[森奥]
由紀菜「あの魔族、速いだけじゃなくパワーもある…ここも危険かも。天城君、あの倒れてる人を神社まで運んで」
蒼司「由紀菜は?」
由紀菜「私は千尋に加勢するわ」
スウィン「あーいてて」
スウィンが目を覚ましたようだ
蒼司「スウィンッ!」
スウィン「おぉ、生きてたか」
首の辺りを押さえながらスウィンが起き上がった
自分の身体をキョロキョロ見渡し確認している。
もう大丈夫みたいだ
スウィン「…細胞に霊力を感じるな…そこの嬢ちゃんが助けてくれたのか?」
由紀菜「…」
由紀菜が頷く
蒼司「もう平気?」
スウィン「あぁ」
効果音:
スウィン「さっきの魔族、誰かと戦ってんのか?」
蒼司「あぁ、千尋っていう鬼と戦ってる」
画面効果:
スウィン「鬼? 鬼だと? おいおい大丈夫かよ?」
蒼司「大丈夫って?」
スウィン「千尋とか言って、名前まで知ってるようだけどよ、味方か?」
蒼司「あぁ、味方だよ…まさかスウィン、千尋も狙う気じゃ」
由紀菜「何、狙うって!?」
由紀菜がスウィンを怪しむ。
スウィン「おっと、そんな睨まないでくれ、俺は無差別に戦うわけじゃない。ただ鬼がお前達の変わりに魔族と戦っているのが不思議に感じただけだ。それに二人の戦い見てやる気うせたからな」
蒼司「…」
背景移動:
BGM; [n28千尋VSエンデ.mp3
彼女が森よりも高く上空に飛び上がる。
千尋「それで安全なつもり?」
地上にいる千尋は両手を広げて周りの風を巻き込み風を匠に操るように
そして、うねる風に触れながら、流すように動かす。
由紀菜「風を練っているように見えるけど、強大な妖力の力場を作り妖気の風を作っているわ。目に見えるほどの膨大な妖気の風…でもまだ何かやる気だわ。さらに妖力が上がっていく」
画面効果:
千尋の周りの風の帯に雷が見え始めた…
千尋「これでも食らえ」
千尋がエンデに向けて赤い雷の竜巻を起こした。
赤い雷の竜巻は悪魔を飲み込むように一気に立ち登る
エンデ「It stars, only sparkling~Roof star~」
詠唱を唱え終わった彼女の上空は雲が晴れ渡り星が輝き始める
その光が一枚の屋根になり、千尋の放った赤い雷の竜巻と彼女の前に現れた光の屋根が激突した。
効果音:
エフェクト:
由紀菜「なっ、なんて魔法なの! あれを防ぎきった…」
辺りには轟音だけが残り静まり返る
悪魔「お返しよ。星よ煌け。~Starry Heavens!」
千尋の攻撃を防いだ星明かりの屋根は大きく広がり巨大な一枚のレンズになった
由紀菜「綺麗…空が近い」
星の姿が大きくなると、屋根に映された星の数だけ星明りの槍が千尋へと無数の雨のように降り注いだ。
千尋「っ!」
千尋が高速で動き分身を残しながら避けるが星明かりの光柱は千尋本体へと向かっていく
エンデ「いつまで持つかしら?」
流石の千尋もやりにくそうにしている
それもその筈、千尋が避けた後の攻撃の跡は黒く焼け焦げ地面に、真っ黒い穴が空いている
降り注ぐ何万光年もの星の明かりを時間分、凝縮させた光の柱。当たれば千尋の防御を貫通どころか、千尋の肉体も滅ぶかもしれない。
千尋「やっかいな魔法ね」
千尋は分身に妖気を残しながら避け始めた。
エンデ「……やるじゃない…やっぱり、ただではやられてくれないか」
星明りの槍は分身も追いかけるようになり千尋の制約された動きに少しずつ余裕が戻り始める
エンデは攻撃の手を休めた。
千尋「…」
エンデ「この辺り一面ごと消し飛ばして上げる」
エンデが作った星の映る屋根に星の光が満ちていき白銀に輝きだした。
千尋「…」
千尋も目を閉じると身体中から大量の真紅の妖気を放出し始める。
エンデ「消し飛べっ!」
エンデは屋根の中心を掴むと弓のように引き絞り、巨大な光の球を引き放った。
千尋「六道開放」
画面効果:
千尋の足元。地面が割れ冥府が姿を現し、凶悪な妖気が噴出する。
由紀菜「なんて子なのかしら…」
千尋の両手に紅蓮の光が集束する。
蒼司「うわぁぁぁぁ」
千尋の作る妖気の塊が周りの地形を容赦なく破壊していく
こんなん、俺たちがやられちまう!
