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clock-holiday

サークル活動記です。
たまに関係ない記事も書かれます(爆

[1月9日/土曜日/朝~天城家自宅~]


目覚まし音:

工事音:

………………

工事音:

うぁ~眠いっ! 毎日いい歳した大人が朝から積み木遊びかよ~

………

…? 

おっ、静かになった。今のうちに寝よう。

……………

カラス「カァッカァッ…カアァッ」

【蒼司】「ぐあぁぁぁっ」

画面効果:揺らす

ガバァッ!

背景:天井

効果音:時計の針の音

………

【蒼司】「…結構明るいな」

今、何時だろ…

【蒼司】「…………寝るか」

ぐぅ…

音:目覚まし音

画面効果:画面揺らす

さて携帯に電源入れてっと、顔洗ってくるか

画面効果:フェードイン

【蒼司】「テレビ、テレビ」

台所に行く手前TVを点けておく

朝食のパンを二枚焼きマーガリンとジャムを冷蔵庫から取り出して居間に戻ると

ニュースでは天気予報が流れ始めた

そして

………例の事件の報道に変わる

俺のよく知っている町が映る

俺はテレビのリモコンを無造作に掴むとテレビの電源を切っていた。

【蒼司】「………………」

なにかの音:

【蒼司】「ん、おはよう深夜」

眠気眼で目をゴシゴシしながら居間に現れた深夜が片手を挙げた

これが深夜の挨拶

【蒼司】「皇室の者かっ!」

深夜「?」

深夜が首をかしげる

この突っ込みは深夜にはわからんだろうな

【蒼司】「いや、いいや。顔洗っておいで」

深夜「……………」

かったるそうに頷くと、洗面所の方へとピョコピョコ跳ねて向かっていった。

深夜の様子を見てふと思った。

【蒼司】「彊屍は医学的に言うと、やっぱり低血圧なんだな…」

若干、テンションの低い深夜の後姿を見送っていると

携帯音:

【蒼司】「!? えっ、朝から誰?」

翔子姉だ、こんな朝からどうしたんだろ?

【蒼司】「はい、もしもし?」

翔子「もしもし? おはよう、ごめんね登校前に。今日、朝に真子ちゃんの所に赤ちゃんが生まれたって! 私と正樹君はこれから病院の方に行って来ようと思ってるの」

真子ちゃんとは俺の父方の従姉弟で父が死んだ時、親戚中が集まりその時仲良くなったらしい。それで翔子姉とも面識があるのだ。

【蒼司】「…俺は行かないよ?」

翔子「うん、それでいいと思うよ。でも一応連絡だけしておこうと思ったの」

【蒼司】「うん、ありがとう」

翔子「それじゃ、またお店の方遊びに来なね?」

【蒼司】「わかった。じゃ正樹さんによろしく」

翔子「はいはい♪」

気が付くと顔を洗い終えて戻ってきていた深夜が、心配そうな顔で俺の顔を覗いていた。

【蒼司】「ありがとう、なんでもないよ」

俺は深夜の頭を撫でると残りのパンを口の中に放り込んだ。



[天城家自宅前]

【蒼司】「行ってきまーす」

学校はどうなってるかな…ガラス割っちまったしな

それに、宮内や高堀のことも気になる…

少し急いで学校に行くか



[朝見乃森高校/2-B教室前]

教室の前に人だかりができている。

【蒼司】「ちょっとごめん」

人だかりが少し道を空けた。

皆、悲しそうな顔をしている。

野次馬ではないみたいだ。

…………宮内の席は…空いている。

そして、高堀の席には花の入った花瓶が置かれていた。

【蒼司】「高堀………」

この状況を見て、やはり高堀が生きていない事を実感してしまう。

高堀の遺体が何処かで見つかったのだろう、他に被害者はいないのか等、気になる事が幾つかある。

高堀の席の周りでは、よく見かける高堀の友人達が泣いている

彼女達から話し声が洩れたのが聞こえた。

どうやら、高堀は通学路で遺体で発見されたらしい

それにしても、昨日の事が何も問題になっていないのが不思議だ。

割れた窓、屋上で二人がドンパチやって壊れたフェンス

どうなってるんだろう?

公平……は、来ていないぁ

何がお土産だよ

昼に由紀菜を捜してみるか。

確か2-Eだったな。こーゆう時、由紀菜がウチの学校で有名人なので見つけやすい

始業のチャイムが鳴ると担任の北村先生が入ってきて、俺達生徒は全員で体育館に集まり、高堀の死を悔やんだ。

同級生の友達の死に、こんなに早く会うとはな。

…宮内のことは聞かされなかった。

ついでに、体育館で由紀菜の姿を捜したが見当たらなかった。

登校してないのかな?

