先週の話になるが、『新聞記者』という映画を観てきた。
シナリオは、若手の女性新聞記者・吉岡エリカと内閣情報調査室の若手エリート官僚・杉原拓海が、国家権力に渦巻く陰謀へ立ち向かっていくという内容。参院選を前にして公開された政治サスペンス映画だが、現代日本における政治権力の”闇”がこれでもかと言うほどリアルに描かれている。劇中で扱われる事件・事象も、特区の大学新設計画、ジャーナリストのレイプ揉み消し疑惑、公文書偽造を強いられた官僚の自殺など、安倍政権中の出来事と明確にリンクしている。
内閣情報調査室の職場の様子や、物語終盤で明かされる内閣府の陰謀など、描写が事実よりいくらか誇張されている部分もある。しかし、国家権力が現代の日本社会に絶大な影響力を及ぼしているのは真実だ。その本当の恐ろしさは、むしろこのぐらい誇張しなければ日本国民には伝わらないだろう。アメリカと違い、日本には本格的な政権批判を題材とした映画がほぼ無いに等しい。政界でも芸能界でも”忖度”が蔓延する中、『新聞記者』は我々に大きく警鐘を鳴らした。
映画作品としての完成度もさることながら、これほどの危険領域に突入して、平和ボケした日本国民に堂々と斬り込んだ功績は計り知れない。残念なのは、この映画の関係者及び劇中のメインキャラクター達ほど”闘い”への覚悟を志した若者が日本にはまだ少ないということが。「この映画を切っ掛けにして、これからの日本で政治サスペンス映画が~」といった発言をするレビュアーも多いが、その実現には莫大な時間がかかるであろう。