今、電車が車庫で止まっている状況を考えます。
車両の丁度中央から、前方と後方に向かって同時にフラッシュをたいたとします。
すると、前端と後端に同時に光が到達するでしょう。
それでは、今度は電車を走らせて同じ実験をしましょう。
電車は前方に動いてはいますが、慣性運動をしていて加速減速していないとします(慣性系)。
中心から前後に同時に光を発します。
前端と後端、どちらに先に光が着くでしょうか?
電車の中(ある慣性系I)の人から見ると、
やはり前端と後端に同時に光が到達するというのが、特殊相対論での帰結です。
それでは本題ですが、この走っている電車+光を、電車の外の別な慣性系I'、
例えば静止した駅のプラットフォームから見ている人にはどう見えるでしょうか?

結論を言うと、特定の慣性系(電車)の中で同時の事象も、
他の慣性系(駅)から見ると同時ではないということが起きるのです。
まず最初に、駅に立っている人の時空間で、同時刻の点というのはどのように並ぶか
思い出しましょう。
下の図のように、横軸に空間、縦軸に時刻をとると、同時刻の点は水平に並びます。
同時刻とは、時刻成分=縦の高さが同じというのが定義ですから、
水平に並ぶのは当たり前です。

具体的に各点の時刻がわかるよう、
1秒に90度、4秒で一周する4秒時計を書き込んでみてあります。
次に、これに光速の50%の速度で動く電車(半光速電車)の世界線を書き込んで見ましょう。

半光速電車の中の人(駅に対して半光速で動いている慣性系)の
時間軸(位置一定の線、とりわけ原点の軌跡)は、
この斜めの世界線ということになります。
傾き具合は、光速と電車の速度比で決まります。
半光速電車の空間軸(時刻一定の線)は、
相対論の要請(光速度が慣性系によらず一定など)から、
時間軸を光円錐に対して線対称の位置に移したものとなります。
(光円錐については、「光円錐:四次元宇宙の中の認識可能な部分」を参照してください)

一番最初の駅に立っている人の図では水平だった同時刻線が、
電車の中の人にとっては傾いているのです。
つまり、
駅の人にとっての同時と、電車の中の人にとっての同時は一致しません。
駅に立っている人が見た4秒時計を書き込んで確認しましょう。

半光速慣性系の空間軸には、電車の中の人にとっては時刻0の点がならんでいます。
しかし、駅に立っている人から見ると、どれも違う時刻を指しているのです。
最初の問題に戻って、半光速電車の中央から出た光がいつ前後端に届くか考えましょう。
電車の中央を中心にした時空図に電車の世界線を書き込んでみます。

半光速で動く電車の前面に光が届くのは、
電車の前端の世界線と光円錐の交点ですね。
電車の中央にいる人にとっての空間軸を足してみます。

電車内にいる人にとっての同時線は、必ずこの空間軸と並行になっています。
半光速で動く電車の前面に光が届くのは、電車の前端の世界線と光円錐の交点で、
下の図のAの時点でした。
同様に、後端に光が届くのは、Bの時点です。

実はAとBは、半光速電車中央の慣性系の同時刻線上(青太線)に載っています。
電車内の系にとって『水平』なのです。
簡単に言うと、AとBは電車中央にいる人にとって同時です。
(実は電車のどこにいる人にとっても同時です)。
これは、中央から出た光は電車内の人から見ると前後端に同時につく
という事実の言い換えでもあります。
しかし、駅の立っている人にとっては、AとBは到底同時には見えません。
実際、駅で測ったBの時刻(直交してる座標でみたBの高さ)は0.266...秒、
Aの時刻は0.8秒です。(例えば電車の長さが24万Kmだった場合の計算)
電車の中の人にとって、中央から出た光は前端後端に同時に届きます。
しかし、電車の外の駅から見ていると、光は同時に届いておらず、
後端に先に届くのです。
特殊相対論についてよく語られる話に、
高速で運動する物体の時間は遅れるというのがあります。
しかし、単純に、
「物体の時間は遅れる」
あるいは定量的なつもりで
「速度vの物体の時間の流れは、静止した系のroot(1-v^2/c^2)」 (cは光速)
などと言ってしまうと、正しくない思い込みを持ち込んでしまう危険があります。
これだと、外部の慣性系の時刻tの所から見た時に、
電車の中がどこも同じ時刻root(1-v^2/c^2)*tに見えるかのように勘違いしかねません。
実際、入門書の中には、
単純化してロケットや電車の中に時計を1つだけ書き込んで説明しているものも多いでしょう。
しかし、上記でみたように、それでは理解ができないような事柄があるのです。