音:チャイム

四時間目が終わりチャイムが鳴った。

【蒼司】「ぐぁ、昼まで長かった」

正確に言うと長く感じた。

それはどの生徒も思っているように感じる。

やはり同級生の大事があってからか、どの授業の内容も何処となく上の空と言った様な空気が流れ、授業内容もあまり進みが良くない

でも、宮内の事で少しわかった事がある。

四時間目の終わり間際、担任が話していたのを思い出す。

どうやら宮内は行方不明になっており生徒達の間では"両親が亡くなってしまい、そのショックで自殺"なんて話になっている。

そして高堀の事は、この町で起きている事件と同一犯の仕業と推測され、その後の調査は警察に任されることになった。

生徒には、同じ学校の生徒が被害にあってしまったことから、とにかく夜の一人歩きに関しては厳重注意とされ、この後の職員会議次第ではしばらく学級閉鎖も考えるとの事だ。

横島「天城、飯わねーのか? 今日も学食だろ? もうそろそろ混むぞ」

クラスメイトの横島はそう言うと、俺の返事も待たずに急いで学食へ向かって行った。

【蒼司】「いけねっ、ちょっとボーっとしすぎたか」

気がつくとクラスの皆はそれぞれ学食や自分で作ったお弁当を食べに教室から出て行き始め、残るは少数の教室組のみになっていた。

【蒼司】「さて、俺も学食行ってカレーでも食ってくるかな」

俺が席を立とうとしたその時。

日暮「なぁ天城、どういうこった? あのE組の嬢月由紀菜がお前の事ご指名だぞ」

【蒼司】「え?」

教室の入り口にはクラスメイトの日暮が言っていたように由紀菜がこっちを待っていた。



[廊下]

背景:廊下

【蒼司】「おいっす。俺も昼食たべたら探しに行こうと思っていたんだ」

由紀菜「……………」

由紀菜の顔は真っ青で、しかもご立腹のご様子。なにかあったのかな!?

【蒼司】「どう」

由紀菜「っ」

【蒼司】「…し…………」

よくわからない雰囲気に気圧され言葉が出なかった…

由紀菜はゆっくりと目を閉じ、人差し指を上に向けた後、階段方面へと歩き出した。

【蒼司】「へ? ………」

歩いていく由紀菜の足取りが少し重い

【蒼司】「何かあったのか?」

由紀菜「…………」

由紀菜が無言で背を向け歩き始めた。

黙って着いて来い!

そう彼女の背中がそう物語っていた。



[北側屋上入り口]

ドア音:

