多摩川のふもとで犬や猫と暮らしている

多摩川のふもとで犬や猫と暮らしている

動物病院 EL FARO 院長が日々の診療の中で考えたことや思いついたことを書いています。

内容は、動物や獣医療に関することや、それ以外のことも、色々です。

これまでの「診療日記」からブログにしました。
ブログタイトルは以前は「血液型性格判断はニセ科学です」というタイトルでしたが変更しました。「院長日記」とか「よしなしごと」とか幾つか考えましたがあまり面白くないので、ひとまず上の表題にしました。

何故「川の畔(ほとり)」ではなくて「川の麓(ふもと)」か?というのは、まぁわかるヒトにだけ解って頂ければイイと思います。決して”うっかり間違えた”訳ではないのです(^_^;)

 

  猫の下顎の皮膚裂傷

今回もまた猫さんの症例。

そしてまたしても、怪我を負った状態で保護されました。

 

 

保護された時は全身状態も悪く、また下顎の外傷の状態も非常に重篤だったため、近所の動物病院では「安楽死」を勧められたそうです。

しかし、入院して世話をしているうちに徐々に元気になり、食欲も出てきたので、「何とか生かしてあげたい」とのことで、当院を受診されました。

 

当院の初診時、顎の皮膚がザックリと裂けた状態で、下顎骨が剥き出しになっていました。

包帯やドレッシングが巻ける位置でもなく、手術も困難と思われました。

 

しかしよく見てみると、裂けた皮膚の創縁に、口唇粘膜の一部が残っており、これをうまく剥がして前方に引っ張ってくれば、歯肉部分と縫い合わせることが出来るのではないか?

 

ということで、手術を行いました。

 

 

骨が削れて、歯根が露出している左の犬歯は抜歯しました。

 

 

何とか綺麗に縫い合わせることが出来ました。



顎の縫合部が皿に当たらないように、術後は手からご飯を与えました。


術後の経過も良好、食欲旺盛で約2週間ほどで抜糸、退院となりました。


 

 

  猫の脇腹に生じた離開創(慢性創)

これもまた「怪我をした状態で保護された猫さん」の症例です。

保護猫さんはこのパターンが非常に多いですね。

 

 

この猫さんも、1年半くらい前から怪我をした状態が確認されていたらしいのですが、なかなか捕獲されず、ようやく捕まえることができたので近所の動物病院で縫合処置をしてもらったそうです。

しかし縫合部がすぐに開いてしまい、その後何度も縫合しては開いてしまうという状況が繰り返し続いたため、当院を受診されました。

 

皮膚が縫合糸でなんとなく2箇所くらい寄せられていますが、このままだと糸が掛かった部分の皮膚が張力に負けて切れてしまうだけなので、とりあえず”無意味な”糸を除去します。

 

 

本来の傷の大きさはこのくらい。

 

 

周辺の、皮膚が浮いている部分にピンセットを入れると、かなり深い部分までポケット状に隙間が空いているのがわかります。

 

創面の状態を一旦落ち着かせるために、数日間ドレッシング材で保存的に管理したのち、手術にて閉鎖することになりました。

 

 

手術前の、毛刈りと消毒が終わったところ。

こうしてみるとかなり広範囲の皮膚欠損創ですね😅

慢性化してるので創縁〜創内の組織も硬く柔軟性が無くなっています。

陳旧・難治化した組織をしっかりと除去し、新鮮創にしたのち、縫合しました。

 

 

また、縫合部にかかる張力を少しでも軽減させる目的で、皮膚接合用テープ(ヒト用)を併用しました。

 

 

飼い主さんのお住まいが遠方だったこともあり、術後は抜糸が完了するまで入院で管理しました。

 

 

抜糸直前の状態です。

経過は良好で、術後約2週間で抜糸、その後退院となりました。

 

  猫の背中に生じた広範囲な皮膚欠損

背中に外傷を負った状態で保護された猫さん。

近所の動物病院で数回に渡り縫合されましたが、その度に開いてしまい、どんどん傷が拡大してきたそうです。

 

猫の外傷治療はこのパターンが非常に多いです。

 

かなり広範囲なのでビックリしますよね。。。

 

ご家族の希望により、手術ではなくドレッシング材による管理で自然治癒(二期癒合)を期待したい、とのことで、しばらく保存的に管理して頑張りました。

 

数ヶ月の経過で・・・まぁしかしこのくらいが限界です。

そもそもの傷の範囲が広い、と言うこともありますし、猫の慢性創傷はなかなか保存的治療では治らないことが多いんです。

 

 

なので、手術にて閉鎖することにしました。

方法はフラップを使う方法など色々考えましたが、結局「単純に寄せて縫合する」方法でなんとか出来そうだったので、創縁を新鮮創にして皮下を十分に剥離し傷口を縫合しました。

 

 

縫合部に掛かるテンションを軽減するために、減張用テープとフィルム・ドレッシングで術創を被覆して保護しています。

 

 

術後はそれほど痛がることもなく、処置台の上でチュールをもらってご機嫌ですニヤリ

 

 

約2週間で抜糸完了。無事退院しました(遠方から来られた方だったので抜糸まで入院しました)。

 

時間が経って、毛が生えてくれば、傷跡はそれほど目立たなくなるでしょう。

 

猫さんの皮膚はよく伸びるので、かなり面積の広い欠損創でもちゃんと縫合すれば閉じることができる場合が多いです。