめん、アンタを困らせたいわけじゃないんだ。
けど、俺の気持ちを知って欲しい。
俺のこと少しでいいから見て欲しいんだ。


大野さん、俺、
アンタを、愛してるよ。