司馬遼太郎の歴史小説『尻啖え孫市』、読了しました。


『尻啖(くら)え孫市』は、戦国時代、紀州雑賀(さいか)の小大名だった雑賀孫市の物語です。

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一般に「雑賀孫市」とされる鈴木重秀


「雑賀衆」と言えば、「根来衆」と並ぶ戦国時代きっての鉄砲集団であり、

各地の戦場で活躍した傭兵部隊です。

孫市はその雑賀衆の頭目であり、当然鉄砲の名手でもありました。

史実では、孫市についての史料は少なく不明な点が多い人物ですが、

この小説ではそれを逆手にとって

豪快で、楽天的で、無類の女好きという孫市像を見事に作り上げていました。


雑賀衆は、織田信長と本願寺の10年に渡る戦争「石山合戦」において

本願寺側について戦い、多くの武功を立てたことで有名です。

『尻啖え孫市』では、この本願寺の教え、すなわち浄土真宗(一向宗)が

雑賀を始めとした全国の人々にどのように伝わっていったか、

そして戦国期に浄土真宗がどのような影響をもたらしたかを

丁寧に描いていて、読んでいてとても勉強になりました。


また、あるきっかけで知り合って親交を深め、

物語前半は味方として戦い、後半は敵同士で戦い合う

孫市と藤吉郎(羽柴秀吉)の友情も、興味深かったです。


豪快で爽やかな小説でした。


次は『城塞』か『花神』を読むぞーおんぷ