※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
 
 
(入江さん……)
そして、それから何も言わずに、入江さんはホームに入ってきた電車に乗り込んでしまった。電車のガラスに映る入江さんの背中が、少しずつ小さくなっていく。
(まだ、逢ってから間もないのに……)(何回もこうやって、小さくなる背中を見送った気がする)
 
石「俺達も帰ろうか?」「……うん」
 
私と石森くんは肩を並べて、白浜駅を後にした。
翌日も、その翌日も黒崎の不良達は白浜へとやってきた。吉良くんと大地くんは、事態が収集するまで自宅謹慎するよう、桑田先生に言い渡された。
 
「このまま落ち着いていくかな?」石「どうかな?黒崎がそんな簡単に引き下がるとは思えないんだよね」
 
吉良くんと大地くんが自宅謹慎してから数日経っても、私は相変わらず石森くんに帰り道を付き添ってもらっていた。
(入江さん……。今日は逢えるかな)
石森くんの横で、私はキョロキョロと辺りを見回した。
「……」「……!」
通りの向こうに立つ入江さんと、私の視線が交錯した。
 
石「○○は、入江のこと。好き?」
 
石森くんが私の顔も見ずに、そう言った。
「ええっ!?いや……その」
自分でも可笑しくなるくらい、私は狼狽してしまった。
 
石「冗談。○○のそういうとこ、ホント可愛いよね」「……もう」
 
(私……入江さんのこと……本当はどう思ってるんだろう?)
嘘のつけない胸に、私は問いかける。
 
<選択肢>
 
A.気にならない
B.分からない
○C.気になる
 
 
(やっぱり……気になってるよね)
入江さんと出逢ってから、そして何度か会話をする間に、知らず知らずのうちに入江さんのことを考えている自分がいた。
(私……)
眠れない夜や、お風呂の中でくつろいでいる時、自然と入江さんの姿が脳裏に浮かんでは消えていた。
「……ちょっといいか?」
気が付けば、入江さんが目の前に立っていた。
「……!……は、はい」
私は戸惑いながらも頷いた。
(入江さんのことを考えている最中に……呼び止められるなんて)
 
「雲行きがやばくなってきたからよ。早く家に帰れ」「えっ?な、何があったんですか!?」
 
私が尋ねても、入江さんはただ首を横に振るだけだった。
 
「詳しく話してる時間はねぇ。急げ」
 
すると、背後から砂を踏み締める音が聞こえてきた。
 
「……!?」加「最近こっちのヤツらと親しくしてるらしいじゃねぇか」
 
私と石森くんを取り囲むように、黒崎の不良達が少しずつ近付いてくる。
 
加「まぁ、いい。こいつ、潰せよ。入江」
 
加賀見さんが恐ろしい笑みを浮かべ、石森くんを貫くように見ている。
「俺に指図するんじゃねぇ」
入江さんは加賀見さんをキッと睨みつけ、そのまま動こうとしなかった。
 
加「なんだ?やれねぇってのか?黒崎を裏切るつもりか?入江」「ああ?やりゃいいんだろ?見てろよ。大将さんよ」石「○○。下がってて」
 
石森くんがその声と共に、入江さんに向かって駆け出した。
「石森くん!」「おらぁ!」
入江さんと石森くんの拳が激しく交錯し、お互いの頬を打った。
「そんなもんか!石森ぃ!」
入江さんは石森くんの襟首を掴むと、草むらの方へともつれるように引きずっていった。
「良く聞け……」
入江さんが周囲に聞こえないように、小声で石森くんに話しかけた。
 
「俺がやられっと、周囲の奴が一斉にお前と女を襲う」石「……頭がいいね。黒崎は」「適当に俺の拳を2・3発受けて転がれ。後は、俺が誤魔化すからよ」石「痛いのは苦手だけど……選択肢はないか」
 
石森くんと入江さんは一瞬、視線を合わせると、同時に距離を取った
 
続く