僕は4日分の処方薬を飲むのです。中には気管支を拡張するためのシールもあります。初めて見ました。
2度にわたって母親が脳梗塞で入院したことを書きましたが、それにまつわる僕の罪な行いを告白しましょう。
母親が倒れた時、僕は風邪をひいていたような状態だったのです。熱はありませんが喘息のように酷い咳が出て、体力が失われつつあったのです。酷い咳を続けるとかなり体力を消耗してしまいますよね。
少し前に心筋梗塞の検査を受けた時に「肺に炎症がある」と言われた所以です。僕はスギ花粉、イネ科の植物、ハウスダスト等のアレルギーがあるので1年を通して風邪のような状態になっているので、今回もアレルギーだろうと思っていましたが、よく考えるとインフルエンザ罹患時のように粘土の高い鼻汁も出ていました。
新型インフルエンザではないと思いますが、別なインフルエンザの可能性もあったのです。それなのに脳梗塞という病気を患っている母親の元にノコノコと出かけてしまったのです。母親に移さないようにとマスクをしていきましたが、それは完全ではありません。大病で体力が失われている母親には通常のインフルエンザでも命取りになってしまうかもしれません。
あれだけ散々インフルエンザの恐怖について書いている当人がそのような意識の低さなのですから呆れます。ただし、今回のように肉親に何かが起こった時に本能的に対応してしまうのが人間です。母親が倒れたのに「風邪引いてるから行かない」なんて言えないのです。
それでも僕の場合には妹と妻に代わってもらうことが可能でした。遠隔地にいても電話やメールで母親の病状を知ることができます。画像を送ることだって可能です。しかし、両人共に会社勤めで仕事があり、フリーライターといっても無職なような状態の僕しか自由に行動できないのです。
予想したとおりに病院でも僕の激しい咳が止まらずにゲホゲホと咳をしては、妹や看護師さんに白い目で見られました(マスクはしていますし、まめに交換していますよ)。病院なのでそこで診てもらえばいいじゃないか・・・?
そうなんですが、初診時間を過ぎていたのです。結局、その日は神奈川に泊って、翌日の早朝になって妹によって無理やり地元の小さな病院に連れて行かれたのです。
その病院は母親のかかりつけの病院です。
診断後、医師は「扁桃腺が腫れていないからインフルエンザではないと思う。気管支炎だね。原因はアレルギーでしょうね。お薬を出しておきましょうね」と言います。僕はホッとしました。母親と妹に移す可能性がなくなったのですからね。
さて、その医師は母親のかかりつけの医師ですから母親のことについて報告しました。
「先生、僕は先生にいつもお世話になっている勝子(かつこ)の息子なのですが・・・」
「あ、そうなんですか・・・」
「実はおとといの夕方に母親が・・・」と僕がそこまで言うと、医師は「え!どうしたの?」と驚いた表情をします。母親がしんだように勘違いされたと思った僕は慌てて言葉をつなぎます。
「あ、死んではいませんよ」
「あ、そうですか。よかった・・・」
「脳梗塞で倒れて、相模原病院に入院しました」
「そう・・・お母さん、ええと・・・」と言いながら電子カルテをカチャカチャ見ながら「あ・・・12月に来たのが最後ですね。このときは鼻血が出て止まらないとかで貧血状態だったのです。鉄欠乏性貧血・・・それで脳梗塞か・・・ふうん・・・」
「コレステロール値が高い(僕の家系病です)ので相模原病院に通っていたのですが、そのときに紹介状を書いていただいて、先生に診てもらえと言っていたのですが、半年も来ていないのですか・・・」
「通院されていたらいくらか予防もできたかもしれませんが、お母さんは煙草を吸うからね」
「そうなんですよ。いくらやめろと言っても聞かないんですよ。煙草やライターに灰皿を捨てても、また買ってきては陰で吸っているんです」
「でも、今度は苦しい思いをしたので止めるんじゃないかな」
「そうですよね」
それから病院を出て、母親の入院している国立相模原病院に小田急線に乗って向かいます。国立相模原病院は「小田急相模原」という駅から歩いて15分ぐらいの場所にあります。
ベッドに横になっている母親を見ると、92歳で亡くなった一関(岩手県)の祖母そっくりな顔になっていて不謹慎にも笑ってしまいました。
「なにゅを笑う・・・」と言って母親が笑います。元気な様子でびっくりしました。入れ歯を取っているので、なんだか間抜けた表情です。
「ほら・・・」と母親が言うと右手と右足を動かして見せます。たった3日で回復したのです。
「こいつは誰だ?」と妹を指さすと母親は「せちゅ子だよ」と言います。僕の妹は世津子(せつこ)と言いますが「さ行の言葉」がうまく発音できないようです。それでも昨日よりはずっと修復されているようです。意識もしっかりしています。ただ、たまにあくびを連発します。脳梗塞による症状のひとつなのでしょうね。
午後になって僕の妻も病院にやってきたので、病室はにぎやかになって母親は嬉しそうでした。
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おっと、今回の主旨です。
たとえば新型インフルエンザでなくてもインフルエンザや感染する病気に罹患した人が、病人のお見舞いに行くのはよほどの理由がないかぎりは止めましょう。理由があって出かけたとしてもなるべく病人に近寄らないこととマスクをしっかりと正しく装着することを忘れてはいけません。
