タイミング良く『ヴィンランド・サガ』の話題があったので感想。
せんだい歴史学Cafe: 第56回放送「漫画『ヴィンランド・サガ』を語る~歴史とサガとフィクションと」)
ゲスト
- 小澤 実
- 北欧中世史
- URL: http://www009.upp.so-net.ne.jp/m-ozawa/
- 中丸禎子(ナカマル テイコ)
- 北欧文学
- URL: http://www7b.biglobe.ne.jp/nakamaru_teiko/
- 松本涼(マツモト サヤカ)
- サガ
- URL: http://researchmap.jp/sayaka_m
漫画の世界観を研究者が語り合う、という実にディープな世界。
ガチの研究者が語る中身の濃さと展開力に、むしろおかしみすら感じる。一人途中で眠っちゃってるよ、とか突っ込みどころもあるけど、このユルイ感じもひっくるめて、知識や経験的(?)な共有がネットの良いとこ。
知識はゼロなんだけど、感想。
小澤実氏。説明が理路整然として、研究者らしくて、雑談モードではない。準備なしになんでも答えられるのね。まず、起きてください。
中丸禎子氏。切り口が斬新。作者の意図ではなく、作品になにが書いてあるかを読み解くというアプローチに、文学研究の怪しさをかんじてたけど、誤解してたみたい。任意でテーマを設定して、なんかうまいことやって、新しい側面を切り出すっていうのかな?話の組み立て方に、狐につままれたような説得されたような、なるほど、と。
松本涼氏。研究が好きでたまらないっていうのが前面に出てて、こういうのは見てるだけで楽しくなる。なにかに嵌まる感覚がわかるひとって多いとおもうんだよね。でも、 蘊蓄 を好かないひとも多いので、日常生活ではバランスが大事だと、自戒する。
内容で気になったこととか
ヴァイキングについて
- 史料的裏付けはないんだそうだ。ただし、存在としてはあっただろうと。
- 農民のライフスタイルの一つで、若者が冬に略奪して蓄財して、農場経営するのが憧れらしい
- キリスト教の普及する前の存在
暴力について
- 中丸、松本両氏ともに、暴力を研究のひとつの関心事としているとのことで、この話を掘り下げて欲しかった。死生観とか。
- やられたらやりかえす、というのが当時の平和維持だったそうで、非暴力はキリスト教と結びついて、サガではけっきょく殺されてしまったりするらしい
ベルセルクル(狂暴戦士)は、トランス状態で、戦場の最前線で戦う勇者であり、農民から略奪や狼藉を働くトラブルメーカーでもあった。また、外圧として国教化されたキリスト教によって、熊は悪魔的象徴に作り変えられる。
安易な発想だけど、日本と共通項がけっこうある気がするんだよね。たぶん、世界中の原始社会と文明社会の出会いは、似たような結末にたどりついたのかもしれない。キリスト教は、戦の神かもしれないな。
物語であるサガをもとにして、どれくらい正確なことってわかるもんなのかな
戦士にとって、恐怖、死の克服というのは、重要なことだっただろう。宗教観については話題にならなかった。
うーん、「治において武を忘れず、乱において文を捨てず」、やっぱりこれなんかな。戦後昭和の日本みたいに、平和だけを語るのは、暴力主義の裏返しだったのかも。この人達は、現代の現実社会をどのように捉えるんだろうか。これも話題になかった。
わかんないことはわかんないなりにたのしい