Vivi e lascia vivere. -6ページ目

Vivi e lascia vivere.

林檎は「赤い」
その「赤」は皆同じ「赤」ではない
俺の「赤」と貴方の「赤」が違う色だというのに
どうして一つの「赤」にまとめようとするのだろうか


 「黒猫館の殺人」 綾辻行人


 初読が黒猫館とは……と思う人が居るかもしれない。俺がそうだったし。

 途中で「時計館」や「十角館」の事が度々出てきて、うわあ、と思った。こういうのがあると、他のも今すぐ読みたくなる。今すぐ時計館を読みたい。結構死人が出るみたいだし。


 それはさておき、読了後の感想を書こう。


『小説家、鹿谷門美、そして彼の担当である稀譚社編集者である江南孝明の元に一通の手紙が届く。

 記憶喪失であるという男が二人に見せたのは、喪失前の自分が書いた手記。中には奇妙な殺人事件が書かれていた。真相を知りたいという男と共に、二人は舞台となる「黒猫館」と呼ばれる屋敷へと向かう事となる──。』







 前回の水の柩同様、叙述トリックを使用した小説。分かっていたのだが結局騙された自分が情けない。

 所々手記に怪しい所があったので、ん?とは思っていたんだがまさかの、まさかのNOT北海道、YESタスマニア! あれは──あれは無いわ(歯噛み

 いや、良いんですけどね。ただ悔しかっただけです。

 タスマニアだとは分からなくてもね、北海道じゃなかった、って事くらいは分かりたかった。気付きたかった。本当に上手く出来ているよ。全く──。

 ただ、内臓逆位の説明の所は少しだけ不満がある。心臓を左手で押さえる描写の所。その前に胃の説明があったからいいんだけれども。心臓左手で押さえるだって、じゃあ逆位だな、みたいな説明には驚いた。まあそれだけ。

 本当に面白かった。一気に読了してしまった。

 最後、何となく氷川だと思ったらやっぱり氷川だった事には笑った。これで、木ノ内だったら相当凄いわ。

 氷川は好きなキャラクターだった。何というか、屍鬼の静信さんみたいな、芯がありそうで実は脆くて壊れやすい人。──宜野座か。まあいい。

 椿本に誘惑されてクスリのせいで理性無くなってる氷川。──良い絵だ。クソ真面目な人間の箍が外れて暴走する姿にゾクゾクする。そして正気に返った時絶望してうああ、ってなってるのが良い。凄く良い。真面目な奴がやってる周りでラリってる奴等が寝転んでいるカオス状態の空気も良い。ただ、文章に寄る。村上龍だと絶対読まない。綾辻行人だから読めた。──まあどうでもいい。


 トリックも上手かった。トリック自体は簡単で、背景が分かれば誰にでも分かるものだったんだが。それを叙述で上手く誤魔化して隠すのが本当に上手いと思った。外が雪なら誰でも分かるわな。いや今更言っても遠吠えに変わりないか。

 文章もそこまで堅苦しくない。館シリーズは簡単に読めそうだ。ああ、欲しい。