個人年金保険に入っていれば本当に安心なのか
「本当に安心していいのだろうか?」
「将来の安心のために」という文言が入った、日本生命の「個人年金保険」をすすめるチラシを見ながら疑問を持ちました。
「商品価値」については、よくわからないものだったからです。
個人による老後資金準備の必要性については、次のような材料が挙げられています。
(1)8割以上の人が「老後」に不安を感じている
(2)世帯主が60歳以上の単身世帯では年間約35万円、2人以上の無職世帯では約70万円、支出が収入を上回っているように、平均的な生活をしていても赤字が続く
(3)60歳以降の人生は男性で約20年、女性で約26年と長い
(4)公的年金の受取開始時期は、生年月日によって段階的に引き上げられている
たしかに、ここまで書かれていることから、なにかしら自助努力が重要だろうとは感じられます。しかし、その手段として「個人年金保険」が有用であるかどうかは、本来、別の話です。
具体的なメリットとしては「生命保険料控除」について触れてありました。
「生命保険料控除」とは税金を計算する際に、支払った保険料の額に応じて所得税・住民税の所得金額から控除を受けられる制度です。つまり、保険に加入することにより、税額負担が下がる利点も見逃せないというわけです。
そこで、税額軽減効果を加味した上で、貯蓄商品としての実力を検証してみたいと思います。
まず、年収300万円の35歳女性が60歳まで毎月1万円の保険料を支払うケースで試算します。商品は、ホームページで試算が出来る外資系保険会社の「個人年金保険」にします。
60歳までの払い込み総額は「1万円×12カ月×25年=300万円」です。その後10年間で受け取る年金総額は約343万円になるので、「戻り率」114.6%と表記されています。
しかし「25年間積み立てたお金を、10年間分割して受け取ると114.6%になります」と言われても評価が難しいでしょうから、60歳時点で、年金を一括受け取りする場合の約323万円をゴールにします。
そして、税控除効果も加えて再計算してみます。先のチラシに、年収300万円の人が年間8万円「個人年金保険」の保険料を払うと、毎年、所得税と住民税の合計で税額が4800円控除される例(独身・会社員の場合)が掲載されているので、その数字を使います。
個人年金保険料(税制適格型)を
年間8万円支払った場合の税額軽減額(例)
年間給与収入
(万円)
毎年軽減される税金額
(1)所得税(円) (2)住民税(円) 合計[(1)+(2)](円)
300 2,000 2,800 4,800
500 4,000 2,800 6,800
700 8,000 2,800 10,800
(注)日本生命の資料より抜粋
すると、実質的な保険料は{1万円―(4800円÷12カ月)}=9600円です。
月々9600円を25年間積み立てた結果が約323万円ということは、0.9%程度で運用されたことになります(「金融電卓」で検索して、金融情報サイトにアクセスすると、簡単に計算できます)。
軽減される税額は、年収が増えると大きくなります。とはいえ、年金額が30数万円程度では物足りないと考えて、月々の保険料負担を増やしても、税控除限度額は決まっているため、軽減効果は相対的に薄れていきます。
ちなみに、年収500万円の40歳男性が、月々2万5千円を60歳まで積み立てるケースでの運用利回りは、積立期間が短いこともあってか、0.7%弱でした。
「個人年金保険」には、中途解約に伴うデメリットもあります。35歳女性のケースでは税額軽減効果を加味しても、契約後10年以上、元本割れが続くのです。
また、仮に保険会社が破たんした場合、年金額がカットされる可能性も否定できません。
それでも「老後の安心のために是非!」というセールストークが通用するだろうか? と想像したりします。元本割れ期間の長さなどを思うと「リスクの割にお金の殖え方が小さい金融商品」だとする見方があってもいいように感じるのです。
老後資金に関心がある方には、他にもっと知っていただきたい年金制度があります。次回取り上げることにします。
「将来の安心のために」という文言が入った、日本生命の「個人年金保険」をすすめるチラシを見ながら疑問を持ちました。
「商品価値」については、よくわからないものだったからです。
個人による老後資金準備の必要性については、次のような材料が挙げられています。
(1)8割以上の人が「老後」に不安を感じている
(2)世帯主が60歳以上の単身世帯では年間約35万円、2人以上の無職世帯では約70万円、支出が収入を上回っているように、平均的な生活をしていても赤字が続く
(3)60歳以降の人生は男性で約20年、女性で約26年と長い
(4)公的年金の受取開始時期は、生年月日によって段階的に引き上げられている
たしかに、ここまで書かれていることから、なにかしら自助努力が重要だろうとは感じられます。しかし、その手段として「個人年金保険」が有用であるかどうかは、本来、別の話です。
具体的なメリットとしては「生命保険料控除」について触れてありました。
「生命保険料控除」とは税金を計算する際に、支払った保険料の額に応じて所得税・住民税の所得金額から控除を受けられる制度です。つまり、保険に加入することにより、税額負担が下がる利点も見逃せないというわけです。
そこで、税額軽減効果を加味した上で、貯蓄商品としての実力を検証してみたいと思います。
まず、年収300万円の35歳女性が60歳まで毎月1万円の保険料を支払うケースで試算します。商品は、ホームページで試算が出来る外資系保険会社の「個人年金保険」にします。
60歳までの払い込み総額は「1万円×12カ月×25年=300万円」です。その後10年間で受け取る年金総額は約343万円になるので、「戻り率」114.6%と表記されています。
しかし「25年間積み立てたお金を、10年間分割して受け取ると114.6%になります」と言われても評価が難しいでしょうから、60歳時点で、年金を一括受け取りする場合の約323万円をゴールにします。
そして、税控除効果も加えて再計算してみます。先のチラシに、年収300万円の人が年間8万円「個人年金保険」の保険料を払うと、毎年、所得税と住民税の合計で税額が4800円控除される例(独身・会社員の場合)が掲載されているので、その数字を使います。
個人年金保険料(税制適格型)を
年間8万円支払った場合の税額軽減額(例)
年間給与収入
(万円)
毎年軽減される税金額
(1)所得税(円) (2)住民税(円) 合計[(1)+(2)](円)
300 2,000 2,800 4,800
500 4,000 2,800 6,800
700 8,000 2,800 10,800
(注)日本生命の資料より抜粋
すると、実質的な保険料は{1万円―(4800円÷12カ月)}=9600円です。
月々9600円を25年間積み立てた結果が約323万円ということは、0.9%程度で運用されたことになります(「金融電卓」で検索して、金融情報サイトにアクセスすると、簡単に計算できます)。
軽減される税額は、年収が増えると大きくなります。とはいえ、年金額が30数万円程度では物足りないと考えて、月々の保険料負担を増やしても、税控除限度額は決まっているため、軽減効果は相対的に薄れていきます。
ちなみに、年収500万円の40歳男性が、月々2万5千円を60歳まで積み立てるケースでの運用利回りは、積立期間が短いこともあってか、0.7%弱でした。
「個人年金保険」には、中途解約に伴うデメリットもあります。35歳女性のケースでは税額軽減効果を加味しても、契約後10年以上、元本割れが続くのです。
また、仮に保険会社が破たんした場合、年金額がカットされる可能性も否定できません。
それでも「老後の安心のために是非!」というセールストークが通用するだろうか? と想像したりします。元本割れ期間の長さなどを思うと「リスクの割にお金の殖え方が小さい金融商品」だとする見方があってもいいように感じるのです。
老後資金に関心がある方には、他にもっと知っていただきたい年金制度があります。次回取り上げることにします。