ひさしはとても変わった奴だった。
大阪弁で言う「ええカッコしぃ」というヤツだ。
自分の家は金持ちである(まあ、当時の仲間の間では裕福な方であったとは思うが)
毎日朝・昼・夜と、ステーキしか食べたことがない
自分は心臓が右にある
しかもその心臓に毛が生えている
挙げればキリがない程のええカッコのしようである。
心臓に毛が生えていることがええカッコなのかは分からないが…
そんなひさしは、いわゆる「イジラれキャラ」だ。
陰湿なイジメではなく、仲間ではあるけど、イジられる、健全なイジメとでも言おうか…
ひさしを特にイジったのがタブ君とタヒだ。
このタブタヒコンビはとにかくタチが悪い。
なんせイタズラ好きなのだが、そのイタズラが常に犯罪スレスレである。
タブ君がひさしの背後から突然ロープで首を絞め、気を失って倒れたひさしが、後頭部を裂傷するという事故が起きたこともあった。
なんせ、加減を知らない悪ガキ二人である。
ひさしはサル顔だったので、主にそこをイジられるのだが、タブタヒコンビオリジナルのひさしのテーマソングがあった。
「ひーさしーはサールーー」
というだけだが。
これを二人が歌うと、ひさしはそのサル顔をより一層赤らめて激高し、二人を追いかけまわした。
子供たちにとって、たわいもない遊びなのだが、大人にとっては少々心配の種でもあった。
「ひさし君がイジメられている」
よく先生方で話し合いになり、クラスでもホームルームの議題として取り上げられることもあった。
しかし、当のひさしが、なぜ自分のことで大人が深刻になっているのか、よく分かっていない状況だった。
ある日、私はひさしに呼び出された。
神妙な面持ちで、校舎の裏に私を呼び出し、二人きりになったところで彼は切り出した。
「こうじ…お前だけには分かってほしいことがあんねん…
俺…
サルちゃうねん…!」
分かってるわ!!
続く