千尋「はぁぁぁぁぁっ」
千尋は二つの妖気弾を一つに合わせると、強烈な紅蓮の嵐の塊を作り、エンデに向かい放った。
千尋の紅蓮の光球が空気を焼き焦がしながら天へと昇る。
エンデ「っ!」
(ここまで一枚絵で表現:文字は消す)
画像:光球を貫く
エンデ「…あっ、あぶなかった………なんてバケモン飛ばしてくるのよ。あいつ…」
エンデの周りの大気はまだ、痺れと歪みを見せている。
大気が震えたのだ。
千尋「…む。あれでもダメか…どうにかしないとな」
あれだけの妖気を放出しても、疲れを見せていない千尋はポケットから何かを取り出すと、上空の彼女目掛けて"それ"を投げつけた。
それは無数の赤い妖力球に散らばり屋根へ向かって飛んでいく
エンデ「この星の大魔法に、お前の攻撃は無力だっ!」
効果音:ガラス割れる
エフェクト:
効果音:風で切れる音
エンデ「わっ」
エンデの身体中が無数の何かに切り傷を付けられた
驚きに集中力を切らされて星の屋根のレンズが消える
エンデ「まったくっ! なんだったのよ一体」
力の媒体を無くした"それ"がひらひらと舞いはじめる
エンデがその中の一つを手に取った
エンデ「トランプ…」
千尋「あたりっ! これだけ星の加護を受けたヤツはそうはいない。そこは賞賛するわ…それに星の魔力が篭った魔法の障壁なんて、壊すにゃ相当妖力使うからね…頭いいでしょ? 節約節約」
エンデ「ぐ…こんなチンケな方法に意識をやられるなんて!」
エンデがトランプに気を取られている間に跳躍していた千尋が彼女に攻撃を仕掛ける
画面効果:×2
効果音:金属音
画面背景:地上
エンデ「…」
千尋「翼持ってるし、地上戦は得意じゃないの?」
エンデ「馬鹿にしないで、どちらも同じよ。臨機応変じゃないとやってけないわ」
千尋「じゃここで決めときますか」
エンデ「えぇ、それじゃ、行くわよ」
先程スウィンの障壁を貫いた深緑の槍を起こした
千尋「…」
効果音:
画面効果
画面効果:赤
千尋「いいスピードだ」
千尋の肩先に血が滲む
千尋「……技術負けって事かな……」
槍が霧散する
画面効果:
効果音:
二人は素早い殴蹴で、最後の攻防を展開し始めた。
効果音:
エンデ「入られたっ」
後に引こうとするが千尋は出している足をエンデの前足の踵に引っ掛ける。
千尋「体術も、まだまだ私には及ばないわね」
エンデ「っ!」
千尋「はぁぁぁぁぁっ」
画面効果:赤
耳を塞ぎたくなるような音を起こして、触れている拳部分を爆発をさせた。
画面効果:白
スウィンが真剣に二人の戦いを見つめている
戦力分析でこれからの行動を考えてるってところかな
スウィン「…鬼の子…可愛いな」
蒼司「………」
蒼司「由紀菜、別の意味でこの人、千尋を狙うんじゃないか?」
由紀菜「…天城君、その前に"狙う"とかって、どういうこと? 話についていけないわ」
蒼司「あ、そうだよね、終わったらちゃんと話すよ」
由紀菜「うん」
蒼司「それより、早く千尋に加勢しないと」
スウィン「鬼の子に加勢か? よく見ろ鬼の子は様子を見てる。次に来る一度だけのチャンスを捜しているはずだ」
由紀菜「…そうね、私たちが入ったら慣れてきた戦いリズムが変わるから、止めたほうがいいかも。千尋は、何か狙っているみたいだし」
効果音:
画面エフェクト:
千尋が今まで以上に強い妖力を発し始めた
由紀菜「来るわ、これで決まる」
エンデ「!」
効果音:
千尋「甘い」
エンデ「ふぅんっ!」
効果音:
千尋「残念でした♪」
カウンターのカウンターのカウンター
ぞっとするような妖力の篭った一発を貰った彼女が地面に落ちる
千尋「はっ!」
一枚絵
エフェクト
効果音:
すかさず千尋が、彼女に向かって手を翳す。
千尋「はっ!」
画面効果:揺らす
画面効果:赤フラッシュ
どでかい妖力球を地面で仰向けになっている彼女へ放った。
エンデ「The first five terms each Earth ground 」
詠唱をしながらぐらりとよろめきながら立ち上がった彼女が
エンデ「Heaven heaven Blood will have blood」
一枚絵
画面効果:
二つの力がぶつかり合う
辺りに摩擦して起こった魔力と妖力の雷が走り木々や木の葉を燃やしていく
スウィン「Primitive respiratory~Shield to survive~スタニスラフ・ペトロフ!」
同時に由紀菜の身体が青く発光していく
画面効果:魔方陣(自由変形で斜めに)」
画面効果:青のエフェクト
由紀菜「っ!」
二人が結界を張ってくれた
スウィン「ふむ、強力な霊力の結界だ、俺のと二重結界で守っているから大丈夫だろう」
蒼司「…」
相変わらず役に立てないな…
由紀菜「勝負がつくみたいね」
蒼司「?」
千尋と魔族の妖魔力の拮抗状態だったのが、徐々に魔族が押されはじめた
由紀菜「千尋の勝ちよ…」
千尋「死なないでね? はっ!」
エンデ「っ、うあぁあああ!!!」
効果音:
画面効果:
画面効果:煙
音:着地
千尋「蒼司、大丈夫?」
蒼司「うん、傷も治してもらったし、二人が守ってくれたから。あの子は?」
千尋「あぁ、あの子? 消し去るほど強いの打ってないよ」
効果音:物音
由紀菜「!」
スウィン「!」
蒼司「!」
千尋「…」
エンデ「っ」
由紀菜が警戒し、スウィンが身構える
蒼司「スウィン…」
