別れの春
携帯電話に落してもらったよ今朝は目覚め方が酷かった。
昨夜飲み過ぎてしまったみたいで、何となく体にアルコールが残ってるみたいだった。
何故いつもより飲み過ぎたのかは分かってる。
今日を迎えるのが嫌で仕方が無いからだ。
そんな気持ちを払拭すべく、行きの通勤電車で『銀魂BEST』を聞く事にした。
元気が出るような曲が多いので助かる。
ちょうどシュノーケルの『奇跡』が終わる頃に職場のビルに着いた。
この曲は、初めてリアルタイムの地上派放送を観た時に流れていたED用の曲で、わたしが大好きな1曲です。
映像も大好きだし、思い出深い『芙蓉編』や『こち亀』では、ラスト近くのカットで粋な計らいがあったりしたものでしたね。
でも、映像のイメージごと一日中頭の中に流れている事になるとは…
今日で同僚Hが最後のお勤めになる。
期末なので色々とやる事があって忙しく、「これはどうするの」とか「このデータ修正しておいて」とか、普段通りに仕事をして。
でも、マトモに彼女の顔を見る事が出来ないままだったけど。
「これ、ハリーさんが使って下さい」と、彼女が未使用の帳票を持って来た時に、初めて彼女と面と向かった。
目線がバチッとあった瞬間、お互いの目に涙が浮かんでしまった。
それを隠すように、お互いでサッと顔を逸らしたのがまた辛い。
こんなトコまで息ピッタリってどんなんだ俺達。
定時がどんどん迫って来る中、最後の最後でややこしい案件が持ち上がり、とてもお別れセレモニーをする場合じゃなくなってしまった。
本店も巻き込んで収拾が着かないまま定時を過ぎてしまい、結局全員で居残りです。
何だか慌ただしいよね、とぼやきながら上司Kが、他部署へ移った元上司Aと一緒に花束を買いに外出。
本当はもっと早くに済ませるつもりだったのに…(泣)
何とか一段落ついて、いよいよHとお別れの挨拶の時間となった。
総務の全員がHの前に集まる。
最後まで自分からHの契約終了を報告出来なかった部長が、顔を赤くしながらHに対して送辞を述べるのを聞きながら、わたしは少し離れた位置から、ずっと目を凝らしてHを見つめていた。
部長の挨拶が済み、花束を渡すKの姿と、受け取るHが微笑み合うのを見て涙腺が弛んだ。
花はHのイメージで選んだと、彼女に挨拶する為に残っていたAが言っていた。
背が高いHのように、長い茎の先に咲き誇る、綺麗な赤が入ったピンクの薔薇を中心とした、華やかで可憐な花束だった。
涙を堪え切れないまま、Hが語るのを聞いていて、わたしも涙が止まらなかった。
拍手で挨拶タイムを終えて、総務の皆が思い思いに彼女との別れを惜しむ。
携帯電話のカメラで一緒に写真を撮ったり、記念の品を渡したり。
でも、わたしは何も用意しなかった。
いつだってそうだった。
どれだけわたしと仲良しの同僚が去ることになっても、他の同僚達がお昼ご飯を一緒にしたり、飲みに行ったりしても、わたしは何もして来なかった。
そんなわたしに、彼女は手紙を書いて渡してくれた。
呆然としながら受け取って、まだまだ続く彼女と同僚達の別れのシーンに立ち会い、時にシャッターを押す係になりながら、その手紙をポケットに仕舞った。
ちょうど挨拶ラッシュが途切れた時に、疲れた感じでHが自席に座った。
いつもは見上げる彼女の頭を見下ろす位置にいたわたしは、ふと彼女の頭を撫でた。
するとHは嬉しそうに、撫で続けるわたしの手の平に頭を擦り寄せて何度も頭を振った。
「ああ、ハリー君!」
Hの席の隣でKと話していたAが、素頓狂な声を上げた。
わたしは号泣していた。
溢れる涙が止まらなくて、何とか声を堪えようとして変なくぐもったうめき声を上げながら、わたしは泣いていた。
立っていられなくて、跪きながら泣いていた。
Hもわたしの手をとりながら泣く。
そんなわたし達の姿を見て、他の同僚達も泣いていた。
今まで色々あったよね。
楽しい事ばかりじゃなかったし、わたしは決して良い相棒ではなかったと思う。
それでも貴女は一緒に居てくれて、支えてくれた。
貴女の笑顔に、どれだけ総務の皆が助けられた事か。
もう目の前で見られないんだと思うと、本当に悲しい。
そういう涙だった。
まだ他の支店に移った元同僚から電話が入ったりして、忙しそうに挨拶するHを残してわたしは帰った。
地下鉄の中でぼんやりと今日を振り返りながら、乗換駅でふと『銀魂BEST』の続きを聴こうとイヤホンをセットした。
Hearts Growの『かさなる影』が流れ出した。
電車がトンネルから地上へ出て、赤く染まる車窓に目をやりながら、ポケットの中から貰った手紙を取り出す。
彼女の字を追いながら、また涙が溢れてしまった。
『奇跡』のあのED映像を御覧の方には分かっていただけると思うけど、遠くに居る友達や未来や希望を夜空に見つめる…というイメージをわたしは持っています。
それを一日中頭の中でリフレインして、最後に本物の夕日を見ながら手紙を読む…
自分でも作り過ぎだろ?と思うようなシチュエーションです。
『かさなる影』はOP用の曲ですし、未来を目指す!というイメージがあると思うんですよね。
バイクに二人乗りする銀さんと新八というスタイルも、毎度ながらグッと来る。
「私には無いものを持ってるハリーさんと一緒に仕事する事が出来て、とても勉強になりました。ありがとうございました」と手紙に書いてあった。
H、わたしだってそうだったよ。
決してわたしには出来そうに無い事を、貴女は笑顔で乗り越えていた。
お疲れ様でしたH。
ありがとう、今まで。
わたしは自分で言うのもアレですが、人付き合いは不器用だし、無愛想なので、とても貴女のようには行かないと思うけど…頑張るよ。
そうは言っても、わたしだって3ヶ月後は分からないけどね(^^;
新しい職場が決まりそうとのことですので、是非頑張って下さいませ。
心底応援してるよ!\(≧∇≦)/
そんな中、同僚Mまでもが会社の『自主退社要請対象社員』に該当するので、人事部から打診があったとのこと。
もともと健康不安もあって、ちょうど良い機会かもしれないと、Mはそのまま退職する意向を固めたそうです。
それを今日聞かされて、増々涙腺が壊れてしまったよ。
有給を消化する為、来月下旬からもう出社しなくなるらしいです。
あまりにも悲しい春を迎える事になります。
ま、わたしも間もなく後を追う事になると思いますが…(^^;
本当に仕事がちゃんと回って行くのかどうか、凄く不安です。