INTERMISSION-Ⅵ 『金妖日』③





 「二属性……か? これは。」
 秋も終わりのカフェテラスで、双子かと見紛うばかりの美男美女が……と言うにはまだ若すぎるので、美少年と美少女が、何やら深刻そうに向かい合っている。
 「二属性? ……と言うことは、姉様。ぼくのうしろに憑いている『コレ』は、『かなだま』ではないのですか? 」
 こ、こくん。
 姉様と呼ばれた美少女の方――酒匂真名火は、めずらしくちょっと悔しそうに頷く。
 「珍しいですね。姉様が『見立て』を間違うなんて、初めてです。」
 「ま、間違ってないわよ………………半分は合ってるし。」
 「半分? 」
 「うん。金魂であることに間違いはないの。しかも例を見ないほどに強力な神様だわ。……まぁ、あなたに憑りつくのはどれもこれもとんでもなく強烈な神様ばかりなのだけれど、ね。」
 そう言って真名火は、透けそうに薄い陶器製のカップを口に運んだ。彼女には珍しく、中身は珈琲で、やっぱり飲みなれてないらしくその茶色い液体を美しい唇に含んだ瞬間、思いっきり顔をしかめた。
 「苦い……。」
 そっと砂糖とミルクを手元に薦めてくる美少年――酒匂美鈴を無視して、真名火は美鈴の後ろ側、ちょうどテラスの手すりの外側――と言うことは本来そこは地面から相当に高い空中な筈なのだが、そこに平然と佇んでいる巨大な五円玉の姿の神霊を見つめた。
 と、
 ぴゅうっと風に乗って一枚の紙切れがひらり、と美鈴の前に舞い落ちた。
 美鈴は紙切れを一瞥すると、そのままびりびりと念入りに細かく破いて、
 ぽい。
 何の興味もなさそうに机の上にそれを丁寧に纏めてから机の上に棄てた。

 (――ああっ、その宝くじはっ)

 「どうせ『当たる』んだろう? 要らないよ。」

 突然悲しそうな声を上げた『五円玉』に向かって、振り向きもせずに美鈴は言った。
 「……えっと、貰っちゃえばいいのに。」
 「姉様! 」
 割と真顔でそう言う姉に、珍しくちょっと怒ったような声を美鈴は上げた。
 「まぁ、美鈴はそう言うわよね。そうでなければ、美鈴ではないし。……でね、二属性って言うのは」
 真名火がそう話し出そうとした瞬間、
 「おめでとうございますお客様、こちらのお席は本日のラッキー席となっております……」
 何やら豪華そうな商品を持った笑顔の店員が、美鈴に向かって歩いてきて、美鈴はうんざりしたように、
 「あ、あの、申し訳ないのですけれど、どうかお構いなく……。」
 店員に向かってひきつったような笑顔で答えた。





INTERMISSION-Ⅵ 『金妖日』③   【④へ続く】
(INTERMISSION-Ⅶ 『木妖日』③は、構成上INTERMISSION-Ⅲ 『月妖日』の後になります。)