遊び心?そして誰もいなくなる | 陥穽

陥穽

陥穽(かんせい):落とし穴
詐称・詐欺・偽装・・・世の中はさまざまな陥穽に溢れている
騙されちゃいけない、なんて事書こうと思ったけれど・・・
感想文が多くなってしまった(^^;

先に紹介した、アガサクリスティそして誰もいなくなった にいたく感動した私は、近頃よく書店で見かけるあるタイトルの小説に手を出してみました。

今邑彩そしてだれもいなくなる です。なんとなく、手を出してみたくなる気持ち、わかりますよね?w
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名門女子高、天川学園の開校百年の記念して開催される七夕祭りにおいて、演劇部による「そして誰もいなくなった」が上演されることになった。
その当日、発声練習のために早朝の校舎屋上に訪れた江島小雪は、そこで緊張を解くためにメンソールを吹かす場を演劇部顧問の向坂典子に見つかってしまう。
しかし向坂は咎めるでもなく、自分自身もそうだったと告げた。
シナリオと演出を担当した向坂は、この日の公演への意気込みを語るが、そこへメンバーが怪我で舞台に立てないという知らせが届く。公演中止を避けたい向坂は、代役を自分がやると宣言する。
そうして始まった公演は、服毒による最初の犠牲者がでるシーンを迎えたが、その生徒が本当に死亡してしまった。
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著者の名誉のために書いておきますが、これはもちろん、いわゆるパクリではありません

あとがきで著者ご本人も書かれているのですが、引用しているだけなのであります。

確かに、そのいかがわしいタイトルがオリジナルを連想させますが、冒頭でアガサクリスティそして誰もいなくなった の舞台をやる、と明言しており、文末の参考文献の項にも同書が明記されています。

つまりは、オリジナル作品に尊敬の念を込めているリスペクト作品なのです。


どう違うのかを書いてしまうと、ある種のネタバラシになってしまいますので控えますが、その心配のない範囲でまず大きく違う点を挙げるなら、この作品が クローズド・サークル ではない、という点です。

あらすじを読まれればお分かりになるかと思いますが、最初の舞台が学校というだけで、まったく閉ざされた空間ではありません。加えていうなら、学校であってもお祭りの催し物という設定で、観客もたくさんおり、少なくとも閉鎖空間ではありません。

また、舞台は学校にとどまらず、公園や、登場人物の家、果ては、事件を担当する刑事の家庭の紹介にまでその範疇は及んでいます。

それだけで、クローズド・サークル の金字塔とまでいわれているオリジナルのパクリたり得ないwことは納得できるでしょう。

とはいえ、やはりリスペクト作品たるテイストを感じます。

オリジナル作品がなければ、ちょっとしたサスペンスで終わってしまいそうな作品ですが、巧みな引用で、その持ち味がグンと上がっている、そんな印象を受けました。

オリジナルのもつ壮大なインパクトには今ひとつ敵っていない感がありますが、それは止むなしでしょう。

しかし、充分にひねりを利かせた、巧い作品だと思います。


もちろん、一冊の本として独立した物語ですので、これだけ読んでも面白さはあると思いますが、可能ならオリジナルを読んでから読まれると良いかも知れません。

ここはオリジナルを意識しているな、というのが微妙にわかったりして、楽しめるかと思います。

また反対に、本作では、核心には迫っていないものの、多少なりオリジナルのネタバラシともとれる表記があります。

これからオリジナルを楽しみたいという方は、これを先に読まれませんよう、ご注意ください。

今日はここまで

そして誰もいなくなる (中公文庫) [文庫]
今邑 彩 (著)
陥穽-そして誰もいなくなる