由紀と外山の初めてのデートの日
 
2人の中間の場所という理由で待ち合わせは上野になった
2人とも車を持っていたが、お酒を飲む前提で電車で行った
 
4時待ち合わせの10分前に丸井の前に行くと外山が立っていた
時間にきっちりした性格らしい
 
外山は由紀と声を交わすと、2・3歩下がり、由紀の全身を見た
 
そして[服装はOKだな]と独り言のように言った
 
[はぁ?何それ?] 
 
由紀からその時の話を聞いたとき麻美は腹が立った
女の容姿を値踏みするような態度を、女の前であからさまに出す外山の神経が麻美には許せなかった
 
しかし、その時の由紀は外山に認められて嬉しかったと言う
 
麻美は由紀の話にいちいちつっこむのは止めた
受け止め方はそれぞれだ
 
上野でとりあえずお茶を飲みながら、お互いの家族や近況を話し合った
その時外山は麻美のことをしつこく聞いてきたと言う
実は由紀には言わなかったが、パーティーの時に麻美は外山に交際を申し込まれていた
 
でも麻美は[他につきあいたい方がいるので]と断ったのだった
 
しつこく麻美の話を切り出すのは多分女に断られた事が無い外山の興味をそそったのだろう
 
それが由紀に失礼だとは全く気にしない外山の無神経さがまた麻美を腹立たせた
 
[私、頭にきて麻ちゃんには悪いと思ったけど]と由紀は前置きをして続けた
[外山には《麻ちゃんは胸も顔も整形よ》って言ったわ] 
と、由紀は麻美の顔は見ずにあっけらかんと言い放った
 
[はぁ!?]麻美は絶句した
 
そんな突拍子も無い嘘をついてまで外山をGETしたいと思う由紀に驚いた
 
[整形してたらもっと美人になってたよ]と麻美は笑って言った
 
整形だろうが何だろうが何といわれても構わない
外山と由紀の関係など、麻美にはどうでもいいことだった
 
 
由紀は麻美と同じ40代独身
 
由紀と麻美はお見合いパーティーで知り合い友達になった
 
由紀はパーティーで一目惚れした男とつきあい始めたが、3ヶ月もしないうちに相手に嫌気がさして会うのを止めた
 
相手はパーティーの男の中で1番目立っていた男だった
名前は外山と言う
 
中年のお見合いパーティーでは男性の殆どがスーツかジャケットなのだが、外山は黒のカットソーに黒のスラックスというラフな格好をしていた
 
[二次会はここに行きますから、後で来ませんか?]と外山は麻美に声をかけてきた
 
背が高く整った顔立ちの外山の周りには、外山と二次会に行きたい女が2・3人くっついていた
その女達に釣られて男も数人いた
 
麻美はその時他の男と喋っていたので、外山は二次会の店のメモをさっと渡したのだった
 
その、遊び慣れてる雰囲気が麻美をイラつかせた
外山は麻美が最も嫌いなタイプだった
 
女には不自由しなさそうな男なのに、何故婚活パーティーに来るのだろう?と、麻美は不思議だった
 
そのパーティーで外山に一目惚れをした由紀が、必死に外山にアプローチをしてつきあいが始まった関係だった
 
どうして由紀はすぐに外山を嫌いになったのだろう?
それも麻美には不思議だった
 
 
 
[外山の奴、離婚して高校生の娘と暮らしてるんだってさ、娘の弁当まで作ってるらしい]
 
嫌そうな顔をして由紀が切り出した
 
[この先私と結婚したら、外山の家は娘に相続させて、外山は私の家に住むと勝手に決めてるのよ]
 
 
[え?3ヶ月でそんな話にまでなってたの?]
麻美はびっくりした
 
 
 
麻美は、結婚相手を探すサイトで良さそうな相手とメールのやりとりを始めた
 
結婚相手は、似たような年齢で普通の会社員が良いと思っていた
 
もう年齢的に子供は無理だろうから、夫婦2人で平凡な結婚生活がしたい
 
専業主婦になって、夫の為に料理を作って待つような生活もいい
 
共稼ぎでもいい
毎日お互いの仕事帰りに待ち合わせて外食をして帰ってくる
休みの日には2人で台所に立つ
 
麻美の憧れの生活だった
 
サイトで見つけたのはバツ1で麻美よりも3歳上
職業は[公務員]清瀬と言う
 
清瀬のメールには趣味のガーデニングの庭がよく載っている
心優しい人なのだろうと麻美は思った
草花を育ててるから良い人とは限らないが、生活が豊かな感じはする
 
また、送られてきた清瀬の写真からも穏やかそうな優しい印象を受けた
職種は書いてないが、区役所あたりで事務仕事でもしているように見える
 
清瀬と麻美はメールのやりとりをしながら、お互いを探っていた 
何回かメールを繰り返している内に麻美は気づいた
 
清瀬に対しては何かピンと来るものが無い
どうにも気持ちが高まらない
 
要するにときめかないのだ
 
そんなある日、帰宅後いつものようにPCを開くと、清瀬から
[会って食事でもしませんか?]と誘いのメールが来ていた
 
とうとう来た…
 
何となく気乗りはしないが麻美にはもう時間が無い
恋愛感情だけで安定した結婚生活が手に入るわけじゃ無いと麻美だって解っている
 
良さそうな人だし、会っているうちに情も出てくるだろう、と麻美はOKの返事をした