千尋「まだやる?」
警戒しながらも、まだ身体を起こすことさえままならない状態の魔族の女の子
エンデ「…私を殺すなら…」
千尋「殺さなきゃ? …」
エンデ「家に帰りたい…そっとしておいて欲しい」
由紀菜「…」
スウィン「…」
蒼司「…」
千尋「…」
千尋は何やら笑っている
エンデ「…」
由紀菜「人が来る」
千尋も気づいていたようで、神社の方へと顔を向けていた
???「エンデっ」
エンデ「親方…」
現れたのは、一人の老人だ。
しかし、顔は蒼白で、今にも倒れそうなほど息が上がっている
???「…お前達か、その子を傷付けたのは」
老人は彼女に駆け寄ると、労るように抱き起こした
老人に釘付けとなった俺たちに、エンデが警戒する。
エンデ「待ってっ! 親方は普通の人間よ。手出ししないで、うぅっ」
お爺さん「こら、動くな」
必死に起き上がろうとした彼女を、親方と呼ばれた老人が制す
スウィン「…」
スウィンは面食らっていて驚いている
???「お前達…」
エンデ「…私は生きたいだけ、生きていたい! どうして魔族は生きてちゃいけないの? なんで私は人間と同じ生活をしちゃいけないの?魔力だって周りを不幸にするために使っていないのに…同じ生き物じゃない…」
お爺さん「頼む、この子を殺さないでくれっ」
お爺さんは一番警戒しているスウィンに懇願する。
スウィン「おっ、俺は…」
お爺さんにすがる様に言われ気まずそうに目をそらした。
お爺さん「お前さん達、この子を殺ろすのか?」
由紀菜「…そんな…私だって…理由なく殺したりしないわ」
俺は千尋の方を見た。
千尋は頷いた後、目を逸らした
改まって言うのは状況的に恥ずかしかったのだろう。
俺だってこの二人の関係を見て
これ以上何かしようという気持ちは無いし、理解し合えると思った。
それに何かお互い誤解が生まれている気がする。
確かに殺されかけたが、純粋に彼女が悪という存在には見えない
そう、今横に居て助けに来てくれた千尋がそうであったかのように…
蒼司「由紀菜は? …この子なの? 例の魔力」
由紀菜「そうだけど…」
由紀菜も戸惑っているようだ
由紀菜「私は、上のロータリーで、ほっとけない程の強大な魔力を感知して、その魔力の持ち主を捜していたのよ。ここまでの魔力が定期的に発生する理由が調べても見つからない上に、大きすぎた魔力だったから心配だったのよ…何をしていたのか話せるなら聞きたいけど…」
蒼司「スウィンは?」
スウィン「…あぁ、俺も手は出さないよ。倒さなきゃいけない妖魔なんて何処にでもいらぁ」
由紀菜「治療してもいいかしら?」
エンデ「…」
由紀菜「信用して」
由紀菜も何かおかしいと思い始めているのかもしれない。
エンデ「…」
彼女が警戒をしつつ頷いた。
画面効果:
霊力による治癒が終わると彼女が自分の動きを確かめるかのように、ゆっくり立ち上がった
由紀菜「さすが元の体力はあるわね、でも体力までは回復できないから、後はゆっくり休んで」
お爺さん「…お前さん達のやりとりからするに、お互いに誤解や食い違いがあるようだが」
蒼司「…多分あると思う…」
由紀菜「…私もそれは思う」
お爺さん「どうだね、私の家に来ないかな? この子と戦っていたようだが、元々話のわかるいい子だぞ。うちに来て
皆で話をしてみないか? お茶くらいは出すぞ」
由紀菜「私は行きます。確認しないと気がすまない事があるしね…この様子だと骨折り損ぽいけど」
千尋「私は蒼司を助けたまでだけど…行くわ」
蒼司「俺も行きます」
スウィンはどうだろう
蒼司「スウィンは?」
スウィン「ちょっと来い」
蒼司「?」
俺はスウィンに引っ張られながら、皆から少し離れた所まで来た
スウィン「俺は確信犯だから行かない」
蒼司「ちょっ! だったら余計に来るべきだよ。謝るべきだよこれは」
スウィン「馬鹿野郎、お前アホか! どう考えても確実に俺がヘイドニクの次に悪者だろう。絶対ぶっ殺される」
馬鹿野郎にアホって酷い言われようだ
蒼司「いい年こいて何言ってんだよ…」
スウィン「ウルサイ! そういうこった、後は任せた。上手く言っといてくれよ! もうこの町に用はねーから。んじゃーな」
スウィンはガタガタ震えながら帰って行った。
力づくで引っ張る手も有るが、力じゃ勝てないしな………しぶしぶ戻る事にする。
由紀菜「彼は?」
蒼司「あー、スウィンは何か国に帰えるのが今日みたいで、飛行機乗り遅れないように休むってさ」
由紀菜「…何その下手な言い訳……」
エンデ「…うそ臭い」
蒼司「…」
彼女がスウィンの背中を睨みつけていた。
お爺さん「では行くかな」
蒼司「はい」
[星の囁き/午前1:03分]
俺たちは、奇妙なメンバーでロータリーまで歩いて行く
道の途中、彼女は、お爺さんに言われ角や翼を消している
このメンバーを見渡す…やっぱり、非常にありえないメンバーだ。
一つのお店の前に着くと、お爺さんと魔族の女の子が入り口を無視して通りすぎる
蒼司「あれ、入り口はここじゃないんですね」
お爺さん「そっちは店の入り口だ、閉店後はこっちからだよ」
由紀菜「なんかお宝でもありそうね」
裏口から入ると丘の上らしく、外が一望できそうだ
今は暗いからよくわかんないけど…天気がよければ、うちとか見えそうだな。
[星の囁き/地下]
大きな木の横長の机に皆がそれぞれ座る
お爺さん「さっ、紅茶でいいかな? お茶もあるが」
