女心Ⅱ(後編) ~独居女の悲哀~【トラックバック】
私は、仏壇の中身を丁寧に取り出しては、遺族に手渡していった。布の隙間から見えてきたものは、仏像ではなく何やら妙なモノだった。布の上から見える形は、完全に仏像。なのに、実際に見える一部は、木でも金属でもなさそう。妙な勘が働いた私は、モノが遺族から見えない死角に移動し、布を開けてみた。でてきたモノを見て、驚+笑。モノの正体はバイブ、いわゆる大人のオモチャの一種(経験不足のため、私は正式名称を知らない)。若い頃、エロ本の裏表紙とかに載っていたのは何度か(何度も?)見たことはあったが、実物を見たのは初めてだった。しかも、手に取って。私にとってはかなり珍しいモノで、ちょっと新鮮な気分だった。「結構、デカいな」「このかたちはイケてる」「意外に重いモノなんだなぁ」「この質感はヤバイそう!」「スイッチはどこだ?」「どういう風に動くんだろう」etc私は、興味があるような気持ち悪いような感覚で、その形や構造をマジマジと見てしまった(念のために言っておくが、私はずっと手袋は着用しており、素手で触った訳ではない)。少しの間眺めてから、正気に戻った。「それにしても、何でこんなモノが仏壇に入ってるんだよ!」遺族から「何でした?」ときかれた私は、とっさに「隠さなきゃ!」という心理が働いて、動揺した。私が動揺する必要なんかどこにもないのに、男の本能か?私には、エログッズを隠す習性が染み付いているのだろうか。ちなみに、今はエロ本・AV等は一切持っていない。これホント!遺族に見つからないように、私は慌ててバイブを布に包んで、仏壇の引き出しにしまった。「どうかしましたか?」「い・いえ、別に・・・」「仏像でした?」「いえ、仏像じゃありませんでした」私は、何か代わりになりそうな物を言おうとしたのだが、頭の中がバイブだらけで代わりのモノを思いつかなかった。「じゃ、何だったのですか?」「わ・私には何をするモノなのか分からなくて・・・何かの機械みたいですが・・・」「何だろう、ちょっと見てみようか」「あ゛ーっ!」「え?」「やめといた方がいいですよ」「なんで?」「なんでって・・・ウ・ウジがゴロゴロしてますから」「ウジ?、うぇー、それじゃダメだ」「でしょ!」「早いとこ、仏壇も処分して下さい」私は、バイブを入れた仏壇を部屋から運びだした。後になって考えてみても、バイブの存在を遺族には隠しておいてよかったと思っている。故人のイメージに合わないだろうし、故人も知られたくなかっただろうし。それにしても、きれいに布に包んで仏壇の引き出しにしまっておくなんて、その動機への興味が尽きない。余程に大切なモノだったのか、別れた夫との思い出の品だったのか・・・はたまた、単純に寂しかったのか。想像したくないのに、想像してしまう私だった。女は強し、されど女は弱し。何はともあれ、バイブを仏壇にしまっておくとは、なかなか味のある行動だと思った。そして、知ったかぶりして「高価な仏像に違いない」とほざいた自分がバカバカしく思えた。誰しも、人には知られたくない恥ずかしいモノや過去があるはず。本人にとっては顔から火が出るようなことでも、他人には愉快で楽しいことだったりするもの。恥をオープンにして笑い合うことも、生きる実の一つかもね。? トラックバック2006-10-03 11:47:15投稿分より遺品整理についてのお問合せはヒューマンケア株式会社0120-74-4949