私「どういうこと…?」
一瞬で頭の中がぐちゃぐちゃになった。
だって龍はこの前かすみさんと…
それだってちゃんと謝ってくれたし…
マリさんは司の彼女で…
司は龍の親友…
その彼女さんに手を出したってこと…??
変な汗が出る。体温が引いていくのが分かった。
私「ごめんなさいっっ
」
私はとっさに謝っていた。
司「なんで…ハルが謝るの
」
司の声はすごく悲しかった。
きっと龍は浮気を突き詰められても素直に謝らない。
マリが寂しそうで…とか理由をつけて人のせいにするに決まっている
かすみとの浮気もかすみが…と言ってはいたが、元彼女(しかも振ったばかり)と二人きりの空間にいること自体おかしい。
かすみはまだ龍に気があることを誰もが分かっているのだから、きっと龍には下心があったのだろう
それをあたかも全てかすみのせいだとばかりに告白してきた龍だ。
マリとの浮気もきっと自分はするつもりじゃなかった…と言うに違いない
もちろんそのかすみとの浮気も龍からだと後々分かるのだが…
私「龍が全部悪いから…。それは分かるから。」
私が考えていることくらい司には分かっている。
ずっと龍と一緒にいた人だ。龍がどういう人で、何をするかなんて分かり切っているはずだ。
司「マリの首にキスマークがあった。俺じゃない。しかもその日、俺に嘘をついてマリは出かけていたんだ。龍とな」
思い出してみると、龍はその日仕事が休みだったが、用事があると言って会ってはくれなかった。
司「俺も出かけてさ、戻ってきたら龍とマリが…同じ布団で寝てるんだよ。おかしいよな…」
もう完全に黒じゃないか…。
私も司も黙るしかなかった。
龍の浮気癖は聞いていたし知っていたが、まさか自分の親友である司の彼女にも手を出すなんて…。
私が学校に行っている間や、龍の休日で時々会えない日に何をしているのか分かったような気がした。
私「司、大丈夫
」
浮気が初めてじゃない分、私は変に落ち着いている
司は大きなため息
をついてから私を見た。
司「いや、お前はどうなんだよ。まだ龍と一緒にいるのか
これだけ裏切られてるのに…
」
少し声を荒げている。
私「…うん、ごめんね。分かっていたし、それでも好きになった人なの」
別れようとか距離を置こうとか、当時の私はこれっぽっちも考えていなかった。
不幸な状況に酔う気もない。
私は龍を望んだし、恋人ということ以外に、私を救ってくれた恩人ということに囚われてしまっていた。
司「…なんでだよ。なんでお前なんだ…」
司は小さくそう言うと私から目を逸らして項垂れてしまった。
司の心配は痛いくらい感じる。
きっと言うか言わないかも悩んだと思う。
言って私が龍から離れることを望んでいたのもあると思う。
でも私は龍の傍にいたいと望んでしまった。
司「お前…必ず泣かされるよ。龍に…絶対」
私「うん」
……。
またしばらく黙ってしまったが、次に口を開いたのは司だった。
だがもぅ龍の話ではなく別の明るい話題を提供してくれた。
優しい司。この時ばかりは「なんで司を好きにならなかったのだろう」と思ったが、司に伝えてみたところ困ったように笑われてしまった。
そのうちに夜が明け、周りが明るくなった頃、私達は最初の重い雰囲気なんてなかったかのように笑っていた。
司「じゃぁ、そろそろ帰るわ」
私「うん、じゃぁ気をつけて
来てくれてありがとう
」
窓の下から司が離れて行く。
私「司
」
少し大きな声で呼び止めた。
私「マリさん…大切にしてあげてね
」
どうしてそんなことを叫んだのか分からないが、つい口に出た。
でも本心だった。
司には幸せでいてほしい。
私のことを大切にしてくれる司だから。
司は振り返ると、満面の笑みで私にサイン
を向けて帰って行った。
それが、司に会う最後の日だった。