偽クレモンのブログ

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しっかし、死ぬまでにアフロ棚、終了できるかなぁ・・・今の仕事辞めたらペースが上がるか・・・

TINARIWEN 2000年代に現れた古くて新しいサウンド

〇AMAN IMAN

ティナリウェンは1979年から活動を開始したバンド。国籍としてはマリだが、このバンドに国籍の紐づけは意味がない。ティナリウェンはトゥアレグ人のバンドだ。そして彼らのサウンドは”砂漠のブルース”と呼ばれ、世界的に一部の好き者に認められたワールドミュージックの中ではメジャーな存在だ。
 
トゥアレグ人はサハラ砂漠を拠点とするベルベル系の遊牧民。生活の場はニジェール、マリ、アルジェリアにまたがっている。元々遊牧民だが、このご時世、シティトゥアレグも増加しているとのこと。日本で一般的にはトゥアレグ・シルバーと呼ばれるアクセサリーがよく(?)知られている。。。と、私が知ったのはティナリウェンを知るよりも後だった。遅ればせでバングルと指輪を入手している。
 
ティナリウェンは、マリ拠点のトゥアレグ人が国との独立闘争を繰り広げる厳しい環境の中で結成され、当初はカセットによる作品を国内で細々展開していたが、フランスの音楽関係者の耳に留まり、2000年に入りワールドデビュー。このアルバムは単独名義での2ndで2007年リリース。私は2004年リリースの1stをM.M.誌で知り、田中勝則氏のあついエールに絆され音も聴かずに購入。その当時は、俺は世界の音楽は粗方耳を通しているからもう新しいサウンドに出会うことはないかなぁ、等と内心で嘯いていた。しかし聴いてビッツラ。けして知らない楽器を使っているとか、知らない音響が飛び交っているとか、テクニックが1ランク上(バンヘイレン聴いた時はその手の驚きだった)とかじゃない。古い懐かしい音。なのに新しい、これまで聴いたことないサウンド。世界は広かった。そして私の世界は広がった。
 
その3年後にリリースされたこのアルバムは、正直、買おうか迷った。1stで感動したが、彼らはこれ以上何も変わりようがないと思ったからだ。だけど買って正解だった。予想通り基本は何も変わっていないのに、より洗練されスケールが大くなったサウンドがそこにあった。西欧に寄り添うことなく、新しい道具を導入することなく、総括的に洗練させる。これほど難しいことはない。じゃ、まず1曲。
 
素晴らしい。これを洗練と言わずして何という?西欧の音楽要素を導入することが洗練だと思っているやつらは彼らの爪の垢でも煎じて飲むがいい。聴いて解かるように彼らはギターとベースギターがメインの楽器だ。目立った民族楽器は使っていない。道具は便利な西欧産を使うが、心はトゥアレグ、そういうことだ。そして、ギターアンサンブルが彼らの心臓部だ。パーカッション、コーラスは添え物と言ったら言い過ぎだが、まずはギターを聴いてほしい。
彼らの音を斜めにざっと聴いて大ザッパな民族音楽風だと思うのは大きな勘違いだ。ギターアンサンブルの繊細な組み立てはスタジオで綿密に考証した結果に違いない。特に2:56からの間奏部分。リードギターとサイドギターの廻し方、チェンジの仕方に耳を傾けてほしい。ここだけででご飯何杯もいける。ちなみにメインでヴォーカル取りながら真ん中のギターを弾いているイビラヒムの愛機は、このアルバムの時点で”ダンエレクトロ”のよく判らないモデル(MOD6と判明:12/21)。私もペナペナな音が欲しい時に長男から借りて型違いのダンエレクトロを使っている。他にも使っているプロはいるにはいる。しかし、ダンエレクトロはティナリウェンのために生まれた、と言ったら過言だが、こんなに本領が発揮された成果物を私は他に知らない。
もう1曲。
 
素晴らしい。ギターアンサンブルに耳を傾けてほしいばっかりに添え物扱いしたコーラス陣も、素晴らしい。でも、やっぱりギターだよな。曲通してカマされるドローン効果がとても乙。ドローンはこう使え、という見本だ。ドローンが根底を担い、ベースギター、そして曲調自体が持つまったりとしたループ感に浸る浸る。
 
サリー・ニョロの時もロキア・トラオレの時も同じことを書いたが、非欧米の音楽家が欧米のロック、ダンス音楽を真っ向から取り入れるよりも、伝統的な大衆音楽をブラッシュアップして成熟させ、評論家も大衆も唸らせる方が、遥かに難しく且つ尊いと思うのだ。その最高の事例の1つがこのアルバムだ。
 
このアルバムで世界の一部で更に大いに認められた彼らはその勢い、2012年と2018年にグラミー賞において最優秀ワールドミュージックアルバム賞を受賞している。その時のアルバムも一応、リリース時に耳を通しているが、なんか厚ぼったいサウンドで好みから外れていったので、フォローを止めた。いつもこのブログで、グラミ―獲る音楽なんてロクなもんじゃない!とホザいているが、ティナリウェンは、基本はティナリウェンのままだったのは幸いだった。
 
今年もあと一週間強だ。あぁ今年も適当にやったなぁ。。でも、これでいいのだ。