由紀菜「あっ、紅茶でお願いします」
蒼司「俺も紅茶で」
エンデ「紅茶」
千尋「私も紅茶」
お爺さん「うむ皆紅茶だな、ところで、お前紅茶なんて珍しいな、いつもは渋いお茶とか言うとるくせに」
エンデ「え゛っ、いや、それは…たまにはいいじゃない」
お爺さん「かっかっか、いきなり上品ぶりおって、これが年頃の乙女というやつなのかの」
魔族の女の子は、気まずそうにソッポを向いた
お爺さん「では、お前さん達、少し待っていてくれ」
そう笑いながら言い、お爺さんは階段を楽しそうに上へと登っていった。
皆、目を合わせようとはせずに、どこか落ち着かない様子で家の中を見渡している。
古い絵や時計…どことなく骨董品屋を連想させる内装
碧空町側というよりも、九名木町よりの印象かな
効果音:物音
千尋が何かを見つけたらしく立ち上がった。
千尋「あっ、なんか創りかけ発見」
エンデ「こらっ! 勝手に触るな~っ!」
千尋「これあれでしょ? …えと、なんだっけ?」
エンデ「オルゴールよ」
千尋「オルゴールかぁ…組み立つ前のオルゴールなんて見るの初めて」
興味しんしんといった様子で千尋が中を覗き込んだりしている
千尋「鏡のような美しい光を放つ金色で、とても優しい魔力の篭った綺麗な色をしてる…エンデが作ったの?」
エンデ「…そうよ」
由紀菜「私も見たい」
由紀菜も気になったのか千尋と一緒にオルゴールを眺め始めた。
由紀菜「ほんと細かくて綺麗な色、それに…暖かい」
エンデ「もういいでしょ」
二人がオルゴールを置いて戻ってきた
蒼司「それより、魔力が篭ってるって、触っても大丈夫なの?」
千 尋「あはは、職人は皆、物を作る時に、とても気持ちを込めて作るの。それは良い物を作ろうとか、この音色を聞いた人を癒したいとかそれぞれ、その人の思い や願いとも言えるモノが篭っているの。彼女の思いや願いを言うなら、私の場合、とても易しい魔力と表現しただけなの。力を言葉に出来る表現を持った私達だ からこういう言い方をしたの。魔力や妖力の存在にきづかないけど、敏感な人たちなら引き寄せられるとか相性や買い手の求めている物によっては惹かれてしま うとか、とても気持ちが篭っていて素晴らしいとか、そう言った表現をするかもね。だから蒼司が何かを作った時は霊力や気が篭っていると表現されるかもね。 気の解釈の仕方は不確定で沢山あるからややこしいだけ。兎に角このオルゴールは素敵な作品だわ」
魔族の女の子は少し気恥ずかしそうにしていた。
しばらくして、紅茶の匂いと供にお盆に紅茶を載せたお爺さんが降りて来た。
お爺さん「お待たせ、ふむ、少し居なかった間に雰囲気が柔らかくなったな」
確かに皆席に座っていたが落ち着いて腰をかけていた。
お爺さん「熱いぞ」
由紀菜「戴きます」
千尋「いただきまーす」
蒼司「戴きます」
エンデ「ありがと」
お爺さんも席に着き一口飲んだ。
お爺さん「ふー、皆いい子達で何よりだよ。では自己紹介からしようかのエンデ」
そう言って、お爺さんは柔らかい眼差しでエンデに笑いかけた。
エンデ「……私は…アメリカ・オレゴン州生まれの魔族、エンデ・ヴェナゼアル・エンツェンス。この工房で工房士見習いをしている。この人は、ここのオルゴール工房の主人で親方・石野純成さん」
蒼司「俺は天城蒼司、護人」
まだ見習いかな? っと由紀菜に問いかけるように見たが、由紀菜は肯定するように頷いた。
由紀菜「私は嬢月由紀菜、彼と同様この町の護人」
千尋「私は生まれも育ちも日本・東北で皆もわかっている通り鬼、名前は鬼灯千尋。名前は人間世界で暮らす為に自分で付けたの」
エンデ「鬼ね…」
エンデは表情の固いままで、紅茶に口を付けた。
エンデ「っ」
ぷっ
紅茶で火傷したエンデが可愛かったので、思わず笑ってしまった。
くす
千尋も気づいたのか、俺の様子に気づいてこっちを見て笑っている。
エンデ「…ん゛ん゛っ」
エンデが俺と千尋を睨んできた
………
全快のエンデなら、あの眼力で普通の人間を圧死させられるだろう…
エンデ「ふぅ……鬼に護人ね…聞きたいことがあるわ。君はさっきのシグワルド・ヘイドニクと変な男とどういう関係なのよ?」
由紀菜「シグワルド・ヘイドニクがいたのっ?」
千尋「へぇ」
蒼司「あぁ」
由紀菜「なんで言わないのよ、毎回…」
蒼司「だぁっ、ごめん! 次から次へとで、話す暇が…」
由紀菜「…いきなり帰りに、隙を突かれてとか襲われたらどうするのよ」
エンデ「いや、あいつは逃げたわ。もうこの町の近くには絶対近寄らない筈よ」
由紀菜「えっあの有名な悪魔を……」
エンデ「もう近寄りたくないって程、魂にもダメージを負わせといたから」
由紀菜「…ほんと強いのね…」
エンデ「真っ向勝負なら絶対に負けないわ。でもアイツは人々の恐怖を糧にするため、やっぱり相手にも恐怖を与えるのよ…だから罠や空間に取り込んで、とかされると私でもそんな簡単には打破できないかもしれないけど」
由紀菜「それでも負ける気はしないんでしょ?」
エンデ「まーね、あくまで難しいだけだから。寝起きでも負けないわ。 …それより君さ、もう一人の変な男とはどんな関係なの?」
蒼司「えっと、それで…俺は変な男とは、ほとんど関係ないんだ」
エンデ「それは嘘だ! じゃ、なんで一緒に戦ってたの?」
物凄い警戒する目で俺を見るエンデ
