ちょうど1年半、原因不明の病に苦しみはじめました。

特に辛かったのは両脚の痛み。まるで火で炙られ、さらにナイフで何度も刺されているような感覚が、昼夜を問わず続くのです。

整形外科で全身の検査を受けても、どこにも異常は見つからず、ついには脳神経内科へ。そこで初めて、「この痛みは身体の問題ではなく、心の問題かもしれない」と告げられました。

紹介された大学病院の精神科に入院し、精神分析という治療を受けることに。薬と医師との面談の日々が始まりましたが、痛みは一向に引かず、「この痛みさえ消えるなら、私は何もいらない」と、何度も何度も心の中で繰り返していました。

──ところがある日、不思議なくらい突然に、あの激痛が消えたのです。

それはもう、「夢か?」と思うほど。これまでの苦しみが嘘のようで、普通に歩けることがただただ嬉しくて、病院内を子どものように飛び回ってしまったほどでした。

けれど、そんなある日、ふと気づいたんです。

「痛みさえ取れれば、何もいらない」とあれほど願っていたのに、いざ痛みがなくなると、今度は欲が湧いてくるのです。

もっと元気になりたい。外に出たい。あれがしたい、これも欲しい…。

あのときの「何もいらない」は本心だったはずなのに。欲が出てくる自分に驚き、ちょっと戸惑いました。

でも、これも「人間だもの」…と、相田みつを先生なら言ってくれるでしょうか。