クリニックの開業と経営をサポートしている社会保険労務士・行政書士の鈴木慎一(シン)です。
― “そのまま様子見”のクリニックほど収益が削られる時代へ ―
「ベースアップ評価料って、結局“賃上げの補助金”ですよね?」
先日ある院長先生から、こんなご相談をいただきました。
お気持ちはよく分かります。
日々の診療に追われる中で、
・制度の細かい算定要件は複雑
・手続きも事務負担が増えそう
・そもそも“やらなくても罰則はないのでは?”
そう感じてしまうのは自然なことです。
ですが――
もし今、
「まだ様子見でいいかな」
と考えているなら、少しだけ注意が必要です。
2026年の診療報酬改定では、
この“ベースアップ評価料”の位置づけが大きく変わろうとしています。
これまでのように
「算定すれば少し得をする制度」ではなく、
「対応していない医療機関が不利になる制度」
へと性格が変わりつつあるからです。
今日はその理由を、できるだけ分かりやすく整理してみます。
■ 2026年改定で何が起きるのか?
今回の見直しで最もインパクトが大きいのは、
“賃上げ目標の引き上げ”です。
とくに注目すべきは「事務職員」。
これまで医療職中心の議論が続いていましたが、
改定後は事務部門も本格的に対象となり、
事務職員の賃上げ目標:5.7%
という高い水準が示されています。
「え、そんなに上げるの?」
と思われるかもしれません。
しかし背景は明確です。
医療事務の仕事は、
・受付・会計の窓口対応
・レセプト業務
・電話応対
・クレーム処理
・診療補助との連携
いわば“医療機関の顔”であり、
現場を円滑に回す要の存在です。
にもかかわらず、
「業務量の割に給与水準が低い」
という理由から、
一般企業へ転職する人材が増えています。
人が定着しない。
採用してもすぐ辞めてしまう。
こうした悪循環を止めるために、
国は“本気の賃上げ”を制度として後押しし始めました。
それがベースアップ評価料の強化です。
■ 実はもっと怖い「未達時の影響」
今回の改定議論で、
経営者として見逃せないポイントがあります。
それは、
目標を達成できなかった医療機関への減算措置
です。
具体的には、
これまでの賃上げ実績が一定基準に届かない場合、
入院料などの本体点数が
継続的に減額される可能性が出てきています。
補助金がもらえない、という話ではありません。
“毎日の診療収入が削られる”
という構造です。
仮に入院料が1日あたり数十点下がるだけでも、
患者数 × 日数
で積み上がる影響額は無視できません。
静かに、しかし確実に利益を圧迫します。
まるで“気づきにくい固定費増”のように
経営をじわじわ蝕んでいくのです。
■ さらに深刻なのは「人材面」のダメージ
もう一つの影響は、数字に表れにくい部分。
それが採用力と定着率です。
もし近隣のクリニックが
「ベースアップ評価料を活用
→ 毎月の手当として職員へ還元」
と打ち出していたらどうでしょうか。
求職者は当然、
「きちんと処遇改善している医療機関」
を選びます。
一方で、何も打ち出せない医療機関は、
・応募が減る
・若手が集まらない
・中堅が流出する
という“静かな人材流出”が起きやすくなります。
給与の差は派手ではありません。
ですが確実に、
「この職場で長く働けるか」
という心理に影響を与えます。
これは院長先生が想像されている以上に、
経営へ長期的なダメージを残します。
■ では、どう対応すればいいのか?
ここで安心していただきたいのは、
いきなり基本給を大幅に上げる必要はない
という点です。
基本給を上げると、
・賞与
・社会保険料
・退職金
・将来の固定費
すべてが連動して増加します。
経営としては慎重にならざるを得ません。
そこで有効なのが、
「ベースアップ評価料手当」などの固定手当での調整
です。
手当であれば、
・制度変更への柔軟対応
・患者数変動へのリスク管理
・職員への説明のしやすさ
といったメリットがあります。
さらに改定後は、
夜勤手当の増額分も
賃上げ実績に算入できる方向です。
既存制度の見直しで対応できる余地も広がっています。
つまり――
“やり方”を間違えなければ、経営への負担を抑えながら制度対応は可能
ということです。
■ 今すぐ確認してほしい「たった1つのこと」
難しい制度解釈の前に、
まず確認すべきことがあります。
それは、
「2024年3月と比べて、今どれくらい賃金が上がっているか?」
これだけです。
ベースアップ評価料の基準は、
“2024年3月時点”が起点になっています。
つまり、
当時の賃金台帳と
現在の賃金水準を比較すれば、
✔ どれくらい足りないか
✔ いつまでに調整が必要か
が見えてきます。
まずは事務長さんへ、
「2024年3月比で賃金は何%上がっていますか?」
と一言確認してみてください。
ここがすべてのスタート地点です。
■ ベースアップ評価料は“経営姿勢の通知表”になる
これからの医療機関経営は、
「診療の質」だけでなく、
「人を大切にしているか」
という視点でも評価される時代に入ります。
ベースアップ評価料は、
その姿勢を“見える化”する仕組みとも言えます。
対応が早い医療機関ほど、
・職員が安心して働ける
・人材が定着する
・地域から信頼される
という好循環が生まれます。
逆に、
「忙しいから後回し」
「まだ様子見でいい」
この判断が、数年後に
“じわじわ効く経営リスク”
として表面化する可能性があります。
制度改定は止められません。
でも、備えることはできます。
早めの確認が、
未来の経営を守ります。
もし
✔ 自院は対象になるのか分からない
✔ 手当設計の方法を具体的に知りたい
✔ 職員説明の進め方に不安がある
このようなお悩みがあれば、
個別の状況に合わせて整理することも可能です。
“知らなかった”では済まない時代だからこそ、
今のうちに準備を進めていきましょう。
動いた医療機関から、
この改定は“追い風”になります。
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