ヒヤリ・ハット事例
とは大きな災害や事故ではないものの、その一歩手前で発見され大事に至らなかった事例のことを言います。文字通り、ヒヤリとしてハッとするという、ダジャレでふざけているかのような言葉ですが、その意味は非常に重いものです。私感ですが、なぜこのようなふざけた名称がつけられたのか非常に疑問です。重大な事故が発生した場合には多くのヒヤリ・ハット事例が潜んでいる可能性があり、ヒヤリ・ハット事例を集めることで重大な災害や事故を予防することができるのです。
職場や作業現場などで個人が経験したヒヤリ・ハットの情報を公開し蓄積または共有することによって、重大な災害や事故の発生を未然に防止する活動が行われているようです。このような活動を「ヒヤリ・ハット・キガカリ活動」とも呼ばれるそうですが、これも名称的にはどうかと思います。
特に医療現場では医療事故に至るものや直前のヒヤリ・ハット事例が毎年数多く発生します。
最近では川崎市の大きな病院で医療事故が起こっています。この病院に入院している70代の男性患者さんに誤ってカテーテル(栄養を送る管)を動脈に挿入したことで患者さんが死亡する事故が起きました。この患者さんは心筋梗塞で入院し、心臓弁を人工弁に取り換える手術を受けたのですが、担当医が5日後に心臓に栄養物を流入させるためのカテーテルを頸動脈から誤って挿入し、さらにカテーテルの先端を人工弁に接触させて弁に不具合が生じてしまったのです。病院側は人工心肺を付けるなど緊急措置を施しましたが2日後に患者さんは亡くなりました。
財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 は「医療事故情報収集等事業 平成20年年報」を発表していますが、2008年の医療事故は過去最多の1440件であることがわかりました。『地域別報告義務対象医療機関の報告医療機関及び報告件数』の内訳は、北海道66件、東北93件、関東甲信越497件、東海北陸256件、近畿167件、中国四国178件、九州沖縄183件です。
この報告書では発生の月(9月)、曜日(水曜)、時間帯(14時~15時台)、患者年齢(70代)、性別(女性)、入院期間(0~31日)*外来では再診で多発、発見者(医療従事者)などが報告されています。 *各項目の()内は最も多かったものです。
ただし、医療事故と言っても死亡に至る例は減少したということです。同報告によると2008年に医療事故による死亡例は115件で、重い障害が残るものは144件でした。同機構は事故のリスクが増えたものではなく軽微な事案も報告する姿勢が定着してきたものだと分析しています。
いつ起こるかわからない危険・・・常日頃の油断しない心掛けが重要なのでしょうね。