『ヨユウシャクヤク』 

6. 神力  〜ひなげし〜

 

 

 

 

あたしが生まれた時、

 

まるでこの世に生まれたことを

まだ気づいていないように、

泣きもせずただ、静かに眠り続け、

頬を無理やり叩いて起こしては、

乳を飲ませる。

 

全く手のかからない赤子を奇妙に思い、

母がとある京都の有名な神社で

みてもらったそうな。

 

その時、

「この子は間違いなくあんたが生んだ子。

そやけど、あんたの子やない。

神さんからの授かりもんや。

人とは決して比べず、大事に育てえ。」

と言われ、教養のない母は

ただ言われた通りに

素直にその天命に従った。

 

だから、母はどことなく

いつも我が子に他人行儀で、

「なあ、あたしってもらわれっ子?」

って聞くのが子どもの頃の口癖だった。

 

 

 

 

『かぐや姫』の物語を読んだ日は、

”私のお迎えはいつ来るのだろう…。”

と本気で月に想いを馳せた。

 

 

何一つ不自由ない生活

 

温かい家庭

 

 

幸せであればあるほど、言いようのない

孤独と不安、焦りが押し寄せる。

 

「一体、あたしは何のために

ここにいるのだろう…。」

本気で出家しようかと考えたり。

 

フフフ。

あの時のあたしに教えてあげたいな。

 

 

あなたのいた世界は本物で

あなたはとっても大きな愛に

包まれていたんだよ。

 

って。