大切だった家族を失ってからの唯一の楽しみは、

その大切な家族と夢の中で会えることだった。

 

 

でも夢というのは思うようにいかない。

 

 

会いたいと切に願っている時に何故か君は現れず、

 

逆に、仕事が忙しく君への意識が相対的に薄くなっている時に、思いがけず君の夢を見たりする。

 

 

夢って何だろう。

 

 

なぜ人は夢を見るのだろう。

 

 

色々な本を読み漁ってはみたが、諸説あれど科学者の間でもなぜ人が夢を見るのか明確に解明されていないらしい。

 

 

だったら。

 

 

夢の内容を自分の意思で自由にコントロールできる方法は無いものか。

 

そうすれば、毎晩、君に会える。

 

 

そう思って調べたら、あった。

 

 

それは「明晰夢」というものらしい。

 

 

そして、明晰夢を見られるようになるためには、ちょっとした訓練が必要らしい。

 

訓練の内容はとても簡単。

 

毎朝、目覚める前に見た夢の内容を書き留めて記録するだけ。

 

そして、寝る前に、“夢の中でこれは夢であることに気が付く”と念じながら寝るだけ。

 

 

早い人なら、それを続けるだけで一ヵ月ほどで明晰夢を見られるようになるらしい。

 

 

自分の場合、どうしても寝る前にアルコールを飲んでしまうせいか、

訓練を続けてから初めての明晰夢を見るまでに半年間を要した。

 

 

しかし、初めて明晰夢を見ることが出来た時の感動は今でも忘れない。

 

 

最初は普通のよく見る夢だった。

 

夢の中でも自分は普段暮らしている部屋にいたのだが、

なぜか部屋にゴミが散乱していた。

 

そこに来客があり、自分は客を招き入れて飲み物を出すために冷蔵庫に行って冷蔵庫の扉を開ける。

 

夢でありがちな支離滅裂な展開だ。

 

しかしそこではたと気付いた。

 

「待てよ……?」

 

自分は綺麗好きとまでは言わないが、部屋にゴミを散乱させたままにするようなことはしない。

 

ましてや来客がある時にそんな状態を放置しているはずがない。

 

そう気付いた瞬間、視界が一気に広がり、両手両足に電撃が走るのを感じた。

 

意思や体を動かす主導権を得たのを感じた。

 

正に「夢の中で目覚めた」のだ。

 

今までも、夢を見ている時に「これは夢だな」と気付く時はあった。

 

でもその時はそこまで。

 

明晰夢は、夢の中で、本当に起きている時のように、現実世界のように行動できる。

 

当然、夢の中で目覚めたので、自分自身、明晰夢に入ったことの自覚がある。

 

「これが明晰夢か」

 

明晰夢の世界では、自分の思うような世界が作れると聞いていたので、早速こう念じる。

 

「父に会いたい。弟に会いたい。」

 

気が付けば念じ終える前に目の前にいたので、念じたから現れてくれたのかどうかはわからない。

 

現実の世界と何ら違わぬ明晰夢の世界で、父と弟に再会できたことだけで嬉しくて嬉しくて嬉しくて

 

申し訳なくて、僕は言葉に詰まってしまった。

 

 

ようやく、僕は目の前の弟にこう言った。

 

「なるほど…こういうことだったんだね。」

 

弟は思わせぶりな笑顔で微笑んでいた。

 

パラレルワールド

シンクロニシティ

シミュレーション世界

インテリジェントデザイン

 

様々な仮説が思い巡るが、そんなことはどうでもいい。

 

今ここで自分が体験していることが全てだと思った。

 

 

ただ、明晰夢は持続させることが最も難しいらしい。

 

自分もその例に漏れず、弟と話しているうちに、

一瞬の隙にこの世界に疑問を感じてしまったことが原因なのかわからないが、

アラジンと魔法のランプの魔神のように何かに吸い込まれて目覚めてしまった。

 

でも目覚めた時の多幸感は何物にも代えがたかった。

 

ついに会えた。