蒼司「元々、このロータリーに着たのは由紀菜と、放っておけない程の強力な魔力の正体を暴くだったんだ。定期的に魔力が発生していて、次にいつどうなるかわからないから、その強力な魔力に対抗できそうな千尋を由紀菜が呼びに言ったんだ」
エンデ「…」
蒼 司「そしたらさっき居たヴェルナー・スウィンホードがシグワルド・ヘイドニクとロータリーで戦っていて、俺は二人のどっちかが由紀菜の捜している魔力を使 う奴だと思って追いかけたんだ。後はヘイドニクがロータリーに移動して駆けつけたら、あなたとヘイドニクが戦っていて…」
エンデ「……そういう事…か。蒼司に由紀菜、千尋でいいわよね? 後あなたとか呼ばれても、うっとおしいから私の事はエンデでいいわ」
俺も皆も頷く
エンデ「由紀菜の捜している魔力の正体は間違いなく私よ。オルゴールに使う鉄や細工の加工に高純度の魔力を使ってこの世に無い音が出せないかなって思ってやってたんだけど、その実験には莫大な魔力が必要だったの…」
お爺さん「お前、細工に魔力なんぞ使ってたのか!? あれほどやるなといっとったのに」
蒼司「あれ? さっき魔力は篭るだけとか言ってなかったっけ?」
エンデ「あっ、あれは本気で一生懸命作ってるのよ。それに言葉の表し方だって。後、あれだけは他のオルゴールと一緒にしないで」
お爺さん「確かに、サボり魔のくせに、ここへ来てからずっとあれだけは完成しないのに作り続けておるな」
千尋「ふむふむ、あの作り途中のオルゴールは素晴らしいけど、他は腕自体、半人前か」
エンデ「うるさい!」
親方「ふぅ…お互い様じゃな。お前はそんな、怪しまれるほど馬鹿でかい魔力なぞ使いおって…」
エンデ「…ごめんなさい。もうしないから」
しゅんとエンデが項垂れた。
由紀菜「お二人ってどういう関係なんですか?」
親方「川から流れてきて拾った」
千尋「桃?」
エンデ「退治したろかこの鬼! 違うわよ、私は産まれた時から魔族で悪魔と呼ばれるモノだから、神々や世の宗教や対魔組織には敵の何者でもないわけ、私たちに善悪は求められていないの。魔族は悪魔、敵、抹殺対象なのよ。世界が敵だったわ」
千尋「…」
エ ンデ「それで、私は見つからないように悪魔教会で住み込みで暮らしていたのだけど、本物の悪魔がいるって知れ渡ってしまい、皆の迷惑になりたくなくって私 は教会を出たのだけれど、逃げては見つかり戦って、また逃げての繰り返し。その時に偶然アメリカのオルゴール職人の友人の所を訪ねていた親方に運良く理解 してもらい匿ってもらって、完全に行方を暗ます為に日本へ付いて来たの」
蒼司「それでスウィンと俺が殺しに来たと思って…」
エ ンデ「そうよ、ここは私にとって一番大切な場所。ヘイドニクはここの工房に充満している魔力に気づいて何かしようとしたんじゃないかしら? 何故日本に来 たのかと聞かれたら、いつもの気まぐれか、興味を引くものがあったんでしょ? まぁ、私のテリトリーに入ったのは最初で最後の大間違いだったけどね」
由紀菜「天城くん、そういえばスウィンって何者なの? 詳しく教えて」
親方「そろそろ俺は寝るとするかの、話の中身が俺はついていけんくなった」
エンデ「え、ちょっ、私一人? あんた達も帰ってよ!」
蒼司「お休みなさい」
エンデ「無視かよ!」
親方「お休み」
由紀菜「今日は、こんな場まで用意していただいてありがとうございました」
親方「いやいや、気にしなさんな。エンデに、ようやく理解してくれる友達が出来たんだ、そっちのが嬉しい。」
エンデ「ちょっと! やめてよ親方! 別に友達になるわけじゃないし!」
親方「鬼のお嬢さんもお休み」
エンデ「って親方無視っ!?」
千尋「お休みなさーい」
親方「エンデ、明日は寝坊しても構わん」
エンデ「親方…」
親方「ゆっくり楽しんで休みなさい」
エンデ「うん…ありがとう……お休みなさい」
親方はアクビをすると手をぶらぶらと振りながら階段を降りて行った
由紀菜「優しい方ね」
エンデ「私にとっては父であり、師であり、おじいちゃんでもあるの」
そういったエンデはとても安心している笑顔だった。
うっ、なんか凄いかわいい笑い方だった。
千尋「私も眠い…」
蒼司「…で、スウィンの事だったよね」
由紀菜「うん」
千尋「えっ、皆眠くないの!?」
エンデ「…蒼司、話続けて」
蒼司「うん、スウィンは昨日の学校帰りに急に声をかけられたんだ。なんでも自分の占いでこの町で大変な事が起きるからって。後、魔女に戦いを挑んで負けて妖魔を999匹倒さないと解けない呪いをかけられたとかも言ってた。それで狙いはエンデだって」
エンデ「あいつの狙いはやはり私だったのね…。でも、それにしては話が矛盾していない? あんなヘイドニク相手に苦戦してた奴が占いで自分より強い奴がこの町にいて、しかもターゲットだって知っていて着たんでしょう? 後二匹ならどんな雑魚でもいいじゃない」
…確かにそうだ。
蒼司「でも、彼にはヘイドニクからの攻撃に助けられてるし…」
エンデ「私、まだ君の事ちゃんと信用してないけどね」
まぁそんな直ぐには無理があるよな
千尋「くすっ」
蒼司「千尋っ、今笑っただろ。弁護とかしてくれよ」
千尋「いや、私も突然襲われて身包みひん剥かれたし」
由紀菜「くすっ」
蒼司「由紀菜もかよ、笑ってないで助け船出してくれ」
由紀菜「任せてよ。泥舟に乗ったつもりでいて」
?
