SAPシステム(インスタンスやカーネル)の挙動を制御する「SAPプロファイルパラメータ設定」について、Basis運用の視点から構造、プロファイルの種類、設定変更の手順、および主要なパラメータまで詳細に解説します。
1. SAPプロファイルの構造と種類
SAPのパラメータは、OS上のテキストファイル(プロファイルファイル)に記述されており、システム起動時に読み込まれます。設定の適用スコープに応じて、主に以下の3つのプロファイルが存在します。
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デフォルトプロファイル(DEFAULT.PFL)
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スコープ: システム全体(すべてのアプリケーションサーバー共通)
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用途: データベースホスト名、SAPシステム名(SID)、共通のセキュリティポリシー(パスワードルール等)など、システム全体で統一すべき値を定義します。
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インスタンスプロファイル(
<SID>_<Instance>_<Host>)-
スコープ: 特定のアプリケーションサーバー(インスタンス)ごと
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用途: 各サーバーのメモリ割り当て、ワークプロセスの配置数(ダイアログ、バックグラウンド等)など、サーバーのハードウェアスペックに依存する固有の値を定義します。
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スタートプロファイル(※近年のバージョンではインスタンスプロファイルに統合)
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スコープ: インスタンス起動時
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用途: どのSAPサービス(メッセージサーバー、エンキューサーバー等)を起動するかを制御していました。現行のS/4HANA環境などではインスタンスプロファイルに一本化されています。
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2. パラメータの「静的」と「動的」の違い
パラメータには、変更の反映タイミングに関して2つの属性があります。運用の負荷が大きく変わるため、変更前の確認が必須です。
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静的(Static)パラメータ
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変更後、SAPシステムの再起動(または該当インスタンスの再起動)を行うまで値が反映されません。メモリ割り当てなど、基盤に関わるパラメータに多いです。
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動的(Dynamic)パラメータ
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再起動が不要です。設定変更後、即座に稼働中のシステムに値が反映されます。トレースレベルの変更や、一時的なタイムアウト値の延長などに使われます。
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3. パラメータ設定・確認の主要トランザクション(T-Code)
パラメータの確認や変更は、OSのファイルを直接書き換えるのではなく、安全のためにSAPの画面上から行うのが鉄則です。
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RZ11:個別のパラメータ確認・変更-
特定のパラメータの現在の値、デフォルト値、および「動的変更が可能かどうか(Dynamic設定の可否)」をピンポイントで確認・変更できます。
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RZ10:プロファイル全体のメンテナンス(静的変更)-
デフォルトプロファイルやインスタンスプロファイルを編集するための標準画面です。ここで変更した内容は、次回のSAP再起動時に有効になります。記述ミス(構文エラー)の自動チェック機能が働きます。
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RSPFPAR:パラメータの検索・一覧表示-
システムに存在するすべてのパラメータをキーワードやワイルドカード(例:
login/*)で検索し、適用されている値の一覧を出力します。
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4. 実務でよく使われる重要パラメータ例
実際の環境構築やチューニングで頻繁にカスタマイズされる代表的なパラメータです。
① セキュリティ・ログイン関連(login/*)
ユーザーのパスワードポリシーなどを制御します(通常は DEFAULT.PFL で設定)。
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login/min_password_lng: パスワードの最小文字数。 -
login/password_expiration_time: パスワードの有効期限(日数)。 -
login/no_automatic_user_sapstar:1に設定することで、緊急用ユーザーSAP*の初期パスワードによる自動ログインを無効化(セキュリティ標準)。
② タイムアウト・ワークプロセス関連(rdisp/*)
システムのパフォーマンスや、プロセス詰まりを防止するための制御です。
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rdisp/max_wprun_time: ダイアログワークプロセス(画面操作)の最大実行時間(秒)。これを超えるとショートダンプ(TIME_OUT)が発生し、不正な無限ループ処理などを強制終了させます。 -
rdisp/wp_no_dia/rdisp/wp_no_btc: インスタンスが持つダイアログ/バックグラウンド用のワークプロセス数。
③ メモリ管理関連(em/* , abap/*)
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em/initial_size_MB: SAP拡張メモリ(Extended Memory)のプールサイズ。 -
ztta/roll_area: ロールエリアのサイズ。
5. 設定変更時のベストプラクティス(注意点)
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RZ10での保存後は「有効化」を忘れないRZ10でパラメータを書き換えて保存しただけではファイルが更新されません。必ずメニューから「有効化(Activate)」を実行してください。 -
OSレベルでのバックアップ 大規模なパラメータ変更の前には、OSレイヤ(
/usr/sap/SYS/profile/など)にあるプロファイルファイルのバックアップを取得しておくことで、万が一システムが起動しなくなった際の切り戻しが容易になります。 -
動的変更時の注意
RZ11で動的パラメータを変更した場合、それは「メモリ上の一時的な変更」になります。次回のSAPシステム再起動時にもその値を維持したい場合は、必ずRZ10(プロファイルファイル)側にも同じ値を書き込んでおく必要があります。