1. テーマ
企業がロースクール生を見る目とは、どのようなものでしょうか。この点について、私見を述べます。
2. 修士みなし
まず、就職活動において、ロースクール生は学歴上、文系修士とみなされます。私は、大きなドーム等で催される企業合同説明会、あるいは、個別の会社説明会に出席して人事の方に質問しましたが、私が回った企業のほぼ全てでこのような見方をされていました。
文系修士で就職活動をする場合、文系の学部生と比べて不利な評価を受けることが多いです。これを読まれた方々の中には、「理系の修士は学部生よりも就職活動において有利であるのに、なぜ文系の修士は不利になるのか」、「文系の修士も理系の修士同様、学部生よりも勉強してきたのに、そんな扱いは不当だ!」と言いたくなる方もいらっしゃるでしょう。それは私も同感ですが、残念ながら企業の文系修士に対する評価は、文系の学部生よりも低くなってしまっていることが多いのです。
したがって、文系の学部生と比べて、ロースクール生はマイナスがつくことが多いです。
なお、就職後の待遇が文系の学部生と同じという企業もありますが、今回のテーマは「就職活動時」におけるロースクール生に対する企業の評価ですので、この点は直接かかわりのないことに留意してください。
3. リスキーな存在
次に、ロースクール生は司法試験を受ける可能性があるため、仮に採用しても退社されてしまうリスクがあると、企業は評価しています(注1)。
ロースクール生は、司法試験に合格して法曹となることを目指して大学院に進学しており、かつ、ロースクールを修了すれば司法試験の受験資格を取得できる(注2)ことから、企業はロースクール生に対し、司法試験を受けるのではないかという考えを持っています。
仮にロースクール修了生が司法試験を受験し、これに合格した場合は、司法修習所で1年間の研修を受け、さらに二回試験(注2)を受け、晴れて法曹となります。
企業は労働者(注3)が1年間休むことを認めてはくれないでしょうから、ロースクール修了生が企業に就職した後に司法試験を受験し、仮にこれに合格した場合、司法修習所で研修を受ける選択をしたければ、退社することになります。
企業がロースクール生を採用する場合には、司法試験を受験して合格した後に退社する可能性があると評価するわけですね。
このような形で新卒採用した人間が企業をやめた場合、人事部の責任が問われることになりますし、会社に迷惑がかかりますので、やはりマイナス評価を受けてしまいます。
4. 法律の専門的知識がある?
今までマイナス評価を受ける点について述べてきましたが、次はプラス評価される可能性がある点について述べたいと思います。
それは、大学院で法律を専門的に学んでいるという点です。
残念ながら、多くの企業は、ロースクール生が法律を専門的に学んでいることをあまり評価してくれません。それはおそらく、ロースクールでどのような教育がなされているかについての認知度が低いことと、ロースクールで法律を専門的に学んできたことを証明するものが今のところ司法試験しかないため(注4)です。
まれに法律を専門的に学んできたことを評価してくださる企業もありますが、現時点では少数にとどまると言わざるを得ないでしょう。
5. まとめ
以上より、企業は、ロースクール生を、①文系の修士とみなした上、②司法試験を受けて合格した後に退社する可能性がある存在であると見ています。これら2点はいずれも就職活動においてマイナスに働きますので、ロースクール生は学部生よりも2つマイナスがついていると評価されます。ほとんどの企業では、このような見方をされていると思います。
(注1) 間接事実として、次のような事実があげられます。すなわち、私はほぼどこの企業の面接を受けても、「あなたは司法試験を受けないのですか?」「これまで法律の勉強に熱心に取り組 んでこられたのに、どうして司法試験を受けて法曹になるのではなく、就職するのですか?」 と聞かれました。最終面接なのに、そのことばかりを聞かれるということもありました。
なお、間接事実というのは、要証事実を間接的に推認させる事実を言いますが、ここでは私の主張内容を間接的に推認させる事実という意味で使っています。
(注2) 司法修習叙の卒業試験のようなものです。詳しくは、法務省のHPをみてください。
(注3) 簡単にいうと、雇われている人。
(注4) ロースクール生は修了後でなければ司法試験を受けられないので、就職活動時には司法試験に合格したという事実をアピールすることがそもそも不可能です。