由紀菜「私も蒼司が裸で震える千尋と対峙していたのを、しかとこの目で見たわ!」
蒼司「おいっ!!!」
まさに泥舟だよ
エンデ「やっぱりな。こいつは信用できない。すけべ変態!」
千尋「ぷぷっ、エッチすけべ変態!」
由紀菜「くくっ、エッチすけべ変態!」
蒼司「あのな…しかもエッチ増えてるし…」
千尋「冗談だよ蒼司」
由紀菜「そうよ、誰も信じないわよ」
じゃ、なんで笑いをかみ締めて言うんだ
蒼司「それよりスウィンの事は?」
エンデに話を振る
エンデ「私のほうを見るな変態!」
蒼司「ぐっ!」
俺が紅茶に手を伸ばすと、皆もそれぞれカップに手を伸ばした。
ふぅ
由紀菜「私は、彼の自然治癒力も気になるわ…私が治療した時、既に回復に向かっていたの」
徐々に真面目な顔になる面々
エンデ「本当に魔術師だろうか? それに999匹って生贄とかの数だったらどう?」
千尋「魔族を狙っていて、魔術を使う」
由紀菜「そう、魔法障壁も使っていたわね…」
エンデ「それにあの障壁の名前、ある国で戦争を止めた英雄の名前が称されていて強力な結界よ。関節的な三力や弾道する三力を防ぐのには無類の強さを発揮する。結界神の加護を持つ魔術。術者の能力が低くて大した障壁になってなかったけど」
由紀菜「彼が天城君に話した事が、どこまでがほんとかわからないわね」
蒼司「悪いやつじゃないと思うんだよな…でも何か伏せながら言ってたのは俺も気づいてる」
由紀菜「この町で大変な事が起こるって話は?」
エンデと千尋が目を伏せた。
エンデ「…この町じゃなくて、橋向こうの封鎖地区の事じゃないの?」
千尋「…ん、私もそう思う」
飲んでいた紅茶を置いて言った。
由紀菜「…あそこで何か起こるっていう事?」
エンデ「その可能性は高いと思う。私の勘がこれから良くない事が起こることを知らせてる」
千尋「同じく、私も感じている」
由紀菜「千尋までか。……私も橋手前で壁に道を浸透させたけど何一つわからなかった…」
エンデ「人間が感知するのはむづかしいと思う、それこそ司教や師匠の地位に居る人でもね…あの封鎖地区の中を感知できる人は世界に10人いるかいないかじゃない…?」
由紀菜「…二人は、あそこで何が起こるのかわかる?」
エンデ「…何が、とかまではわからない、感覚とか危機感知みたいなものだし」
千尋「良くない事ってのしか、わからないわ」
蒼司「あそこって、そもそもなんで急に封鎖になったんだ? 一つの街が根こそぎとか気味悪くないか?」
由紀菜「そうだけど、なってしまったモノはしょうがないわよ…とゆーか、天城君なんで知らないのよ」
蒼司「俺、あの事件の時日本に居なかったんだ」
千尋「へぇ、蒼司、海外経験あるんだ」
蒼司「あぁ、従姉弟達と三ヶ月程、中国行ってたんだ」
千尋「あぁー、そっかそっか」
千尋は、深夜の事を話したので合点がいったようだ。
深夜の話を出されるかと思ったが幸い出なさそうだった。
由紀菜はまだ知らないからな…
知っても何も言われないと思うが、タイミングを逃しているので自分からは言いづらい。
そして、こういう事考えてるから益々タイミングを逃すのである。
ちゃんと言い出せる時、言おう。
エンデ「私も事件時は、まだ日本に居なかったし、あそこ今は完全に入れないじゃない? 放射能がどうとかで。親方も教えてくれないから聞いてみたいわ」
由 紀菜「今では話題に出すことも無いけど、本当に酷かったわ。あそこは何十年も前までは高層ビルが立ち並び海外の企業や実業家達で賑わう大都市だった。そし て、約三十三年ほど前から、あの都市の周りに壁を作り始めたの。国土交通省からは津波から都市を守るためと言われていた。でも壁は海側まで囲い都市を四つ の道路と一つの高速道路を残し囲ってしまった。それからまもなく四つの道路と一つの高速道路を塞ぎ間然に遮断へ。中に居た人たちは封鎖前日には全員非難し たという」
蒼司「TVでインタビュー受けてた人の家族が、ある教会で殺人鬼に殺されて、その後の教会封鎖に巻き込まれてしまったとか」
由紀菜「あの事件ね、教会は快楽殺人犯の被害にあい無差別に全員が殺され、取り壊しと言っていたけど教会は高い二重の塀に囲まれた。でも、その頃には、街の囲む壁は完成していたわ」
蒼司「俺が中国に行ってる間に完全封鎖になったんだよね…壁が出来始めた当初は、街をそのままテーマパークにでもするのかと思ったけどな」
由 紀菜「お気楽過ぎよ。封鎖のきっかけはテクノポリマーという産業廃棄物処理施設での火災が原因で放射能やダイオキシン等の土壌汚染などで人が住めなくなっ たとされてるわ。元々あの街の側には、今は退去しているけど軍事基地も側にあったことからあそこは封鎖してでも被害を抑えたかったとされているわ…」
エンデ「ほんとにそれだけではないでしょう? だって」
千尋「そう、あそこは真っ白な土地だからね」
蒼司「真っ白?」
千尋「つまり、何にでもなる場所。なんでなのか入った事が無いから私もわからないけど…よくもなければ悪くも無い場所じゃないかしら?」
エンデ「そうね、私が日本に来た、もとい、この街に来たのが三年前。その時すでに封鎖されていたけどあそこは"普通"が均衡を保っている…」
蒼司「いまいち、皆の言ってる事がよくわからない。由紀菜は他に何か知らないの?」
由紀菜「うーん、あの街は父も管轄外だから何も聞いてないのよね…」
蒼司「あの街が封鎖されたのが5年前…。千尋がこの碧空町に来たのは?」
千尋「二年前よ。その前は上隣の県に居たわ。私もあそこはよくわからない土地だわ。勘が遮られるというか遮断されるというか…」
へー、千尋って結構最近この町に着たんだ。
凄い馴染んでる感じがしてたから、ずっと前から居たのかと思ってた。
そういえば歳も、知らないな。
エンデ「とにかく、これからあの封鎖地区で何かが起こりそうってのと。さっき私を狙って来た魔術師みたいな奴が何か知っているんじゃない?」
蒼司「俺、スウィンが何処の誰だかわからないんだよな…」
由紀菜「あの人ね…。本当にエンデだけが狙いかしら?」
蒼司「どうだろう?」
千尋はどう考えてるかな?
