書名:海賊とよばれた男
著者:百田尚樹
出版:講談社文庫
発行日:2014年7月15日 初版発行
志があるから工夫できる、頑張れる
海賊とよばれた男の上巻、第二章を読み終わりましたが、「何のために、自分はそれをするのか」をしっかりと胸に刻むことの大切さを、しみじみと感じました。
第二章は「青春」編として、主人公、国岡鐵造の生い立ちから日本の敗戦までが書かれています。国岡鐵造の志が芽生えたのは、神戸高商(現神戸大学)での出来事でした。
神戸高商に神戸商工会議所の会頭が講演し、「商売は、とどのつまりは銭儲けである」といった発言に、学生たちが猛反発。彼らの中で、「黄金の奴隷たるなかれ」という標語が叫ばれます。国岡鐵造の胸にもその思いがしっかりと刻み込まれます。
後に、国岡商店の重役たちが、利益を確保しようとする発言をすると、烈火のごとく叱るシーンが何度か書かれています。よく、「国岡商店の利益にならなくても、国のためになることなら、それを優先せよ」という発言をしています。「自分は、消費者の利益、国の利益のために働いているんだ。」というポリシーが事業継続の原動力となっています。
独立して、海上の船に軽油を販売する事業を始めた時のエピソードが、とても面白いです。
船から船に軽油を給油するため、揺れる海上でも正確に湯量を計れる独自の計量器を開発します。その計量器について、下関市役所から役人が来て、「計量法違反ではないか。」と指摘された時のやりとりを、少し長いですが引用します。
引用
「法律とは、人々の暮らしをよくするためではなかとですか。違いますか」
「まあ、それはそうだが-」
「海の上で油が正確に計量できないので、私どもが苦心して計量器ば発明したとです。それば違法ということは、法律が遅れとるという証拠ではなかですか。それとも私どもがやっとるとより、もっとよか方法があるとなら、それに従います」
「しかし、われわれは、法律の順守というのは、とても大切と考えておるのだが-」
「私の油は門司の漁業と貨物輸送に貢献しとります。人々の暮らしに直接役立っとるとです。それなのに、時代遅れの計量法違反などで罪に問うとおっしゃるとですか。どうしても罪に問いたいと言うとなら、裁判でもなんでもやりまっしょう。私は天に恥じるところはひとつもなか」
法律がおかしいのだ、と役人に食ってかかるところは、かなり強引な反論にも感じます。しかし、それを言えてしまうのは、「自分の利益を求めるのではなく、消費者の利益を増すために事業をしているのだ」、という使命感があるからですよね。
その後も、国岡商店は数々の困難にぶつかり、乗り越えていきます。満州鉄道への機械油の売り込み、スタンダード石油、ヴァキューム社など、巨大資本を持つ外油との販売競争、関東大震災後の不況からの銀行の貸し剥がし、アメリカの石油の禁輸、太平洋戦争開戦、そして敗戦。
いかに多くの困難にあっても、それを乗り越えていけたのは、工夫して知恵を絞り出せたのは、自分のためではなく国のため、という、高いポリシーが国岡鐵造にあったからです。そんな彼に男惚れした男たちは、彼を支えて、また、彼のようになりたいと思うのでしょう。
ただし、自分の利益ばかりを追求する人たちは、ずっと彼の敵であり続けます。崇高な志を持ったからといって、万人に受け入れられるわけではないのですね。
自分はいいことをしているはずなのに、周りの人が理解してくれない、自分は何を頑張ればいいのかわからない、という方は是非、この本を読んでみてください。
「人のために働くことが、いかに自分の行動のモチベーションとなるか、周りの人に影響を与えるか」、感じることができると思います。
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