隅々まで清潔に管理された現代人である私たちは疫病を知りません。
ですから感染爆発・・・パンデミックなどと言っても言葉だけが独り歩きして、現実にはその苦しみや状況を想像するしかないのです。新型インフルエンザ(ウイルス)といっても、その感染力と毒性の強弱のみが取りざたされて、感染力はあっても弱毒であり致死率が低いと知ると(実はそうではないかもしれません)、街を歩くにもマスクをしないし、うがいや手洗いも励行しない人たちが横行しているのです。

マスクを買わずともせめてハンカチで口や鼻を被うくらいはできるでしょうが、それもしようとしません。密閉された冬の電車内で平気で大きなくしゃみをする人たちがいます。それは若者にも老人にもいます。考えれば恐ろしいことです。

映画「感染列島」を改めて見てみましたが、なかなかよくできた映画です。新型インフルエンザ(H5N1亜型トリインフルエンザ)か?否・・・正体は未知のウイルスでした。残念なのは、ウイルス感染の描写は見るものの恐怖を煽っているのですが、SFやホラーっぽい印象で、肝心の感染予防を真剣に考えるように仕向けられているようには思えなかったことでしょうか。マスクや薬品の宣伝ではいけませんが、あれだけ感染恐怖を描いているのですから、未知の強毒性ウイルスに効果は低いとしても基本の感染予防はどうすればいいのかぐらいは描いて欲しかったです。

幕末のコレラ騒ぎもドラマ化されていましたね。これは朝日新聞社から出ている本「幕末狂乱(オルギー)コレラがやってきた!」に詳しく載っています。

日本は何度か国を揺るがすほどの疫病流行がありましたが、海外のようにペストやコレラといったもではなく、天然痘やはしかでした。日本は長い間、鎖国状態にあったために疫病を逃れることができたのです。幕末以前にも何度かコレラが流行したことがあったのですが、長崎から入ったコレラは箱根を越えて江戸に入ることがなかったのです。これは当時の人々の感染防止努力にあったのです。封建社会のいいところもあるのです。関所で強制的に人の流れを止めることが可能だったからです。