俺は考えを聞くため、千尋の方を見た。
千尋「…」
千尋と目が合う。
蒼司「…」
ごくり…
千尋「……取り合えず、もう帰らない? 私眠いよ」
ガクッ
由紀菜がコケた。
蒼司「えっ、この話は? 俺まだよくわかってないけど…」
由紀菜「はぁ…ひと段落付いたし、ヘイドニクもエンデが退いたし、もういいかしらね」
蒼司「いいの!?」
由紀菜「スウィンは敵か味方か不明…。見つけ次第、又は手がかりわかったら皆に連絡。もしかしたら、これから封鎖地区で何かわからないけど何かよくない事が起こるかも。以上」
由紀菜が、強引に終わらせる。
ま、いっか。確かに情報が少なすぎるし。
エンデ「…全員に連絡する必要は無いわ。あの魔術師が攻めてこないかぎり私は無視するし、封鎖地区で何が起ころうと、この工房に被害がこなきゃ私は知らないわ」
蒼司「そんな…折角知り合えたのに…」
由紀菜「…確かに味方になってくれれば心強いけど……」
エンデ「………蒼司、知り合いじゃないわ。顔見知りよ」
蒼司「しくしく…」
由紀菜「そうね、わかったわ。確かに何が起こるのかわからないのに、わざわざあの街に行く必要は無いわ」
千尋「私も由紀菜とエンデの意見に賛成」
蒼司「えっ、千尋も知らんぷり?」
千尋「うぅん、スウィンの事はどうでもいいけど、封鎖地区の事は今の所いいや」
蒼司「何か起きるんじゃ」
千尋「まだ起こるかもって感じ」
蒼司「千尋もエンデも由紀菜も嫌な感じがしてるのに?」
千尋「警戒しすぎもよくないわ、私たちの勘があそこの探知には鈍ってるのは本当なの、だから実際どうなるか今は詮索してもしかたがないわ」
確かに、まだ確実に何かが起こると決まったわけじゃないし、起こるかもしれないとか、起こると思うだもんな。それに何が起こるかも想像つかないみたいだし。
何が起こるかわかれば、準備もできるけど…
千尋「ふぁ~ぁ」
由紀菜「そこで何かが起こるかもしれない…か」
エンデ「…かもだけどね」
由紀菜「うん…それじゃそろそろ解散しましょう」
千尋「そうだね、うん。ごちそうさま、おじゃましました~」
エンデ「二度と来ないでね」
由紀菜「あはは、はいはい。紅茶ごちそうさま、それじゃお休みなさい」
蒼司「…」
エンデ「早く行かないの?」
結果はどうあれ殺されかけたとはいえお互い事情をよく知らなくてこうなったんだよな…
蒼司「今日はごめん」
エンデ「……?」
蒼司「その攻撃しかけたりして」
エンデ「そんな事か」
蒼司「そんな事かって」
エンデ「私だって殺しかけたのに…いいわよ。でも、私はここを守りたいし自分の身の事も関係あるから今日は会話に参加したし、ここにも入れたけど
私は別に心を許してるわけじゃないから、本当にこれでさよならよ。バイバイ」
蒼司「そっか、わかったよ。でも不思議な時間だった。ありがとう」
エンデ「………」
蒼司「ごちそうさま、バイバイ」
エンデ「…蒼司、あんたはこれから何が起こるかわからないんだし、もっと強くなっといた方が良いわよ」
蒼司「え…あ、う、うん」
エンデ「…またね」
蒼司「…? また?」
エンデ「っ、うるさいな、二度と会わないわよ! 早く行ってよ!」
蒼司「あっ、あぁ」
正直"また"とか言ってくるとは思わなかったけど、この町に住んでれば商店街とかで会うだろうし、そういう意味だろう
外に出ると月が雲に隠れているのにも関わらず、幾千もの星たちが煌き夜空を明るくしていた
坂の前で俺を待っていてくれた、二人の少女達の元へと向かう
俺は二人に並ぶと自分達の町へと帰ることにした
俺の奇妙な顔合わせのお茶会はこうして幕を閉じたのだった
………
【蒼司】「あっ、自転車っ!」
この後、九名木町まで自転車を回収しに行き、宮内との戦いの後の校舎みたく由紀菜に治してもらった。
凄い…生き物じゃなくても治せるんだ。
[天城家自宅/明け方三時七分/]
蒼司「ただいま~」
俺は寝ている深夜を起こさないように恐る恐る小さな声で言う
千尋「ただいま~」
由紀菜「お邪魔しまーす」
なんでか千尋と由紀菜が泊まっていくとか言い出しこんな状態に
由紀菜「天城君、何でおどおどしてるの?」
蒼司「あっ、いや、その…」
深夜の存在は由紀菜に言っていない…
タイミングを逃しすぎて言い出していなかったのもあるし、護人だし宮内の時の事で深夜は見つかったらどうなるのか?とか思ってしまっていたのも正直ある。でも千尋との事やエンデの事を見ていても、由紀菜には由紀菜の戒律があるみたいだ。
戒律とは人に害を及ぼす妖魔を鎮める事と言っていたし…深夜を紹介しても何とも無いだろう。
とは言え、今深夜は寝ているだろうし、朝起きてたら初対面って事で
蒼司「由紀菜は千尋と一緒に二階でいいかな?」
由紀菜「全然かまわないわ」
千尋「ねぇ蒼司、シャワー借りても良い?」
由紀菜「あっ、私も浴びたい」
蒼司「いいよ、シャワーだけ?」
千尋「うん、夜も遅いしシャワーだけで十分だよ」
蒼司「わかった、由紀菜は?」
由紀菜「私もシャワーだけで十分よ」
蒼司「了解、千尋、使い方覚えてる?」
千尋「うん、覚えてるよ」
由紀菜「えっ、二人ともそういう関係?」
蒼司「なんて白々しい…」
千尋「そう、私たちはお互いのホクロの数も知っている仲」
おいぃっ!!!