扉を開けると晴れやかな陽射しが目に飛び込む。

【蒼司】「んーっ! 綺麗な空だなぁ」

伸びをしていると

由紀菜「ずいぶん呑気ね…」

【蒼司】「うっ」

ジト目で見てくる由紀菜

ちょっと空気読めてなかったな俺…

一応話しかけやすい雰囲気を作ろうとしたんだけど…

由紀菜「こっちは心配したんだからね! あんな事の後だし、朝になっても電話来なくて、こっちからかけようとしても番号はわからないし!!!」

【蒼司】「あっ、しまった! ごめん完全に忘れてた!!! って、まさか"朝まで"って…寝ないで電話待ってたのか?」

由紀菜「っ!……」

…………まじでか! とんだ事をしてしまたったな…………もしかして具合悪そうなのは眠いからか…確かにめちゃくちゃ眠そうな顔だ

【蒼司】「ほんとごめんっ!!!」

由紀菜「…はぁ…」

由紀菜「もういいわ、別になにかあったわけじゃなさそうだし」

【蒼司】「すまん、…そういえば屋上のフェンスとか治ってるけど……」

由紀菜「あの後、戦った痕跡を残さないために直しにきたのよ…あなたの割った一階のガラスも植木もね」

うっ何もかもお世話になってるな

【蒼司】「重ね重ねありがとう! …後、ごめん」

由紀菜「もういいって、はー…眠い…それにしても、ほんとに良い天気ねー」

由紀菜の寄り掛かったフェンスの向こうには、遠く高層ビル群が立ち並んでいる。

午後とは言え、まだ冷たい風に髪をなびかせ、彼女は屋上から見える、その背後の風景を見ながら呟いた。

由紀菜「天城君、昼食は?」

由紀菜はこちらに視線を戻すと、持っていた袋から紙パックの牛乳を取り出すと、ストローを挿した。

しまった! 俺も何か買ってから来るんだった。

【蒼司】「いや、まだ…」

由紀菜「じゃ、これどうぞ」

そういって由紀菜は袋からジャムパンと紙パックの牛乳を取り、渡してきてた。

【蒼司】「えっ? いいの?」

由紀菜「ん、一つづつあるから」

そういって牛乳を飲みながら袋に手を入れると、パンを取り出した。

ってことは、最初から買っておいてくれてたのか…俺が弁当とか持って来てるかもしれないのに



由紀菜って凄く気を使う優しい子なんだな

由紀菜「パンの種類は文句言わないでね?」

【蒼司】「あぁ全然無い! むしろ助かる、ありがとう!」

貰ったのはイチゴジャムのパンだ

外見に似合わず甘いものが好きな俺には最高の昼食となった

由紀菜「………………」

由紀菜は気持ち良さそうに風を受けながらパンを口に含み遠く空を眺めている

宮内や高堀の話を出そうと思ったがお互い持っている情報は同じだろうし、なんとなく今はその話はしたくない

特にこの場所では

由紀菜の横顔を見ていて、どことなく今の俺と同じ事を考えているような気がする

だから俺も今は黙って食べる事にした。

【蒼司】「ごちそうさま」

由紀菜「ごちそうさま」

飲み終えた牛乳パックを横に置いた

【蒼司】「そういえばさ、一日に撃てる砲の数あるじゃん…」

由紀菜「えぇ」

【蒼司】「それを一発分の威力にして撃てる? 五発だったら一発で五発分の威力を出すとか……」

由紀菜「できるわよ? でも、一発分にして外したらどうするの?」

確かに、でかけりゃいいってもんでもないしな…

【蒼司】「…そっか」

由紀菜「霊力の絶対量が高いなら一発分の威力を高めたほうが良いし、いつまでも弱い砲ばっか放つ必要も無いわ戦いの中で体力や残り霊力、相手との戦い方次第で色々バランス配分していかないとね。でも、その前に天城君が自分の普段の砲の二発分を溜められる集中力があるかすらまだわからないわ」

【蒼司】「んー先は長いってことか…」

由紀菜「まー廻とか纏とかよりは向いてるかもね…溜めることは出来てたし」

由紀菜は指の上で霊気を溜めて遊んでいる

人に見られないか? と一瞬思ったが、まぁ屋上なんて誰も来ないもんな

由紀菜「まっ溜める練習は天城君一人でも出来るから自主でやっておいて」

【蒼司】「あぁ、了解」

由紀菜「それより、全霊力は溜めないでよ…身体だって霊力に変換する前の"気"が無いと活動出来ないんだからね…回復するまで意識不明で寝たきりよ…そんなの戦闘中やってみなさい、完全にあの世行きよ。」

【蒼司】「あ、あぁ、それは親父に聞いてるから大丈夫だ」

チャイム:

由紀菜「予鈴ね、そろそろ戻りましょうか」

【蒼司】「うん、昼食ごちそうさま。今度は俺がなんか奢ります」

何かイタズラっぽい笑顔に変わったぞ…

由紀菜「へー、じゃ何にしようかな~」

【蒼司】「………」

満願全席とか言われたらどうしよう…

由紀菜「あははっ、そんな顔しないでよ。御高いモノなんて強請らないからっ! 夕飯ご馳走とかで全然十分よ」

【蒼司】「一生懸命、腕振るいます!」

由紀菜「むしろ、そー言うこと言うように見えた?」

【蒼司】「うぅん、それはないよ、でもイタズラっぽく笑ったから何を言われるか少し身構えた」

由紀菜「まっ駄菓子じゃないのは確かだけれどねっ、ってもうこんな時間! 急がなきゃっ!!」

由紀菜はポケットから出した携帯のディスプレイを見てゴミの入った袋を掴むと大慌てで階段へと走り出した

そういえば、次の時間は…

【蒼司】「はっ! 次の時間科学だから第二科学室だ」

そして、恐怖の女子(女史)、美東先生の授業だ

大慌てでゴミを掴むと俺も階段へと走り出した

…由紀菜の姿はもちろん無かった

嬢月姉妹は足が速いな……

あれ? なにか忘れてるような…

まっいっか!

【蒼司】「って! うわーっ、俺も急がないとまずい!」

もちろん授業に間に合わなかった俺は、科学室には入れてもらえず、廊下から震える手で砂鉄の入ったバケツを持って、ドアの外から恨めしそうにクラスの皆を見つめ続けた。

チャイム:



[四階南側/第二科学室前/廊下]

今日は長かったなー

五時間目が終わりパンパンになった腕を回す

美東「こら天城」

ぐぁっ

何も言われない筈が無いよな…

【蒼司】「…はい、なんでございましょう」

第一種警戒態勢

美東「まさか私の授業遅刻してくるとはね…あれで済ますと思ってんの? 今日、放課後空けときなさい!」

【蒼司】「なんで!」

美東「放課後、教頭に襲撃かけるのよ!」

教頭? 襲撃?

【蒼司】「OH! ナニイッテルノー?」

美東「ヤツを素っ裸にひん剥いて学校の時計から吊るすのよ!」

【蒼司】「なんでそこまで!」

どれだけ教頭怨んでるんだ。

っていうかクビだろそれは!

美東「あいつのチクリのせいで、あたしは減給処分されたのよ…」

【蒼司】「それだけの事をしたんじゃ…」

美東「私が悪いって言いたいの?」

【蒼司】「…何したんですか?」

美東「うるさいっ!」

やっぱ美東先生がなんかしたんだな…

美東「ちょっと、そういえば翔子は?」

【蒼司】「翔子姉? はい、凄く元気ですよ、一昨日会いましたし」

美東「……お店は?」

【蒼司】「………」

なんかちょっとイライラしてきてる…逃げたいぞ

【蒼司】「……固定客もだいぶ付いたみたいでそれなりにやっていると思います」

美東「くぁーーー!!! ちっくしょぉ~! なんで翔子だけ幸せなのよ! 結婚までしやがってぇ~!」

【蒼司】「ひぃっ」

くっ首が折れる! 助けて!

美東「天城! 次の日曜日、翔子の店に爆破しに行くわよ! そうよ、翔子にはそれくらいやっても罰は当たらないはずだわ」

なんて理不尽で恐ろしいことを……

【蒼司】「あっ、あの、俺もう行かないとHRなんで」

第一種戦逃配置! ヴィー! ヴィー!

