そんな、私にとって、青天の霹靂ともいえる現象に襲われたのは、23才の夏。
知人ら紹介された「夏子の酒 」によって、それはもたらされました。
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新潟の造り酒屋の娘、佐伯夏子は、東京の広告代理店で働き始めて2年、ようやく大きな仕事を任されるようになったその矢先、実家に残る兄が倒れたと聞いて帰郷する。
帰郷した夏子を迎えた、兄、佐伯康男は、夏子にまぼろしの米「龍錦」を見つけたことを告げ、龍錦で日本一の酒を復活させる夢を語る。
元気な兄の姿に安心した夏子は、急ぎ東京へ戻るが、間もなく、兄の死を告げられる。
夏子は、新潟に戻り、兄が遺した龍錦での酒を造りを誓う。
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いきなり、壮大な夢を持つ兄の死という重いシーンから始まりますが、さらに重いテーマが続きます。
兄が残した龍錦は、1350粒のみ。それだけでは、酒は仕込めません。
最低600キロ、すべて種籾にして稲を育て、収穫した米をさらに種籾として収穫して始めて、酒造りができる量になります。
物語は、米の栽培が抱えている問題からスタートします。
農薬に頼った近代農法のために一度は滅びてしまった龍錦。龍錦は無農薬 でなければ育ちませんが、農薬は、農家の効率を上げるためには、いまや欠かせない存在となっています。
そんな龍錦をめぐって、農薬 、台風、減反 、農協 、農家のエゴと生活・・・自然と政治との狭間で苦しむ農村地帯の現状が、さまざまな形で、浮き彫りになってゆきます。
それらを、片付け、一部の問題を保留にしたまま、物語は後半の酒造りへと展開します。
ここにも、日本の酒造りに抱えられた問題が、夏子を苦しめます。
これの、最も大きい問題が、高齢化 でしょう。
酒造りは、重労働です。稲作が終わった秋口から、酒造りが終わる春まで、暮れも正月も無く、また、夜も昼も無く住み込みで働いて、造るのです。
若い担い手がいなく、潰れる酒蔵が多いのも現実問題としてあるようです。
日本酒をこよなく愛し、世に、家庭にと押さえつけられている昨今、せめて酒だけは自由でありたいと願う作家の、渾身の物語です。
これを読んで、日本酒を飲み、語りましょう(謎)
今日はここまで。
夏子の酒[尾瀬あきら]