※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
それから私は、台所でコーヒーと紅茶を用意した。
(突然のことでびっくりしたけど……)(嬉しかった……)
私は入江さんの温もりの残る唇を、そっと指で押さえた。
「入江さんはコーヒーを飲む時、ミルクを数滴落とすだけでしたよね」
部屋の白いテーブルにコーヒーと紅茶を置いた私は、ミルクポットに手を伸ばし、入江さんの瞳を上目遣いに見つめた。
(わっ……さっきのことがあるから)(まともに目……見られないよ)
「ああ……あの時。喫茶店で」
入江さんは一瞬、驚いた表情を浮かべると、数日前の出来事を思い出すように、少し上を向いた。
「良く覚えてたな。そんなこと」
「なんとなく、忘れたくなかったんです」
私の頬がうっすらと桜色に染まっていく。
「アンタは適量だったよな」「えっ……?」
入江さんが、私の紅茶のカップに砂糖とミルクを入れてくれた。
「なんか……。覚えていたかったからよ」
入江さんは不器用に微笑み、そう呟いた。
(入江さんも……)(私と同じこと……思っててくれたんだ)
「なぁ……。○○」「!?」
ずっとアンタとかお前だったけど、入江さんがふいに私を名前で呼んでくれた。
「名前、覚えていてくれたんですね」
「お前の取り巻き共が、ギャアギャア言ってたからよ」
「……○○」
入江さんはもう一度、私の名前を噛み締めるように呟いた。
その瞳は、やっぱり湖のように澄んでいて。私は思わず、見とれてしまった。
「ケガが治ったらよ。どっか、一緒に行くか?」「一緒に……?」
優しく誘ってくれた入江さんの服を、私はぎゅっと握り締めた。
「……?」
入江さんが不思議そうに、私の顔を覗き込む。
「つかんでないと……。どこかに行っちゃいそうだから……」
「行かねぇよ……」
「やっと、一番居心地のいい場所、見つけたんだからよ」
入江さんはそう言うと、服をつかんだ私の手を握り締め、私を強く抱き締めた。
スチル
そして、私の髪を軽く撫で、2度目のキスをした。
2度目のキスは、初めての時よりもっとドキドキして……。
胸が苦しいくらいだったけど。本当は優しい入江さんの心が、唇を通して伝わってくるような気がして。
私は身を任すように、瞳を閉じてしまった。
「英男さんに拳を向ける俺も、黒崎に背中を向ける俺も」
「ほんの少し前までは想像すらしてなかった」
「お前との出会いがこんなに自分を変えちまうなんて」
「俺は今でもまだ戸惑っている」
「だけど、ひとつだけ確かなことがある」
「それはお前のことが好きだってことだ。○○」
入江学人ストーリー・HAPPY END