いわゆる暴力を警戒しながら逃げる準備だ。

美東「HRなんて担任のジサマに任せときゃいいのよ! あぁぁぁぁぁ! 男が…………ほしぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーー!」

【蒼司】「…い、いや、あの、ではさよならっ」

ダッ

画面効果:背景切り替え

全力で走る

今なら嬢月姉妹にも負けないんじゃないか?

周りを見ると、他の生徒も教師もUターンラッシュ。

後ろで俺を呼び止める雄たけびが聞こえるが、この際無視!!!

美人女教師で通っている科学教師、美東先生は翔子姉の大学時代の友人

二人は犬猿の仲なのか親友なのか俺もよくわからない

男を、いとも簡単に振り向かすルックスにスタイル抜群の"蕗川 美東"(ふきがわ みとう)は性格最悪、ガキに興味なし、イケメンに弱い、
そして男運悪いので付き合うまでに発展したことがない

彼氏いない歴イコール年齢………

でも、そんな所が絡みやすく怒らせなければ歳も近く親近感があり、理解ある良き先生なのである

今は危険人物だが



[教室]

教室にたどり着くとHRが始まっていた。

HRを聞き流す

由紀菜は凄いよなー

それに比べて俺はどうだろう

ほんっと情けないな…

この際、由紀菜に弟子入りしたほうがいいかも、なんて考えてしまった。

もっとよく考えるか

でも、他に頼れる人もいないのも事実だよな…

……さ、帰ろ帰ろ!



[校門]

