みんなで駅伝で全国大会を目指す日々は将棋に似ている。
一手一手、一日一日必死に考えて考えてその瞬間の最善手を探す。
形勢が悪いと感じていもそれでも最後のその瞬間まで勝利を信じ続ける。
だからこそ全てをやり切って決着を見るその瞬間は勝者ではなく敗者の方が冷静でいられる。

自分が覚悟を決めたのは前日のアップを見ている最中でした。
チームの雰囲気を見て"勝負"のレースはできないと悟りました。
たぶん選手自身がそれをわかっていたんじゃないかと思う。
そしてそこに悔しさや怒りといった感情がなかったのは俺自身はやり切った思いがあったから。
力不足は感じたしもっと違ったアプローチもできたんじゃないか、逆に俺が一歩引いた方が良かったのではとの思いはある。
それでも後悔したくなかったから厳しい事もたくさん言ってきて、自主練もたくさんして最後まで君たちと一緒に走る事ができた。
そういえば4年前も厳しい戦いになるのがわかってて俺が引っ張ってあげなきゃって必死で…それ以来4年ぶりに5000m自己ベスト更新。
俺が強くなるとチームは負けるという嫌なジンクスできちゃったかな。

チームの成長は確かに感じました。
春合宿の頃はアップの時間を切り上げようといった悪魔の囁きをする子が最上級生にいたりして、これはチームを引っ張って行く選手は確固たる意志がないと流されちゃうなと危惧していました。
そんな不安は春先に入部してくれたウミとケイナとユイがあっという間に吹き飛ばしてくれた。
練習を継続すれば強くなるそんな当たり前のことを体現して日に日に速くなっていく君たちを見てチームが活気づいた。
アキラを筆頭にマサノリやタクミ下級生がスピード練で先着することも出てきて、負けじとユウトやイッセイも先頭を狙うようになり秋合宿の頃は本当にいい練習ができてた。
そして本番では先輩たちの走りを見てきたユウやリクト、チセノこの舞台を"知ってる"子たちがしっかり走ってその歴史をつなげてくれた。
800mでケイナやノナ、ユウトがメダルを獲ってくれたのは本当に嬉しくてチームの底力、チームがまた強く変わっていくんだという予感があった。

それでも悔しかったのはライバルチームにかつての清Jを重ねてしまった事。
優勝チームの雰囲気は4年ぶりの全国を目指していた3年前の清Jそのものだったし、男子3人が果敢に先頭に飛び出た3位のチームのチャレンジはシオリやユウサクが見せてくれた清Jらしい走り、それを相手チームにやられてしまった。
君たちは能力もあるし、絆も強いし良いチームだと思うからこそ物足りなさを感じてしまう。
君たちがこれからどんな夢を持つのかはわからないけど今の下級生たちは間違いなく強くなる。
もう一度常勝軍団になったその時にみんなの事を"谷間の世代"だなんて言わせない、言わさせないそんな気概をこれから見せてほしい。