蒼司「ちょっと待て、ただ泊まっただけだろ。そもそもうちに泊まらせたのは由紀菜だろ」
由紀菜「あら、それはそうだけど、あれは天城君が悪いんだから、しょうがないじゃない。なーんてちゃんとわかってるつもりだから大丈夫だって」
蒼司「うっ、そう言われて弁解までされると、全くもって何も言えない」
千尋「あはは、じゃ由紀菜どっちから入る?」
由紀菜「千尋疲れてるでしょ?お先にどうぞ」
俺も疲れてる通り越して死に掛けたけど、千尋ほどの功績は無いし疲労もないはずだよな
千尋「ジャンケンにしようよ」
由紀菜「えっジャンケン?」
蒼司「じゃ、俺は居間でお茶飲んでるね」
なんだか楽しそうだ。
[居間]
テレビを点けて、すぐさま小音にする
こんな時間じゃ、何も面白いのやってないよなー
由紀菜「天城君、お部屋案内してもらってもいいかな?」
蒼司「あっ、由紀菜が負けたんだ?」
由紀菜「えぇ」
蒼司「了解、着替えどうしよう」
由紀菜「朝着替えに帰るから、パジャマ代わりにシャツ一枚貸してもらってもいいかしら?」
蒼司「あー、うん」
[天城家/二階]
蒼司「ここ」
効果音:ドアノブ
由紀菜「部屋がいっぱいあっていいわねー」
蒼司「お客さんは来ないけどね」
由紀菜「うーん、それはもったいないな」
蒼司「シャツ取ってくるね」
由紀菜「うん、ありがとう」
[廊下]
深夜の部屋は真っ暗になっている。
一応ノックをして
効果音:ドアノブ
深夜の部屋を覗いてみる
薄暗い部屋の中を静かに押入れの前まで歩く
効果音:押入れ等の横開き扉
蒼司「…爆睡…か」
………
蒼司「…お休み」
俺は蹴飛ばされたであろう布団を掛け直すと、自分の部屋に行くために、音を立てないように部屋を後にした。
[天城家/居間]
蒼司「お待たせ、待ったかな」
由紀菜「うぅん、ありがとう」
今日も疲れたな…
鬼に悪魔
続けて色んな人達と知り合うとはな
まぁ深夜と出合った時点で凄いけど
蒼司「由紀菜は鬼や悪魔の友達とかって居る?」
由紀菜「? いいえ、いないわ」
蒼司「今まで由紀菜ってどんな妖魔と戦ってきたの?」
由紀菜「…んー別に戦いばっかりなわけじゃなかったわ。宮内さんの事件みたいな事が起きてもいいように修練は積んでいただけ
、後は、お父さんに連れて行かれて実践経験があるだけよ」
蒼司「既に場数が違うって事かぁ」
由紀菜「と言っても対魔を仕事にしてるわけじゃないし、人づてやなんかでお父さんに助けを求めた人が着たり、今日の事みたいに、気になる
魔力や妖力、霊力を感じたら事件が起こる前に調査したりそのくらい義務みたいなものだからね…やらなければいけないと言う事ではないの」
蒼司「護人なのに?」
由紀菜「そう、昔はそうだったけど、信仰や霊や神、妖等の存在が人々の中から薄れてきた現代ではこんなもんじゃないかしら? 今じゃ消えてしまった神様
だっているはずよ」
蒼司「消えた?」
由紀菜「信仰が薄れ、祀りや祭事がダムや街開発で失われたりして、そのうち人々の記憶から無くなってしまった時神様が存在できなくなるって事、実際に消え
てしまったのかは、わからないけど力を失っていったと考えられているわ」
蒼司「鬼や悪魔も?」
由紀菜「そうかもね、鬼や悪魔は災いを為すモノ達って考えられてきて、人々の恐怖が生み出し。負のエネルギーを糧に生きてきたと思われている」
蒼司「千尋やエンデ、ヘイドニク達も?」
由紀菜「…そうだけど…
蒼司「?」
由紀菜「千尋達と出会う前はそう思っていたけど、どうやら違うみたいね。私たちと同じ生あるもので善い人もいれば悪い人もいる」
千尋、エンデ、人間だった宮内の変貌…
確かにその通りだ、善い人もいれば悪い人もいる
千尋「おっと何やら真面目な話をしてますなーお二人さん」
蒼司「千尋」
千尋「上がったよ。気持ちよかったよー! …信仰の話?」
由紀菜「えぇ」
千尋「そういえば昔、本当に居たらしいけど、信仰や崇拝で自分達、妖魔が強くなると信じてた馬鹿がいたなぁ…」
由紀菜「そうなの? 強くなるの?」
千尋「どうだろうね? 私はそんな名前売らなくても実力あるからわかんないや」
由紀菜がコケた。
蒼司「確かに…」
千尋「てか、それこそ迷信よ」
由紀菜「それじゃ、私シャワー借りるわね」
蒼司「うん」
千尋「さっシャワー上がったし、トランプやろうよトランプ」
蒼司「え゛っ」
千尋「ハマッちゃってさー、いつでもできるようにと新しいの買ったんだけど、エンデの魔法壊すのにさっき投げちゃったんだよね」
蒼司「投げたって…」
神社にさんらんするトランプが浮かぶ
千尋「大丈夫だって、紙のトランプだから」
蒼司「そーいう問題じゃない気もしたが…」
……土に返るからいっかな?
千尋「さっやろう。バイト先でも負けなしなんだから」
蒼司「わかったよ、でも今日は遅いから罰ゲームなしでやろう」
千尋「うん、いいよ♪」
五分後…
だめだやっぱ強い…
あまりに勝てないのでセブン・ブリッヂにした
さー次は何出してくるかな?
千尋「…………」
蒼司「ふっふっふ、手詰まりかな?」
千尋「…ねぇ蒼司」
彼女らしくない不安そうな瞳
蒼司「ん?」
千尋「蒼司はずっと私の友達でいてくれる?」
蒼司「あたりまえじゃんか、そんな顔しないで笑ってくれよ千尋」
千尋「うん…ありがとう蒼司」
そう言って千尋はいつもの笑顔で笑った。
蒼司「じゃ、お休みー」
由紀菜「お休みなさい」
千尋「お休みー」
半分目を瞑りかけている千尋を引っ張り誘導しながら由紀菜達が階段を上がって行った。
画面効果:フェードイン
