特約が増えた「医療保険」は魅力なし
「これは『進化』ではないだろう」。1月にリニューアルされた日本で一番売れている「医療保険」のプレスリリースを見て感じました。
リリースには「現行商品のコンセプトである『使いやすさ』『分かりやすさ』を維持しつつ、お客様が医療保険に求めるさまざまなニーズにお応えし、より多くのお客様のお役にたてる医療保険へと進化させています」とあります。
しかし、私は「従来よりも、わかりにくくなった。わかりにくいものは使いやすくないだろう」と思ったのです。
原因は、追加できる特約が増えていることにあります。
たとえば、「生存祝金特約」です。契約が続いている期間中、生存していれば3年ごとに3万円のお祝い金が支払われます。一定期間ごとに受け取れるボーナスやお祝い金に対するニーズにお応えするために新設されたとのことです。
たしかに、「保険に入っている間に、受け取ることが出来るお金があるのは嬉しいものだ」といった声をお客様から聞く機会はあります。
ただ2点疑問があります。まず、そもそもお客様が払い込んだお金を定期的に返金する仕組みを、「ボーナス」や「お祝い金」と呼ぶのは図々しいと思います。
3万円を受け取るには必ず3万円に近いお金を払うことになるのです。仮にお金の殖え方が大きい場合でも、特約が付いている本体(主契約といいます)の価格設定で調整されているだけかもしれません。
また、「3年後の3万円」と、保険本来の存在意義とにどんな関係があるでしょうか? 今日、明日何かあった場合、自力では調達できない金額の保険金が支払われるのが保険の最大の利点です。好みの問題とする向きも認めつつ、もともと無くてもいい特約だと考えます。
他に改訂された特約には、「総合先進医療特約」もあります。1回あたりの支払限度額と通算支払限度額が2千万円に引き上げられています。先進医療特約については、本連載で昨年10月28日付で書いた記事「『先進医療特約』だけを販売できない理由」をご覧ください。私は特定の治療について320万円まで、通算700万円までとする現行商品の内容のままで構わないと思っています。
改訂の理由は「高まる『先進医療』に対する保障ニーズにお応えするため……」だそうですが、2千万円を限度としている他社商品があることを意識したものでしょう。
あらためて思うのは「お客様のニーズに応える」とは、ある意味、便利な言葉だなということです。価格競争を回避する言い訳のようにも感じられるからです。
次の表をご覧ください。最もシンプルなプランで、2002年の発売当初から2度リニューアルされた商品の内容をまとめてみました。
2002年版 2009年版 2012年版
入院日額 1万円 1万円 1万円
手術 (種類により)
10.20.40万円
入院を伴う手術10万円
外来での手術5万円
重大手術40万円
入院を伴う手術10万円
外来での手術5万円
重大手術40万円
放射線治療 - 1回につき10万円 1回につき10万円
先進医療 - 1回につき10万円 1回につき10万円
料金
30歳
'02
4620円
4970円
'09
4730円
5020円
'12
4730円
5020円
40歳
'02
6980円
7880円
'09
7900円
7750円
'12
7900円
7750円
50歳
'02
14550円
17240円
'09
17920円
17210円
'12
17920円
17210円
※料金は上段が男性、下段が女性(60歳払い済の場合)
今回のリニューアルの実態は、現行商品に付加できる「特約」が増えただけなので、09年版と12年版は同じです。
問題視したいのは、09年以降の40歳と50歳の保険料です。女性では、若干、保険料が下がっているものの、男性、特に50代男性の保険料が23%以上高くなっています。
理由は、09年から「お客様のニーズに応え、放射線治療に対応する機能が追加されたため」と説明されるかもしれません。しかし、それでいいのでしょうか?
近隣業界の方から経費率の高さに驚かれるのが保険業界です。発売から10年もの間に、経費削減等によって、商品の機能が増えても価格は上がらない(もしくは下がる)ようにすることは不可能だったのでしょうか?