正面玄関へ行くと鈴奈がいた。

【蒼司】「よっ」

鈴奈「あ、天城先輩!」

怯えた表情の鈴奈が、切羽詰まった様子で駆け寄って来た。

【蒼司】「どうかした?」

鈴奈「どうかしてる人に今、声をかけられてたんですよ」

ほんとに何かあったらしい

いつもより鈴奈が近くに寄っきていて、ちょっとびっくりした。

なんか、今にもしがみついて来そうな緊迫さだな。

【蒼司】「どうかしてる人?」

…一人すぐに思い浮かんだ

画面効果:半透明の公平の立ち絵

鈴奈「仲条先輩じゃありません、もっと変と言うか…気味の悪い人……気持ちの悪い人です!」

言わなくても名をわかる所が、公平の変態さが、いかに公認かわかってしまう。

それにしても気持ちの悪い人か…やっぱり公平しか浮かばないけど

【蒼司】「なんて言われたの?」

鈴奈「よっ、そこのお嬢さん可愛いね! 俺が守ってあげようか? とか」

くっくさすぎる…それになんて時代遅れなナンパ文句なんだ…

公平ですらそんな事言わないぞ

【蒼司】「守ってあげようか? って…。その人と会う前に何かあったの?」

鈴奈「いえ、私もよくわからないです。それに、それ以上何か言ってきたというわけじゃないんですが…なんか怪しい感じの人で、わからないのが余計に気持ち悪くて…」

公平風のただのナンパかな…

彼も時々わけわかめだし…

【蒼司】「もういないの?」

鈴奈「…多分……でも、まだいたりしたら怖くて…」

【蒼司】「送っていこうか?」

鈴奈「お願いしますっ!!!」

鈴奈が俺にしがみついて来そうなその時

美東「ちょっと待てぇーい!」

【蒼司】「!」

鈴奈「!」

美東「そんなピンク色な空気は、お天道様が許しても、この私がゆるさねぇ!!!」

自転車にまたがった、我校のハイパーティーチャーが仁王立ちしていた。

【蒼司】「せっ、先生…」

美東「お前達! 二人きりで帰れると思うなよ? 天城、そういう事だから、嬢月妹は私が送ってあげましょう」

鈴奈「…結構です」

ワナワナと震えながら、声にならない声を絞り出す鈴奈。

美東「なんだとっ! お前達二人、さては不純異性交遊だな! 断じて許せん先生に言ってやる!」

【蒼司】「先生はあなたでしょっ!」

鈴奈「それに、そんな条項はうちの学校にありませんよっ!」

美東「大丈夫、私の前に嬢月妹が座れば問題ない!」

鈴奈は美東先生に嬢月妹と呼ばれている

由紀菜と交流があるのかもしれない

鈴奈「何が大丈夫なんですかっ!!! 全然大丈夫じゃありませんし、意味もわかりません!」

【蒼司】「しかも、前って、生徒に漕がせる気ですか、あなたはっ!」

美東「嬢月妹! いいから黙って乗んなさい!」

テコでも動かない気だな…この人。

鈴奈「ひどい…」

でも、美東先生が一緒なら心配ないかな

鈴奈が渋々先生の"前"に座る

【蒼司】「じゃ、鈴奈…」

鈴奈「うぅ…天城先輩」

美東「じゃ出発よっ! ……っとその前に、教頭に反省文渡すの忘れてた! 今日の放課後までなのよねー」

漕ぎ出そうとした鈴奈がズッコケる。

鈴奈「もぉー、先生!」

美東「はははっ、悪いな嬢月妹」

先生は職員室に向かってすっとんで行った。

反省文て…やっぱり美東先生が何かしたんだろう…朝の自転車の仕返しに教頭の鬘にマヨネーズ付けたとか、前回美東先生がやった事を思い出してみる…

教頭もかわいそうに…

【蒼司】「はぁ……朝も美東先生のせいで自転車強奪されるし…今日は厄日に近いかも」

鈴奈「私は今日、先輩に持って行こうとした調理実習のパンナコッタを全部食べられてしまいました…もう調理
実習後は科学室付近に近寄りません」

【蒼司】「…じゃ、気持ちだけ。ありがとう」

鈴奈「あはは、いいえ。今度は絶対に届けますね」

【蒼司】「ありがとう、俺も何かお返ししないと」

鈴奈「いいんですよ、いつもお世話になっていますから」

【蒼司】「何もしてないけどなぁ」

鈴奈「先輩はいつも私がピンチの時にひょっこり現れてくれるんですよ」

【蒼司】「なんだそりゃ、だとしても偶然じゃないか?」

鈴奈「それが偶然だろうと私にとっては違うんです」

【蒼司】「…」

鈴奈「…」

…なんとも言えない空気になっちゃったな…

鈴奈はずっと俺の顔をジッと見ていて目を離さない

鈴奈「…先生、遅いですね?」

先に口を開いたのは鈴奈だった

多分、気を使ってくれたのかもしれない

【蒼司】「そうだね…教頭に怒られてるのかも」

鈴奈「それが一番あり得ますよね…」

また、鈴奈と目が合い笑う

こうして見ると鈴奈って由紀菜と似てるよな

あっ

【蒼司】「そうだ、待ってくれ。由紀菜っていつも何処で何してるか知ってる?」

鈴奈「…由紀菜……お姉ちゃん…ですか? ……」

昨日の今日で下の名前だもんな

【蒼司】「あぁ、ちょっと知り合ったというか…」

鈴奈「…お姉ちゃんなら多分、霧島図書館だと思いますよ?」

【蒼司】「霧島図書館て、星見ヶ丘の中間くらいにある図書館だよね?」

鈴奈「はい…」

【蒼司】「そっか、助かったよサンキュー!」

鈴奈「天城先輩っ!」

【蒼司】「?」

鈴奈「あっ、いえ、…なんでもないです!」

…あっそうだ!由紀菜の話だと確か鈴奈も霊力を扱えるんだったよな…

【蒼司】「…鈴奈……由紀菜から聞いたんだけど、鈴奈も霊力を使えるって本当?」

鈴奈「!?」

…おぉ驚いてる…隠してた?んだもんな

鈴奈「……天城先輩も霊術を扱う家系なんですね。そっか、先輩お姉ちゃんとそっち関連で接触していたんですね。昨日もお姉ちゃんが朝、先輩の教室前に立っていたり二人で何か動いてるような気がしたし…私、姉妹なのに仲間はずれですね。しかも…よりによってお姉ちゃんが天城先輩と一緒に動いていたなんて…」

【蒼司】「鈴奈…」

鈴奈「…………私、お姉ちゃんが一人で暮らし始めてから、霧島図書館で何かよく調べているのを知っていたし、自分自身の修練は止めていなかったんです」

鈴奈「…私が弱いから、足手まといになるから一人で暮らして一人で修練してたのかもしれませんね…」

【蒼司】「由紀菜は鈴奈が修練していない理由を知ってる風な事言ってたよ。それでも全く気にしてなかったけど…多分巻き込みたくないとか考えてるんじゃないのかな?」

【鈴奈】「……そうでしょうか…って! えぇっ!? 理由を知ってる?」

【蒼司】「あっあぁ…」

鈴奈「……………うーん、これはまずいかもしれないぞ……弱みを握られることになりかねない……」

なんかブツブツ言い始めた…

美東「お待たせ~、反省文渡したってのに怒られちまったよ。まったくアイツ、先生になってからもアタシに目つけてんだから…アタシは現役の腐った蜜柑かっての!」

美東先生も翔子姉も正樹さんもここの生徒だったのである…

学生時代から問題児の美東先生、翔子姉、正樹さん…みんな大はしゃぎで大変だったらしい

そう…あの翔子姉も正樹さんも大騒ぎキャラだったのだ

今でもたまにそうだけど…

翔子姉は斜めにぶっとんでて、正樹さんは真っ直ぐにぶっとんでいる、そして美東先生はトルネードにぶっとんでいるのだ………恐ろしい三人だ!

鈴奈「はっ! 先生いつからそこに!?」

美東「ん? たった今来たじゃないか」

さっきの話が聞かれていないとわかったのか、鈴奈はホッとしている。

鈴奈「それじゃ先輩、お先に失礼しますね」

美東「そういうこった、お前は一人寂しく帰れ! じゃーな天城! 嬢月妹は私に任せとけ。変質者は私がぶっ飛ばしてやるさ」

あれ!?

【蒼司】「知ってたんですか?」

美東「はは、ちょっと聞こえただけさ」

やっぱりこの人にも敵わないな。

美東「ほんとはお前らが変な行動に出ないか立ち聞きしてたんだけどな…くっくっくっ」

あわわわわわ

ダメだ。ほんとに逆らえないよ、この人には…

鈴奈「…」

鈴奈を見ると、少し戸惑っていた

霊力とかの話を聞かれたんじゃないかと思ってるんじゃないかな?

