ふんわりと雪をかぶった妙高山を遠くに眺めながら
アクセルを踏む
薄っすらとオレンジ色に彩られた空
さっきまで青く広がっていた空も
グラデーションの比率が
オレンジの方が多めになってきた。
あまり速く走ると
この水彩画のような景色を楽しめないから
のんびりと進む
まっすぐに整備された国道18号線
北に向かうと
壮大な荒波が続く日本海
そして南に進むと
いくつものスキー場と温泉がある
タイヤが踏みしめる音は障害物も無く心地よい
眺めているうちに
妙高山の雪もオレンジ色に染まりつつある。
18号線を右に折れ
赤倉温泉に向かう緩やかな坂をひたすら上ると
ぽつぽつと灯りはじめた看板が見えてくる
お土産屋さんが並ぶ温泉街のやさしい明かり
ところどころ湯けむりが立ち
時々硫黄の臭いが混ざった風が鼻をかすめる
あーあの時代は
これらにトキめきをおぼえたんだよな
あの頃はあんなににぎわっていたのに
今は静まり返っている
大好きだったお好み焼きのお店は
もうない
並んで待ったカラオケバーも
もうない
時代が変わっていく
歴史が消えていく
無くなってから気付くものって
たくさんあるんだよな
人生後半になって
振り返る回数が多くなった。
後悔は無い
ただ
あの頃感じた感動を
もう一度感じてみたい
これが俗に言うところの
『宝物』なのだろうか?
忘れないように
大切に覚えておきたい。
ただ
なぜか
オレンジとブルーに彩られた
グラデーションは
今も何も変わっていない。
