※前置きが要らない方は------------------までとばしてください。
今回はいわゆるファンタジー小説の趣が強いBLをご紹介!
上橋菜穂子さんが好きな方は、この作品も好きなんじゃないかと思います。
私は異世界系と狭義のファンタジーは別物だと思っておりまして、異世界系は前提として地球が想定されているような設定が見られるもの、狭義でファンタジーに分類されるのは独自の世界観が確立しているもの、漠然とと考えています。分類基準は自分がどう感じたかですので個人差ありですが。
この作品はファンタジー小説としての出来が凄くよく、この世界の広がりを感じさせてくれる構成も魅力的でした!
最初は主人公の知っている狭い世界だけなのが、主人公が色々なものに出会うにつれて、読者も一緒に世界の広さを感じることができます。
人間の及ばない、海、風、太陽、山、読んでいると自分までそこに存在しているかのよう。
さて、前置きはここまでにして、本題に入りましょう。
---------------
タイトル:檳榔売りのアトリ
作者(敬称略):阿倍地下(あべちか)
サイト:ムーンライトノベルス
URL:
ジャンル:ファンタジーBL
総合評価(10):8
エンディング:ハッピー
読み口:ヘビーよりの中間
細かな評価⤵︎ ︎(×△ー〇◎の順に高い)
連載状況:完結済み(当時)
性的表現(R18):〇
激しい表現(性・暴力・思想):○
文章力:◎
面白さ:〇
涙したか:〇
感動・心動かされたか:◎
読了したか:◎
文章量:多め
体感読了時間:2~5時間
包容力男前攻め×訳ありの天真爛漫受け
〜感想〜
まず最初は主人公の天真爛漫さとかわいさが全面に感じられます。主人公はタイトルにもある通り、「檳榔(びんろう)売りをしているアトリ」という少年。檳榔というのは植物と石灰から作った噛みタバコ。風景から私が思い浮かべたのは東南アジアの小さな島々でしょうか。
そして、僅かに感じる違和感。
主人公は太陽のように明るく、風のように自由で、海のように広い心を持っています。一見するとただの純真な少年ですが、「この真っ直ぐさの裏に何かが隠れている気がする……」というような気持ちにさせられます。
私は、よくある純真少年ご都合主義物語とは毛色が違いそうだな、と思いました。
主人公は何も知らないまま友人と結婚させられそうになり、逃げ出します。逃げ出した先で1人の男が危機から助けてくれ、そのまま彼のところに転がり込むことに。
この辺りは全体の面白さ(10)と比較すると2~3ぐらいですが、状況描写や心理描写、世界観の作り込みが細かく、それだけで面白く読めます。
まだ主人公は狭い世界に生きていて、私たち読者も全然世界のことをしらない。
主人公が今まで生きてきた世界を長めに描写することで、後に出てくる世界の広がりを強調しているようでした。また、この辺の状況説明がダラっと感じないことや、後々に効いてくる構成からも、作者の文章力の高さが伺えます。
主人公は男の元でちょっとずつ成長していきます。
ギャングみたいな少年大司教と会ったり、結婚することになっていた男が追いかけてきたり、遥か遠い別の国の王女さまと友達になったり。
そのうちに、主人公の秘密が少しずつ明らかになります。そして主人公は波乱の渦に巻き込まれていく……
ここからがこの話の面白いところなのですが、私の口から語るのは勿体ないので、もし知りたくなった方は読んでみていただきたい!
読み口は軽すぎず重すぎず、読了したあとはきっと神話を読んだ後のように感じることでしょう。
素晴らしい物語との出会いに感謝😉
※あくまで個人の意見です※