多分、その心配は無いはず。先生の姿が見えたのは「弱みを握られて…」くらいの時だった。

美東「さっ漕げ嬢月妹ー!」

鈴奈「はっ、はい」

【蒼司】「鈴奈、また明日! 先生もお疲れ様でした」

美東「んじゃーねー」

振り向かず、偉そうに手を振る先生

鈴奈「はい、先輩また明日」

………

……



ドナドナ(強制合意)された鈴奈を見送る。

霧島図書館か、夕飯の買出しは昨日済んでるし…帰ったらすぐに行ってみるか



[朝見乃森高校校門]

???「よう、小僧」

校門を出たら知らない人に突然話しかけられた。

【蒼司】「はい…?」

あぁ~もしかして鈴奈が言ってたのはこの人かな?

先生! 美東先生ーっ! 出ました! 変質者です! ぶっとばしてーーーーーっ!

???「なかなか可愛いよな、さっき出てった子。なんか綺麗なネーちゃんと二人乗りで帰ってったが…怖がられちまったか」

………間違いない…確実に変質者だ!

確かに気味悪い…というか気持ち悪い。

【蒼司】「……………」

どうしよう…無視しようかな……耳聞こえない人の振りとか………

???「今お前が来る前に声かけたら、怯えた上にシカトされてよ」

そして間違いなく変な人だ

普通知らない人に、一方的に話しかけられたらかなり戸惑ってしまうでしょうに…

鈴奈、さぞかし怖かっただろうな。

【蒼司】「はぁ…」

???「まぁいいや、それよりお前、おもしろいもん持ってるな」

急に相手の目が輝きだした。

そんな眼差しを僕に向けないで下さい。

【蒼司】「…」

それとも、霊感商法ってやつ? 俺をカモろうとしているのかな…だとしたら最悪だ。

???「はは、そう警戒すんなって、俺は妖魔を999匹殺さないといけないんだ」

【蒼司】「!?」

この男は何者だろう? …今確かに妖魔って言ったよな。

???「だから警戒すんなって、お前はおもしろいヤツだが根っからの人間だろ? だから安心しなって」

【蒼司】「999匹って…あなたはいったい」

???「俺はある魔女に戦いを挑み、負けて呪いをかけられたんだ」

【蒼司】「魔女…? 呪い?」

???「あー、負けたからって馬鹿にしてるな? お前なんか一瞬で消し屑に出来るくらいの魔力は持ってんだぜ」

蒼司「…で、その人がなんの用ですか?」

怪しいよなこの人…うぅ訳わかんないよ。

???「後868匹なんだよ…気が遠くなるだろ?」

後、142匹?…

ってことは、この人は妖魔を131匹殺したって事か…

それがほんとなら、実力は確実に俺より上なはず

???「この町、今面白いことになってるみたいでな…自分の占いでここに来たって訳さ。一体で数匹分ぽいの倒せばと大博打も兼ねて狙ってな、ははは」

はははって…

蒼司「おもしろいこと?」

しかも、自分の占いとか言って当たるのかな?

???「あぁ、これからもっと大変なことになるぜ。まっ、俺は呪いが消えたらすぐに去るがな」

蒼司「………」

???「お前、俺の占い信じてないだろ? 具体的には言えないが大変な事の度合いまで詳しくはわからんが過去並ぶ出来事があるかないかの事件だろうな…だから俺ははやく去りたいのさ。俺の手に負えないくらいの危険度なんでな」

蒼司「だって見てないし、言われてるだけだし」

???「まぁいいや、俺は何か起きる前に終わらせないとな。ここで会ったのも何かの縁かな? 親切で言っといてやる! この土地の護人かも知れないが、その霊力じゃ死ぬだけだ。これから起こる出来事には決して自分から関わるなよ」

蒼司「…」

???「ま、そーいうわけだ。あばよ小僧」

蒼司「はぁ、どうも」

なんだったんだろう…

でも見かけより親切な人なのかもな



[星見台]

蒼司「うぁー相変わらずキッツイなぁ…小さい頃より体力は格段に増えてるはずなのに」

一度家に帰り深夜が今日も鍵を持って遊びに行ったのを確認すると

俺は自転車のタイヤに空気を入れ、図書館へと向かったのだが

星見ヶ丘なんて登るの何年振りだろう、兎に角坂がキツイ

星見ヶ丘の坂に大苦戦している

うーむ、電動自転車でも買おうかな

さて、図書館は小さいカーブをいくつかと大きいカーブを四つ超えないといけないんだよな

上のロータリーを越えて反対側の町に行くときは下るだけだから楽なんだよな

高校入学時は、童心に返り一度もブレーキをしないで下まで降りるとかやったりした。

俺が鈴奈を後ろに乗っけて公平(一人乗り)と競争

途中にある神社の前のカーブで公平が俺たちの方に寄り過ぎてぶつかり

三人で盛大にすっころんだんだよな

俺は暫く後頭部を抑えながら悶絶し

公平は「顔が折れた」と言いながら"のたうちまわり"

