昨夜の出来事である。
ハンバーガーが食べたくなって、最近、TVのニュースでよく耳にするファーストフード店でハンバーガーを買って帰った。
家に着く頃、降っていた雨は激しくなって、クルマから降りて家に入るまでの数メートルの間に上着が重くなるほどの量。
家に入って、買ってきた袋からハンバーガーを取り出そうと手を入れたら『ぐにゅ』とした感覚が・・驚いてひっこめたその手にハンバーガーのソースと思われるものが付いていた。袋の中を覗くと、段積みされたハンバーガーの一つが包装袋から出て、中の空間を自分カラーにしている。
『え~なんてこと!!』
『まいったな・食えんことはないけど・・』と、暫らく考えたが、交換してもらう決意をし、お店に電話をした。
『これからお届けしますので、お名前とご住所を教えてください』
と、電話の向こう。
近くだからお店まで行ってもいいんだが・・雨音が激しくなってきている今は出たくないな・・ってことで、『届けて下さい』と、お願いした。
・・・・30分待っても届けに来ない・・
あれ??? もう一度電話をした。
『あれから直ぐに向かったのですが・・すみません・・確認します』
暫らくして電話がかかってきた。『大変、申し訳ございません・・従業員が道に迷ってしまいました。 今、近くに居るそうです。直ぐに向かいます』
・
そしてまた暫らくして、今度は携帯電話の番号からかかってきた。
その声の女性は、可哀そうなほど困惑した声で 『今、ラーメン屋さんの近くに居るのですが、ご自宅がわかりません』
(おれ、説明が悪かったかな・・)
『わかりました。そこに居て下さい。 今、行きます』
と、どしゃぶりの雨の中、ラーメン屋さんの方を見ると、20mほど先にハザードが点灯したクルマが一台停まっていた。
なんだか、届けてもらった罪悪感が大きくなってきた。。
停まっているクルマまで向かおうと我が家の玄関の傘立てを見たら壊れた小さいビニール傘しか無かった・・(まあいいか、これで・・)
傘をさして停まっているクルマまで走って近づいたが誰もいない。
『あれ?』と思ったら、何かを探して歩いている人影が・・
『ここに居ますよ』と声を掛けたら、傘もささずにずぶ濡れになった背の高い女性が『すみませんでした』と、何度も頭を下げて上着の内側に入れていた袋を俺に差し出した。
彼女の髪から伝って雨が何本もの束になって流れ落ちている。
顔も涙か雨かわからないほどぐちゃぐちゃ
見かねて俺は傘を彼女の髪が隠れるまで傘を傾けて
『届けてくれてありがとうございました!』
と、精一杯の笑顔で答えた。
『すみませんでした』と、また何度も頭を下げていた。。
俺の背中もびしょびしょになっちゃったけど・・なんだか嬉しかった。
こんなに一生懸命になって届けてくれたんだなって
その届けてくれたハンバーガー・・
彼女の上着の中で雨に濡れないようにずっと守ってくれていたから雨の被害はそんなに無かったのだが
想像した通り、完全に冷え切っていた。
けど
一生懸命な姿勢に俺は感動した。
彼女が届けてくれたのは290円の商品だったけど、
なんだかすごく素敵なものを届けてくれた気がした。
誰が悪い・とか問題じゃなく、彼女は会社を代表して頭を下げ、ずぶ濡れになっても商品をお客さんに届けた。
今、店舗縮小とかで大変な会社だけど、こうやって商品一つを届けてくれる。
素敵な会社じゃないか!!! 優秀な従業員がいて!!
ほんの一部のずさんな管理が会社の品質を代表して、食に対する不安が会社のイメージを悪くしてしまったと思う。
そんなことを考えながら家の玄関まで歩いた。
『あのこ、相当な方向音痴だな』って、笑っている俺がいた。

【写真 春の青田川から妙高山を見て】