死亡保障額、保険会社に頼らず自分で決めていい
「保険金の額は自分で決める、というのも“あり”かもしれない」。先日、50代の男性と面談し、死亡保険金の額を決める際に感じたことです。この方は「60歳まで3000万円。国や会社から出る(遺族保障のための)お金抜きで年収の5年分、それで家族には文句言わせません。私の家族ですからね(笑)」と断言しました。どちらかというと「いくらくらいがいいのでしょう?」「皆さんはどれくらいにしていますか?」と尋ねられることが多いなか、珍しいケースです。
この男性のお子さんはあと2年くらいで自立なさるのですが、「自分が現役の間はそれなりの保障を持ちたい。定年まで生きていたら退職金もあるので、もう保険はいらない」ということでした。
一般に、世帯主の万が一に備えるための保険を検討する場合、「必要保障額」の設定には、保険会社のシミュレーションソフトを使うことが多いものです。家族の年齢や月々の生活費、教育費、住居費などを入力し、今後の人生に必要になるお金から国の遺族年金などを差し引き、貯蓄などでは足りない分を保険で支えましょう、という論法です。
一応、筋は通っていますし、シミュレーションをすることは悪くないと思います。ただ、あくまで参考にとどめるべきものです。例えば各社が採用している、世帯主の死亡後の生活費を従来の7割とする設定なども根拠は不明です。また、転職など将来の状況の変化にも対応していません。こうした条件のなかで数十年先までの家計の収支を計算するのは、かなり「大胆な試み」だと言えます。
さらに、保障額は「老後まで遺族が不自由しない金額」を残すことを重視するかどうか、といった「考え方」にも大きく左右されます。実際、35歳で年収400万円、妻と0歳児が1人という会社員の必要保障額をあるサイトで算出してみると、現時点では1億5000万円を超えます。生活費はもちろん、教育費から老後資金まで「すべて保険金でまかなう」ことにすると、このような金額になるわけです。
一方で、子供が自立するまでの22年間の保障に限定している保険会社の試算では約3700万円になります。世帯主が死亡した後に配偶者が働く設定にすると、保障額はさらに下がります。是非の問題ではなくそういうものだ、と認識すべきでしょう。
私は、30代の配偶者が老後まで保険金で生活するのは不自然だと感じます。二十数年分ではなく、五十数年分のお金を用意することになるからです。したがって、シミュレーションで算出した35歳の会社員が標準報酬月額30万円の場合、子供が18歳になるまで月額10万円を超える遺族年金があるわけですから、毎月20万円前後の保険金が給料のように子供が自立するまで支払われる保険で良しとしたい、と思います。無事に老後を迎える可能性を考え、保険料負担を抑えておく方が現実的な選択だと考えるからです。
やや古いデータになりますが、2008年の人口1人あたりの死亡保障額は日本が10万ドル強だったのに対し米国では6万ドル強、英国では約4万ドルでした。同年末当時の為替レート(約91円)でドル換算された数字です。死亡保障総額の対国内総生産(GDP)倍率も米国1.5倍強、英国1倍弱に対し、日本は約2.5倍です。さらに、10年の主要7カ国の国民1人当たり収入保険料(米ドル換算)でも日本は1位です。世界の1.8%強の人口で、世界市場占率は17.5%なのです(10年当時、国連による人口推計より)。
字数の関係で内訳は詳述しませんが、欧州は個人年金など貯蓄商品中心の市場です。必要保障額を考える際は、日本は世界でも珍しい「保障性商品大国」で、不安喚起が行き届いている国(?)という認識もあっていいかもしれません。
※社団法人生命保険協会「国際生命保険統計」、ニッセイ基礎研究所編「概説 日本の生命保険」(日本経済新聞社)を参考にしました。
この男性のお子さんはあと2年くらいで自立なさるのですが、「自分が現役の間はそれなりの保障を持ちたい。定年まで生きていたら退職金もあるので、もう保険はいらない」ということでした。
一般に、世帯主の万が一に備えるための保険を検討する場合、「必要保障額」の設定には、保険会社のシミュレーションソフトを使うことが多いものです。家族の年齢や月々の生活費、教育費、住居費などを入力し、今後の人生に必要になるお金から国の遺族年金などを差し引き、貯蓄などでは足りない分を保険で支えましょう、という論法です。
一応、筋は通っていますし、シミュレーションをすることは悪くないと思います。ただ、あくまで参考にとどめるべきものです。例えば各社が採用している、世帯主の死亡後の生活費を従来の7割とする設定なども根拠は不明です。また、転職など将来の状況の変化にも対応していません。こうした条件のなかで数十年先までの家計の収支を計算するのは、かなり「大胆な試み」だと言えます。
さらに、保障額は「老後まで遺族が不自由しない金額」を残すことを重視するかどうか、といった「考え方」にも大きく左右されます。実際、35歳で年収400万円、妻と0歳児が1人という会社員の必要保障額をあるサイトで算出してみると、現時点では1億5000万円を超えます。生活費はもちろん、教育費から老後資金まで「すべて保険金でまかなう」ことにすると、このような金額になるわけです。
一方で、子供が自立するまでの22年間の保障に限定している保険会社の試算では約3700万円になります。世帯主が死亡した後に配偶者が働く設定にすると、保障額はさらに下がります。是非の問題ではなくそういうものだ、と認識すべきでしょう。
私は、30代の配偶者が老後まで保険金で生活するのは不自然だと感じます。二十数年分ではなく、五十数年分のお金を用意することになるからです。したがって、シミュレーションで算出した35歳の会社員が標準報酬月額30万円の場合、子供が18歳になるまで月額10万円を超える遺族年金があるわけですから、毎月20万円前後の保険金が給料のように子供が自立するまで支払われる保険で良しとしたい、と思います。無事に老後を迎える可能性を考え、保険料負担を抑えておく方が現実的な選択だと考えるからです。
やや古いデータになりますが、2008年の人口1人あたりの死亡保障額は日本が10万ドル強だったのに対し米国では6万ドル強、英国では約4万ドルでした。同年末当時の為替レート(約91円)でドル換算された数字です。死亡保障総額の対国内総生産(GDP)倍率も米国1.5倍強、英国1倍弱に対し、日本は約2.5倍です。さらに、10年の主要7カ国の国民1人当たり収入保険料(米ドル換算)でも日本は1位です。世界の1.8%強の人口で、世界市場占率は17.5%なのです(10年当時、国連による人口推計より)。
字数の関係で内訳は詳述しませんが、欧州は個人年金など貯蓄商品中心の市場です。必要保障額を考える際は、日本は世界でも珍しい「保障性商品大国」で、不安喚起が行き届いている国(?)という認識もあっていいかもしれません。
※社団法人生命保険協会「国際生命保険統計」、ニッセイ基礎研究所編「概説 日本の生命保険」(日本経済新聞社)を参考にしました。