鈴奈も腰打ったらしく目に涙を浮かべながら腰を抑え悶絶していた

しばらくして俺たちは、あまりの痛みに起きれなくて倒れながら大笑いした。

っと思い出していると。

二つ目の大きいカーブ

カーブの外に目をやると碧空町が広がっている

ロータリーまで行くと結構な絶景が見えるのだ。

冬は空が高くて空気が澄んでいるから遠くまで見える

風が気持ちいい

蒼司「……?」

カーブの途中に女の子が立っている。

普通は気にもならないが、なんだか違和感があった。

そして不思議な印象を受ける。

真っ赤な燃えるような深紅の長い髪。

人形のように愛らしく、とても美しい綺麗な女の子だ。

透き通った金色の瞳はどこか儚げで

ジッとこちらを見つめている

わっはっは。なんか凄いな俺…

二日連続で美少女に見つめられてしまうなんて

なんて公平風の虚しい冗談言ってないで

それよりあの女の子…

えーと、…あれ?

誰だっけ?

見覚えがある気がするんだけど

……………………

どこでだ?

ほんとに会ったっけ?

あれ…えーと……

んーわからん! いいや

俺は気にせず女の子の横を通り過ぎる

???「クスッ…見つけた」

蒼司「っ!?」

…なんかモソッっと女の子の方から聞こえた気がした。

振り返るか?

うーん少し気になるが、公平じゃあるまいし「何か言いましたか?」なんてナンパみたいな声はかけまい

しかも聞き間違いだったら恥ずかしい

うん俺の自意識過剰だ

ははは

???「…逃がさないよ……絶対に…」

……はい?

……………

…………い、いや………無視無視



[霧島図書館]

そういえば俺は今まで、この図書館の中に入ったこと無かったな

蒼司「へ~、外観は洋館みたいで少し近づきがたかったが…案外中に入ってみるもんだなぁ」

館内は暖房が効いていて暖かい

これなら上着を脱いでも良さそうだ

蒼司「由紀菜は来てるかな」

少し館内を歩いているとすぐに見つけることが出来た

由紀菜は端の方に座っており、彼女の目の前には分厚い本が四~五冊ほど積まれていた

蒼司「ふむふむ、眼鏡までかけて文学少女ですな」

由紀菜「えっ? 天城君? 誰かと思った! どうしたの図書館なんか来て。勉強なんてしなさそうなのに」

一言余計デス

蒼司「あぁ、由紀菜に見て貰いたい練習があって、鈴奈に聞いてみたらここに居るかもって、それにしても中も石で出来ていて凄い建物だなここって」

由紀菜「あー、ここ昔は教会だったから、もったいないからそのまま活用したんじゃない?」

蒼司「へー、じゃ十字架とかもあったのかな?」

由紀菜「あったんじゃないかしら。それよりもどうしたの?」

蒼司「あぁ、そうだったさっき鈴奈に会った時に霊力使えるの? って鈴奈に聞いたんだ」

由紀菜「随分ストレートね。で、それで鈴奈はなんて?」

蒼司「私だけ仲間はずれかぁって言ってた。でも修練は続けていたって」

由紀菜「あちゃーそういう風に取られたかぁ。うーん、別にそういうつもりじゃないんだけどな………でも、修練はやめてなかったんだ」

蒼司「後、俺に霊力を隠してる理由を由紀菜が知ってるって言ったら驚いてた」

由紀菜「言ったらって…天城君もいまいち理解してないわよね」

蒼司「?」

由紀菜「はぁ、いづれ気づくかな。……そっか鈴奈続けてたんだね」

由紀菜は周りに人が居ないのを確認すると少し小声で話し始めた

由紀菜「私と鈴奈は戦う事や守る事への考え方が正反対なのよ」

蒼司「………それで霊力に対しての考え方が違うって言う理由で離れて別々に暮らしていたのか……」

由紀菜「うぅん、だけどそれだけじゃない」

蒼司「? 鈴奈からはお姉ちゃんが出て行ったと言っていたぞ」

由紀菜「…」

由紀菜は返事をせず

静かに本を片付け始めた。

由紀菜は、多分この先は話さないだろうと思った

話題を変えるか。元々この話を聞きに来たんじゃないしな

まぁ流れでこうなったが

蒼司「あぁ、えーと、今日昼に話した"砲"一発分に数発分溜める練習を見てもらいたかったんだ」

由紀菜「うん、わかった。場所を変えましょう」

何処から取り出したのか不明な本たちを

当然、由紀菜に仕舞うのを手伝わされる羽目になった

またっくわからないな、最後の一つの返還場所が検討もつかない

ジャンルは………

なにこれおいしいの?



