やさしさライセンス

小学校5年の時の友達






Ｍ。






俺はコイツから本当の人間の優しさってやつを教わった。もう何年も昔の話だが きのうのように覚えてる。


言うぞ！Ｍ。いいよな？













それは俺が12歳くらいのある真冬の日の話。









一日がかりで行った学校の遠足。ひとしきり楽しんだ その帰りのバスの中(^O^)








なんとバスが大渋滞にハマっちまった(>_<)

少しでも たった1センチずつでも動いてくれりゃ まだ いいが・・










まったくの停止状態










それも間の悪いことに高速道路上。次のＰＡまで
10キロはある
運転手の話じゃ この先でかなりの事故があったみたいだと言っていた。












こんなところ こんな状況での3時間の足止め。









ただ まだ大人になりきれてない12歳・・男子は何故か大ハシャギ(^O^)








それを見る すでに大人の風格・・女子の冷笑。








さて本題。

この状況下で一番困ることといったら・・？













そう。 トイレだ。










今と違いバスの中にトイレなどついてない



男子は したくなればバスを降り、高速の路肩のスミでジャー。まったく問題無し。












問題は女子。










12歳といえば すでに思春期・・さすがに路肩では


見るからに 女子は全員我慢していた。









そんな折・・






通路をはさんだ横に座っていたＮ子の様子がおかしい。

このＮ子・・
地味で引っ込み思案の性格でクラスでも浮きぎみ

ほとんどの女子からシカトされてるみたいだった



バスの席も隣に友達も無く一人で座っていた(>_<)








よく見ると前かがみになり 前方の座席にもたれ 声を殺して シクシク泣いている(ノ_・。)



さらに見ると 座席の色が変色するほど濡れ 床もビショビショ。




嘘だろ？コイツ漏らしてやがる






これバレたらまたいじめられるぞ



と思いながら隣のＭに
「おいＭ。見てみ Ｎ子しょんべん漏らしてる」












そう言った瞬間・・




その時、歴史がうごいた












Ｍは5秒ほど何か考えこみ











いきなり立ち上がり








動いていないバスなのに よろけたフリをし わざとつまづいた感じで











もっていた水筒の中のお茶を



一滴のこらず




Ｎ子の下半身と その床にいたるまで












ぶちまけたんだ。









さらに大きな声で泣きじゃくるＮ子。
飛んでくる担任。
こっぴどく叱られるＭ。

いくら浮きぎみのＮ子とはいえ そこまでやることはないだろという クラスの非難の目。










「俺だけは知っている すべてを知っている」






やさしさライセンス特級の男・・Ｍ。







俺は思った。









もし その日Ｎ子が流した涙を100グラム取り出せたとしたら・・
おそらく30グラム分は

嬉し涙だったんだろうと