ここ数年この時期になると街はハロウィンムードになってくる。
特に今年は昨年に比べて規模が大きくなってきている気がする。
これが11月になると今度はあっという間にクリスマスムードになるのだから、日本という国は本当に節操がない。
国や宗教なんてものはお構いなし、騒げるのであればどんな祭だってオールOK、と来たもんだ。
それが日本の良いところでもあれば悪いところでもある。
しかしもう少し外来の祭ばかりでなく、日本の伝統的な行事にもその熱意が向かないものだろうか……。
まあ、日本の伝統的なお祭りは地味だから企業が儲からないのだろう……。
クリスマスにしろハロウィンにしろ、企業が儲けるためマスコミが騒ぎ立て、それに乗せられた者達が踊るのだ。
――とは言え、その所為で景気が良くなるのもまた事実。
街の雰囲気が明るくなるものまた然りだ。
結局のところ、お祭り騒ぎになる事は、総合的には良い事なのだろう。
――とそんな事が、先日実家にいる時に母と話題になった。
そしてその話しの流れで、ある忘れたい過去――俗に言う黒歴史――を母から思い出させられる事になる。
ハロウィンと言えば仮装。
これはその仮装について、私の忘れたい過去(忘れていたのに思い出させられた過去)の話である。
それは確か私がまだまだ可愛いと評されていた頃、小学校低学年の時の話だ。
その頃、私の通う小学校では毎年、全学年、全クラスが校庭を一周ぐるりと回るパレードの様なイベントが催されていた。
パレードの内容は様々で、確か1年の時はオリジナル御神輿だった。
私のクラスが決めたのはケーキの形をした御輿で、クラス全員で一つの物を共同で作るのだが、"ケーキ"という物が私にとって創作意欲がいまいち湧かない題材であったので、全くのり気じゃなかった様な覚えがある。
そして小学2年の時。
その年のお題が問題の"仮装行列"であった。
どういった経緯でそうなったのか、いまいち憶えていないのだが、私のクラスの出し物は"ゲゲゲの鬼太郎"だった。
いやハロウィンじゃあるまいし、御題がオバケ縛りだった訳ではなかったはずだが……。
しかし何故か知らないが、私のクラスは不幸にも妖怪に決まってしまったのだ。
この時点は私のテンションはダダ下がりだった。
それはもう予防注射前の子供みたいに。
実を言えば、今だと到底信じられないかもしれないが、かなり臆病で怖がりな、見た目も精神的にもとても可愛い子供だったので、妖怪とか幽霊とか怪物とかその類が丸っきりダメだった。
当然、ゲゲゲの鬼太郎などほとんど見た事がなかった。
40名ほどのクラスメイトがそれぞれなりたい妖怪を決めていく。
やっぱり男子の一番人気は鬼太郎で5、6人が嬉しそうに選んでいた覚えがある。
私と言えば、鬼太郎とか複雑な形のキャラクターは全く詳細を憶えていなかったので、とりあえずなんとなくおぼろげに形の分かる"ぬりかべ"を選択した。
そして各自が材料を持参して、仮装道具を作る授業の日がやってきた。
なんとなく私の抱く"ぬりかべ"のイメージは"軟らかい壁"であった。
なので私が選んだ材料は布。
凧の様に骨を作り、布を張り、前後でサンドイッチにする、というアイディアだった。
しかし……他にぬりかべを選んだクラスメイト(3、4人いた様な覚えが……)が持参したのは、いずれもダンボール箱であった。
ダンボール箱っ!?
しかも子供が入るような大きなサイズの!
恥ずかしながら私はこの時初めて、世の中には子供が入るサイズのダンボールがある事を知った。
その場において、布を持参した私は完全に異端者であった。
更に不幸な事に異端であるという事は、圧倒的に不利である事を子供心に私は理解していた。
そしてダンボールを使う、というのは最も楽な作成方法であり、且つ出来上がりの見栄えも布で作るよりも余程良い事にも直ぐに気がついてしまった。
かくして完全に作成意欲を失ってしまった私に出来る事は、作業を誤魔化しつつ、クラスメイト達が着実に仮装道具を作っていく様子をただただ眺めているだけであった。
結局のところ、
『作業が終わらなかった者は宿題』
という当時の小学校に有り勝ちな話で授業は終了したのだが、私は作業が終わっていないどころか全くの手付かず、という完全に問題児状態であった。
その後、近所の電気屋さんに行ってダンボールを貰い、文房具店に行って白と黒のポスターカラーを買い、と材料を集めてはみたものの、『作るのが妖怪』という全く意欲の湧かない題材だった事もあり、ようやく作業を始めたのが本番前日だった。
その時、既に父はかなり不機嫌な状態であった。
両親と姉に手伝って貰い、総出でダンボールの加工。
そこまでは良かった。
問題が起きたのは色を塗る段階。
母が黒のポスターカラーに白を混ぜたのだ。
それを見た父が大激怒。
「普通は白に少しづつ黒を混ぜていくんだろっ!」
と父。
「どっちだって良いじゃない!」
と母。
そして灰色の色合いで揉めに揉める。
今と違ってインターネットなどない時代。
不幸にもその場にいる全員が"ぬりかべ"をうる覚えであった。
「もっと白っぽい灰色だ」と主張する父に対し、「もっと濃い灰色じゃない?」と言う母。
ちなみに私はコンニャクの様な色だと思っていたが、最終的に苛立ちを隠さない父の意見が優先された。
「小2の仮装に、そこまで真剣にならなくてもいいんじゃないか……?」
と今なら思うところだが、その当時は甘んじてその状況を受け入れるしか他に方法がなかった。
口を閉ざした両親と姉とで、戦時下の訓練所の様な、かなりピリピリした空気の中、ひたすら色を塗り続けた記憶がある。
そして余り思い出したくない、目つきの悪いぬりかべがギリギリで完成したのだ。
本番はと言うと、大して出来栄えの変わらぬ他の3、4人のぬりかべ達と一緒に、校庭を一周ぐるっと回ってアッサリ終了した。
そもそもこのイベントは学校内々の行事であり、外部の観客は全くなし。
見ている者は姉とその知人以外、ほとんどが見知らぬ上級生のみ。
しかもぬりかべと称したダンボールにスッポリ入っている訳だから、3、4人いる他のぬりかべと誰がどのぬりかべだが全く分からない。
果たして本当にあれほど辛い想いをして、きっちり作る意味があったのであろうか……。
……これは私の程度の低い面目と引き換えに、家庭の不和を招いてしまった苦い思い出だ。
やっぱり妖怪の仮装などろくな物ではない。
アンチハロウィンだ。
二度と仮装などするものか。
ちなみにこの一連の事件を姉が作文に書いて、担任の先生を大爆笑させたのはまた別のお話しだ。
雲星@私小説っぽく書いてみた
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