[霧島図書館前]

蒼司「何処で練習すればいいかな?」

由紀菜「碧空町側へ下った所に熊野神社があるでしょ? あそこにしましょう」

蒼司「あー、あの縁結びの神社か! あそこの神主夫婦は確か去年離婚したんだよな」

由紀菜「ふふふ、それ有名よね……あそこ絶対ご利益無いわよね」

蒼司「うん」

由紀菜「その神社の裏の雑木林で練習できるわよ」

蒼司「ふーん、由紀菜はそこで練習してたのか?」

由紀菜「うぅん、私結構歩き回ったりするし、後はあそこ寄った時にここなら敵をおびき寄せて有利に戦うことも出来るかなとか地理を確認してたの」

そういって由紀菜は自転車のスピードを上げた

蒼司「っ! …………待ってくれ~」

やっぱパーマンの本格マウンテンと高速使用のママチャリとはいえ、加速が違うなぁ

神社に着く前、さっきの赤い髪の女の子を捜したがどこにも見当たらなかった



[神社]

由紀菜「うん、いいんじゃないかしら」

蒼司「さんきゅー!」

わっはっはなんだか強くなった気分だ

由紀菜「うん、魑魅魍魎くらいなら消し去れるんじゃないかしら? まだ何発分溜めてるとかは言えないけど」

俺の見て貰いたかったのは何発分まで溜められるかだ

三発分、それが今の俺の限界

残り二発分は溜めようとすると、集中力というか慣れが足りず青い光の粒子としてあたりに分散してしまった

由紀菜「それじゃ帰りましょうか」

蒼司「あっ俺もう少しやってからにするよ」

由紀菜「そう? …それじゃお先に」

蒼司「うん、ありがとう」

ひらひらと手を振り去っていく由紀菜

よし、もうひとがんばりだ!

蒼司「速くは無いが集中するのが苦じゃなくなってきたな…」

まてよ…もうちょっと溜めてみるか

四発分

疲れていても自分の限界に挑戦してしまうのはまだ少年少女の心を忘れていない証拠さ

俺はにやけながら森の奥へと入っていった

この辺かな…

………

今、何時だろ? 携帯を取り出した

6時30分

冬場は暗くなるのが早いからな

辺りはほとんど真っ暗だ

あ!

今携帯見て思い出したよ

由紀菜にワンギリしなきゃ…

…………って

圏外

まっ、家帰ったらワンギればいっか

早く次のステップに進みたいしな

蒼司「くっ! はぁ…はぁ……なっ、なんて辛いんだ。四発分からは簡単に分散してしまう」

くそ、集中だ!

これで最後にしよう深夜が帰ってきてる頃だし

……………

………



画面効果:フラッシュ

蒼司「…?」

視線を感じた。

誰かが見ている。

その時、あたりに別の空気が流れ始じめ

音が無くなった。

木々のざわめきや風の音

全てが閉ざされ空気すらあるのかわからないほどに。

遠くの木々まで見渡せた風景に変化が訪れ

強いプレッシャーが俺を押し付けている。

身体が重い

喉が渇く

息がしづらい

敵は相手のことを見えていないのに、一歩動いたら確実な死が待っているかのような感覚に襲われた。

いや事実そうだろう

俺は絶対に勝てないとわかった

殺される

それでも、何故か俺の心は落ち着いていた。

多分あまりにも強烈な死を当たえるプレッシャーで

頭が麻痺したんだろう。

俺は勝てない相手を。死を迎え撃つために

ありったけの霊力を指先に溜めはじめた。

俺の周りに青い風が巻き起りはじめる。

そして、音が生まれた。

蒼司「…………」

今四発分の霊気が溜まっている

……………

???「…ねぇ?」

来た

もう、すぐ側にいる……

前頭葉が熱く何でも見渡せるような不思議な感覚が沸き起こる

どこかに、そうどこかに何かがいる

……五発分

体中の神経に青く心強い力の流れが行き渡る

後はトリガーを引くだけ

上か?

???「ねぇ、ちょっと君」

いきなり俺の肩に誰かが手を乗っけた。

蒼司「うわぁー!」

画面効果:エフェクト

効果音:?

効果音:爆発

???「きゃっ!」

蒼司「ぁっ!」

しまった!!!

俺はびっくりして後ろに居た子に、五発分の砲を叩き込んでいた。

女の子は後ろの木をなぎ倒しながら吹っ飛んでいく。

効果音:木折れる

効果音:木折れる

効果音:木折れる

やっちまった。

…………………………

………………

女の子?

蒼司「ごっ、ごめん」

うああ。ごめんじゃすまないだろう俺!!!

…………?

って……? ピンピンしてる……けど…………服が無い………

???「っ、いった~………? 霊力? …どういうこと?」

放った相手は坂で見かけた赤い髪の女の子だった

俺のありったけの霊力を放たれたのに傷は全く無い

そう…どこにも………

女の子が起き上がった。

と同時に

蒼司「くっ」

女の子が一直線に俺に跳躍し一瞬にして俺に圧し掛かってきた。

瞬きしたらこうなっていたのだ

そして、気がつくと息が顔に掛かるくらいの距離で

女の子はずっと俺の顔を見つめている。

蒼司「っ………」

心臓の音が相手に聞こえているんじゃないかと思うくらい高鳴っている

歳に似合わず沢山のモノを映してきたと思われる

深く…広く、見据えるような金色の瞳

…………

しばらくすると俺から離れ、女の子がゆっくりと手を伸ばし、俺の手を掴み引き上げた

訳もわからず俺は成すがままだ。

どのくらい経ったのだろうか

いつの間にか暗雲の立ち込めた薄暗い世界に

倒れた木々の間から月の光が洩れ

不思議な視界を創っていた。

月明かりに照らされた彼女は幻想的で、とてもこの世のものとは思えない美しさだった。




OP(多分)