石破茂『国防』(2011、新潮文庫)

2005年新潮社刊行の文庫版。内容は政治家石破茂の体験と意思表明。
自分みたいに全くの無知な人間にもわかりやすい内容。専門書というよりは、国防意識の啓蒙書かな。
本書はわかりやすさを最優先にして書き記したものです。国防や安全保障という、あまり身近ではなく、学校でも全く習わないテーマだからこそ書いたものであり( 略 )
あとは、防衛庁長官時代の経験を語っている。足掻きっぷりが見事で好感が持てる。

【石破氏について】

外見と話しぶりでかなり損をしているけど、国家の大計を持っている。選挙で盤石な基盤を築かなければ、こういったところまでたどり着くのは難しいのかもしれない。一点突破の人は目立つけど、日本国の首相になるには「器」こそが。浮動票人間としては、こういう人に対して、賛成なり反対したいな。政治家としての支持と政策としての支持は、別腹なのがノンポリてぃっくポリシーですよ。

この人はたぶん、右からは左、左からは右って、批判されるんじゃないかな。でも、これが中庸の人ではないか。もっともキレイごとばかりやってきたわけじゃないだろうから、「日ノ本の 濁りに人も住みかねて」キレイな世の中への変化は次の世代に託してもらって、その時は、石破さんに悪役を演じてもらいたい。

【本書の特徴について】

軍事オタクだからこそできることがある、ということを示している。元自衛官の政治家ならば、誤解を避けるために思い入れを語ることはない。ところが、アマチュアである石破氏は、自衛隊への愛を語るほどに、政治家と自衛官という一線がくっきりと見える。この異質性は文民統制を考えると好ましいとも感じる。

「イラク日本人人質事件」について、ちょっと刺激的な文章。慎重な石破氏らしくないなとおもいながら、よほど腹に据えかねたんだろう。
事件を振り返ると、よく分からないことが今でも沢山あります。要するに誰も損していないのです。犯人からの犯行声明や、解放宣言のFAXも変でした。少なくとも相当に日本の事情を知らないと書けない内容でした。
 ただ、犯人が誰にせよ、ここまで周到な計画をやろうと思ったらどこかでばれるはずですが、何も分かっていない。イラク人だけであそこまでできるだろうか、とは思いました。
まあ、非難するのは、本意ではないけど、小学4年生の中村くんと同じ匂いがするんだよね。こちらは台湾や香港のデモに触発されたらしいけど、日本には倒すべき体制なんていうのは、もはや幻想でしかない。目標が、全共闘なのか尾崎豊なのかは知らないけど、子供を洗脳してるカルトと縁を切って、「意識高い系」から「意識高い人」になってやり直してほしい。

閑話休題。国内事情と国際事情のギャップに苦しみながら、その都度、対応してきたことがわかる。これは、防衛トップの能力次第で、最悪の事態を招きかねないということで、過去の問題や緊張の高まる国際情勢を考えても、問題解決に最短最速で取り組める態勢を整えることは大事なこと。

この本は誤解を招きかねない内容にも大きく踏み込んでいて、防衛問題に対する政治家としての信念というか、執着が感じられる。率直に、こういう人の後任には着きたくないなあ、というのが感想。

もうひとつ。この人は、独力のひとの印象を受けた。周りの人に仕事を任せることができるのだろうか。まあ、そこら辺は、また別の問題。