50歳男性が60歳までに保険料を払い終わる設計では、215万円を「医療保険」の基本的な機能だけのために支払うことになるのです
今回取り上げた会社に限らず、各保険会社には、商品のメーカーとして「特約の改定以前に、もっと利用しやすい保険料に……」というニーズがあるのではないかと、想像をたくましくして欲しいと思います。
リリースには「現行商品のコンセプトである『使いやすさ』『分かりやすさ』を維持しつつ、お客様が医療保険に求めるさまざまなニーズにお応えし、より多くのお客様のお役にたてる医療保険へと進化させています」とあります。
しかし、私は「従来よりも、わかりにくくなった。わかりにくいものは使いやすくないだろう」と思ったのです。
原因は、追加できる特約が増えていることにあります。
たとえば、「生存祝金特約」です。契約が続いている期間中、生存していれば3年ごとに3万円のお祝い金が支払われます。一定期間ごとに受け取れるボーナスやお祝い金に対するニーズにお応えするために新設されたとのことです。
たしかに、「保険に入っている間に、受け取ることが出来るお金があるのは嬉しいものだ」といった声をお客様から聞く機会はあります。
ただ2点疑問があります。まず、そもそもお客様が払い込んだお金を定期的に返金する仕組みを、「ボーナス」や「お祝い金」と呼ぶのは図々しいと思います。
3万円を受け取るには必ず3万円に近いお金を払うことになるのです。仮にお金の殖え方が大きい場合でも、特約が付いている本体(主契約といいます)の価格設定で調整されているだけかもしれません。
また、「3年後の3万円」と、保険本来の存在意義とにどんな関係があるでしょうか? 今日、明日何かあった場合、自力では調達できない金額の保険金が支払われるのが保険の最大の利点です。好みの問題とする向きも認めつつ、もともと無くてもいい特約だと考えます。
他に改訂された特約には、「総合先進医療特約」もあります。1回あたりの支払限度額と通算支払限度額が2千万円に引き上げられています。先進医療特約については、本連載で昨年10月28日付で書いた記事「『先進医療特約』だけを販売できない理由」をご覧ください。私は特定の治療について320万円まで、通算700万円までとする現行商品の内容のままで構わないと思っています。
改訂の理由は「高まる『先進医療』に対する保障ニーズにお応えするため……」だそうですが、2千万円を限度としている他社商品があることを意識したものでしょう。
あらためて思うのは「お客様のニーズに応える」とは、ある意味、便利な言葉だなということです。価格競争を回避する言い訳のようにも感じられるからです。
次の表をご覧ください。最もシンプルなプランで、2002年の発売当初から2度リニューアルされた商品の内容をまとめてみました。
2002年版 2009年版 2012年版
入院日額 1万円 1万円 1万円
手術 (種類により)
10.20.40万円
入院を伴う手術10万円
外来での手術5万円
重大手術40万円
入院を伴う手術10万円
外来での手術5万円
重大手術40万円
放射線治療 - 1回につき10万円 1回につき10万円
先進医療 - 1回につき10万円 1回につき10万円
料金
30歳
'02
4620円
4970円
'09
4730円
5020円
'12
4730円
5020円
40歳
'02
6980円
7880円
'09
7900円
7750円
'12
7900円
7750円
50歳
'02
14550円
17240円
'09
17920円
17210円
'12
17920円
17210円
※料金は上段が男性、下段が女性(60歳払い済の場合)
今回のリニューアルの実態は、現行商品に付加できる「特約」が増えただけなので、09年版と12年版は同じです。
問題視したいのは、09年以降の40歳と50歳の保険料です。女性では、若干、保険料が下がっているものの、男性、特に50代男性の保険料が23%以上高くなっています。
理由は、09年から「お客様のニーズに応え、放射線治療に対応する機能が追加されたため」と説明されるかもしれません。しかし、それでいいのでしょうか?
近隣業界の方から経費率の高さに驚かれるのが保険業界です。発売から10年もの間に、経費削減等によって、商品の機能が増えても価格は上がらない(もしくは下がる)ようにすることは不可能だったのでしょうか?
50歳男性が60歳までに保険料を払い終わる設計では、215万円を「医療保険」の基本的な機能だけのために支払うことになるのです
今回取り上げた会社に限らず、各保険会社には、商品のメーカーとして「特約の改定以前に、もっと利用しやすい保険料に……」というニーズがあるのではないかと、想像をたくましくして欲しいと思います。