静かな声
わたしの職場のチームの隣島に、何かと要領が悪くていつも怒られている女の子がいる。
そもそも性格…というより気質が、対人能力を含めて仕事に向いていない感じだ。
いつも薄笑いを浮かべて、物腰だけは丁寧。
で、仕事上で失敗して、その原因に自分が納得しないと、同僚のいかなる説明・説得も受け止めず、果ては事情を知らない上司にまで追求して行く。
時にそういった姿勢は大事だけれど、彼女の場合は度が過ぎる。と言うより、ボタンを掛け違っている。
当然、彼女に対する風当たりは厳しく、毎日お小言を食らってるのだが、まるで分かってもらえない。
声が聞こえないのだ。
彼女の声。
きちんと返事をしているはずなのに、遠くで聞こえる。
息を吸いながら「ハイ」、蚊の鳴くような声で「わかりました」。
畏縮してるからと分かっているが、それが彼女のデフォルトだ。
畏縮が常であるのが正常ではないのを分かっているはずなのに、彼女はまるで分かっていない。
何も悪くないことですら、消え入りそうな声で返事をする。
突拍子もない事を発言して、同僚を怒らせることも多い。
彼女の中で、人との付き合う土俵が、次元が違ってしまっている。
事情を知らない人が見たら、何とか同じステージに立って欲しくて声を荒気る同僚の事を、まるでイジメの加害者のように見せてしまうくらいだ。
せめて、同じ気持ちを味わうもの同士で、愚痴を言っても良いと思う…
でも、それすら今日は断たれてしまった。
事情を知っていながらどうする事も出来ない上司が「いいかげんにしろ」と言った。
「弱点をあげつらって罵って、本当に彼女を助ける手立ても考えずにいることを許さない」と。
わたしは思った。彼女を助ける為に、皆キツイ言葉であるのを承知で関わっているのだ。優しく言ったところで分かってもらえないのが現実で、厳しく言おうが邪険に扱おうが、なだめながら甘やかそうが、理解をしない相手をどう扱えというのか。悩むから、文句が出る。愚痴も出る。
上司は無理を承知で言っている。「文句を垂れるなら本人に言え」というのも分かる。
愚痴大会が彼の目の前で遠慮なく催されるのが苦痛なのだ。皆の不満を解消どころか自分も同じ目にあっているので、彼女に何を言っても無駄なことを承知しているのを、別の発想…「悪口というものは、内容や背景に係らず、醜いものだ」と言って更に部下を縛り付ける。
皆は、押し黙ったまま午後の仕事をこなした。
言葉が通じない、という感覚だ。
違う人間同士が集まって、同じ仕事をして、過程が違っても結果が同じならOKのはず。
でも過程が同じで、結果が違う相手にはどうしたらいいのだろう。
わたしも彼女に関わる事が何度かあるし、すぐ隣で毎日毎日説教大会があるのを見て聞いている。
斬って捨てるようなものだったらいいのにと、暗い考えが過るのが辛い。そうできたら誰も苦労はしないのだ。皆も、上司も。
彼女だけが分からない。わたしには解らない。皆も解りたいけど、もう疲れているみたいだ。
綺麗事を貫いて、誰も幸せにならないなら、それはもう「綺麗」ではない…と思う。
そもそも性格…というより気質が、対人能力を含めて仕事に向いていない感じだ。
いつも薄笑いを浮かべて、物腰だけは丁寧。
で、仕事上で失敗して、その原因に自分が納得しないと、同僚のいかなる説明・説得も受け止めず、果ては事情を知らない上司にまで追求して行く。
時にそういった姿勢は大事だけれど、彼女の場合は度が過ぎる。と言うより、ボタンを掛け違っている。
当然、彼女に対する風当たりは厳しく、毎日お小言を食らってるのだが、まるで分かってもらえない。
声が聞こえないのだ。
彼女の声。
きちんと返事をしているはずなのに、遠くで聞こえる。
息を吸いながら「ハイ」、蚊の鳴くような声で「わかりました」。
畏縮してるからと分かっているが、それが彼女のデフォルトだ。
畏縮が常であるのが正常ではないのを分かっているはずなのに、彼女はまるで分かっていない。
何も悪くないことですら、消え入りそうな声で返事をする。
突拍子もない事を発言して、同僚を怒らせることも多い。
彼女の中で、人との付き合う土俵が、次元が違ってしまっている。
事情を知らない人が見たら、何とか同じステージに立って欲しくて声を荒気る同僚の事を、まるでイジメの加害者のように見せてしまうくらいだ。
せめて、同じ気持ちを味わうもの同士で、愚痴を言っても良いと思う…
でも、それすら今日は断たれてしまった。
事情を知っていながらどうする事も出来ない上司が「いいかげんにしろ」と言った。
「弱点をあげつらって罵って、本当に彼女を助ける手立ても考えずにいることを許さない」と。
わたしは思った。彼女を助ける為に、皆キツイ言葉であるのを承知で関わっているのだ。優しく言ったところで分かってもらえないのが現実で、厳しく言おうが邪険に扱おうが、なだめながら甘やかそうが、理解をしない相手をどう扱えというのか。悩むから、文句が出る。愚痴も出る。
上司は無理を承知で言っている。「文句を垂れるなら本人に言え」というのも分かる。
愚痴大会が彼の目の前で遠慮なく催されるのが苦痛なのだ。皆の不満を解消どころか自分も同じ目にあっているので、彼女に何を言っても無駄なことを承知しているのを、別の発想…「悪口というものは、内容や背景に係らず、醜いものだ」と言って更に部下を縛り付ける。
皆は、押し黙ったまま午後の仕事をこなした。
言葉が通じない、という感覚だ。
違う人間同士が集まって、同じ仕事をして、過程が違っても結果が同じならOKのはず。
でも過程が同じで、結果が違う相手にはどうしたらいいのだろう。
わたしも彼女に関わる事が何度かあるし、すぐ隣で毎日毎日説教大会があるのを見て聞いている。
斬って捨てるようなものだったらいいのにと、暗い考えが過るのが辛い。そうできたら誰も苦労はしないのだ。皆も、上司も。
彼女だけが分からない。わたしには解らない。皆も解りたいけど、もう疲れているみたいだ。
綺麗事を貫いて、誰も幸せにならないなら、それはもう「綺麗」ではない…と思う。