Vivi e lascia vivere. -3ページ目

Vivi e lascia vivere.

林檎は「赤い」
その「赤」は皆同じ「赤」ではない
俺の「赤」と貴方の「赤」が違う色だというのに
どうして一つの「赤」にまとめようとするのだろうか



 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック



 - あらすじ -


 第三次大戦後、放射能灰に犯された地球では、生きている動物が重宝され、地位や権力の象徴ともされていた。

 灰燼に塗れた地球から人々が異星に移住する中、地球に残ったリックは電気羊を飼っていたが、いつか本物の動物を飼おうと、火星から逃亡してきたアンドロイドにかかった懸賞金を狙っていたが──。



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 サイコパスで紹介されてからいつか読もうと決めていた本です。

 その「いつか」が中々訪れないんですよね。なので今回は「本屋に行ったら絶対買う」と決めていまして、昨日、サイコパス最新巻と一緒に買いました。他にもジョージ・オーウェルやらウィリアム・ギブスン等、作中に紹介された物は一通り買ってきました。


 しかしながら──、ハヤカワ文庫さんはよくオタクを理解してらっしゃる。


 帯にはきちんとサイコパスの絵が載っていて、しかも槙島大先生の名台詞「紙の本を読みなよ」が。

 しかも紹介された本の全てに! ──もう、完璧に私達の行動を理解してらっしゃる。それに釣られて買う私も私ですがね。まあ、いいや。とても面白かったので。

 表紙だけを見るとなんだか小難しい話のように思えましたが、中身は物凄く分かりやすくて、近未来的、というのだろうか。そのような世界観の面白さと、そこに住んでいる人々の心情などが丁寧に描かれていて一気に読了しました。休憩も無しに。本当、面白かった。

 よく、なんだ──、世界観に引き込まれる、とか聞きます。私自身、そんな経験が無いので、んな馬鹿な、とか、誰か話しかけたらすぐ現実戻るんだろとか捻くれた考えが浮かぶんですが、この作品は本当に「引き込まれ」ました。読み終わった後に、尿意に気付いたほどです。


 内容を一言で言うならば、人間とは何か、だと私は思います。

 人間とアンドロイドの違いは、とかでもいいかな。兎に角、作品を読みながら常にあったのは「彼は、彼女は人間なのだろうか、それともアンドロイドなのだろうか」という疑心です。

 常にソレはありましたね。人間らしい行動をしているけれど、彼は本当はアンドロイドなんじゃないか。いや、裏をかいて彼は人間なんじゃないか、と。

 作中で主人公、リックが何度も言っていますが、人間とは一体どういう定義で「人間」なのか。それを追求した、作品──といえばいいのか。そういう感じが私にはしました。

 

 いや、人間とは何か──というのもあるけれども、生命とは何か、というのでもいいかもしれない。ううん、上手く纏められない。読解力があればいいのに。


 人間には他者に対して共感出来る感情がある。アンドロイドはそれを持っていなくて、だから蜘蛛の足を千切っても何も思わないし、アンドロイドを殺しても何も思わない──。

 しかしながら、ソレは全てアンドロイドに限った事だろうか。それは違って、人間の中にも一般的に「非情」といわれる、いわばアンドロイドに近い人間も居るわけで。じゃあ、人間とアンドロイドの違いというのはなんなのかという問いに再び戻るわけで。

 それを証明するために、この作中には「マーサー教」というのが登場します。

 これは、人間にしか共感、共有する事の出来ない、何か不思議な道具で。その道具で世界中の人々と意識を共有・共感する事が出来る=私は人間だ、という理屈になっています。

 しかし、共有・共感する事が出来るから、と言って人間とは限らない。──作中では結果的にマーサー教は偽者だ、と出ていますが──。このあたりがちょっと分からなかったな。

 個人的にはマーサー教は現代で云う2chみたいだなと。そう思いましたね。ネット、でもいいのか。

 改めて考えると、中々深い所まで理解出来ていないな。槙島大先生には程遠い──。

 何度も読まないと駄目みたいですね。そして読み終えたらきちんと自分の言葉にして表さないといけない。ああ今からでも読み直したいけれども──時間が。


 兎に角、面白かったです(無理矢理纏める


 凄く地味なシーンなんですが、主人公リックの飛行車に、懸賞金のかかったアンドロイド(ポロコフ)がWPOの捜査官として(カダリィ)乗ってくるんですね。

 その時の台詞が地味に可笑しくって、久しぶりに笑いましたね。


 「貴様はポロコフじゃない。カダリィだな」

 「君が言いたいのはその逆だろう。随分混乱しているようだね」

 「うるさい。貴様がポロコフだな、アンドロイドの。ソ連警察から来たなんて嘘言いやがって!」


 なんていうんだろう。こう、命がけの仕事してる奴と、そいつを殺しに来た敵のはずなのに何故か和むこの会話──。ポロコフも悠長にツッコミなんてしてる場合じゃないだろ、と。そして突っ込まれて逆ギレするリックの可笑しさ。嘘言いやがって、ってww そりゃ言うがなww

 この作品には所々こういうコメディ、っていうのか。面白い所があって、それが飽きさせない一つなのかなと思いましたね。あとキャラクターが一人一人味があって良かった。


 もう一度、今度はまとめながら読んでみよう。