少し現実的ではありませんが、誰でも“嫌な予感”がすることはあると思います。何か大事が起きる前に草鞋の紐が切れた(笑)とか・・・あ、今は靴の紐ですかね?


先週の木曜日の朝、いきなり母親のことを考えたのですね。僕の母親は神奈川県にある某町に妹と一緒に二人暮らしをしているのですが、 母親は今年で79歳。結構いい年なのです。それでも足腰はしっかりしているし、風邪もあまりひいたことがありません。不健康なところはコレステロール値が高いくらいなのですね。


でも、その日はなんだか胸騒ぎがしたので電話してみたのです。


すると、誰も電話に出ないのですね。妹は仕事があるので昼間はいませんから母ひとりなんです。出かけることと言えば月一の美容院とか夕方に近くのスーパーに出かけるくらいで大抵は家にいるはずなのです。「あ、美容院なのかな?」と考えて電話を切ってしばらく仕事をしていましたが、なんだか気になって仕方がないのですね。それでまた電話をしてみるとまたもや誰も出ないのです。


不安が増幅されていきます。それでも僕は何も行動を起こしません。「まさか・・・」などという切羽詰まった真剣な感情は、通常であればそんなに簡単に精神内から湧き出てくることはないのです。


午後になってから再度、電話をしてみると「もしもし・・・」と母親の声が電話から聞こえてきたので僕は安心しました。聞けば美容院に行っていたとのこと。「今日は美容院の日だったの?」「そうだよ。心配かけてごめんね」母親の声を聞いて安心した僕は「何かあったら電話して」と言って電話を切ると、仕事の資料に目を通すことにしました。


資料を元にパソコンで仕事の構成などを考えていると、メールが着信しました。妹からでした。


メールの文章を見て驚きました。


「家に電話したらお母さんが変なの。あと少しで自宅に帰りつくからそっちからも電話してください」とあります。


え? さっき電話を切ったばかりなのに・・・とぞっとした僕は慌てて母親に電話しました。「出ろ!」と叫びます。「もしゅもし・・・」電話に母親が出たのですが明らかにろれつが回っていないのです。


「あにょね、ふう・・・おかしいんだよ。ふう・・・はにゃせなくなっちゃったにょ・・・よ」


「どうしたの?」


「ふう・・・おかしいにょぅ・・・だめ・・・わきゃんにゃ・・・」


「ちょっと待って、今から行くから、それまで頑張って!!!」


「あい・・・」


電話を切って家の中を走り回って身支度を整えると、ハッと気がつきました。僕は千葉に住んでいるので、どんなに急いでも2時間以上はかかります。神奈川の救急車を呼ぼうと考えて、その前に再度母親に電話をしてみました。


「は、もしもし・・・」妹でした。妹が帰り着いたのでした。


「おふくろはどうした!」


「お母さんが変なの。立てないみたいで、話もできないみたい・・・」


「じゃこれから行くから」


「千葉からじゃ時間かかるからいいよ。これから救急車を呼んで病院へ連れて行く。また電話するね」


「おう」と電話を切っても心配で心配で居ても立っても居られないのですが、何があるかわからないので妹からの電話を待ちます。


30分後に妹から電話がありました。


「相模原の国立病院(国立病院機構相模原病院)に連れてきてもらって、今、検査を受けてもらっている。はっきり病名がわかったら、また電話するね。兄さんは明日こっちきに来てくれればいいから」


「その前に、午後に電話した時は元気だったのに、何があったのかわからないか?」と言うと・・・。妹は以下のような話をしてくれました。


妹が残業になりそうなので、いつもはしないのですがなんだか不安になって母親に電話をしたら、母親の話し方がおかしいし、苦しんでいるようだった。なんだか命に関わることが起こったようなので、妹は同僚に残業を代わってもらって急いで(と言っても妹が家に到着するまでには1時間以上の時間はかかっています)自宅に戻ってみると、母親が壁に手を当てて立っていたのですが今にも崩れ折れそうな様子で、何を聞いてもわけのわからないうめき声だけが発せられてきちんと言葉が出なかったのだそうです。


とりあえずは電話を切って、妹からの連絡を待つことにしました。


それからだいぶ時間が経過して午前2時近くになって電話が鳴りました。


病院で脳のMRIを撮ってみると“脳の血管に梗塞”があることがわかりました。脳梗塞でした。幸いにも発見が早かったので2週間くらい入院して、血液をサラサラにする薬品をカテーテルで流し続けるという治療をしなくてはならないということでした。


こうやって書いてみると、今回、「虫の報せ」という記事タイトルにはしたものの・・・僕の場合の虫の報せは、不安感だけで行動を起こしていないためにまるきり役に立っていないことがわかります。妹が母親に電話しなければ母親はどうなっていたかわかりません。いつもはしない電話1本によって母親は大事に至らずに済んだのです。妹には虫の報せというものがあったようです。


非科学的であっても、何かを不安に感じたら、その不安を取り除くべき行動を起こすことが重要ではないかと僕は思うのです。電話1本で、その不安を取り除くことができればいいだけなんですからね。


翌日、僕は国立相模原病院に向かいましたが、この話にはまだ続きがあるのです。


安全なことが趣味であるはずの僕が犯した愚かな罪のお話なのです。と言っても犯罪ではありません。それではまた次回・・・。